JSPは売り一巡感、18年3月期3Q累計が高進捗で通期予想に上振れ余地

 JSP<7942>(東1)は発泡プラスチック製品の大手である。18年3月期は営業微減益予想だが、第3四半期累計の進捗率は高水準だった。価格改定や高付加価値製品拡販が進展し、通期予想に上振れ余地がありそうだ。株価は高値圏から急反落したが売り一巡感を強めている。戻りを試す展開が期待される。

■発泡プラスチック製品大手、高機能・高付加価値製品を開発・拡販

 発泡プラスチック製品の大手である。押出発泡技術をベースとするポリスチレン・ポリエチレン・ポリプロピレンシートなどの押出事業(産業用包装材、食品用包装材、広告用ディスプレー材、住宅用断熱材など)、ビーズ発泡技術をベースとする発泡ポリプロピレン・発泡ポリエチレン・発泡性ポリスチレン製品などのビーズ事業(自動車衝撃緩衝材、家電製品緩衝材、IT製品輸送用通い函など)、その他事業(一般包材など)を展開している。

 17年3月期のセグメント別売上高構成比は押出事業35%、ビーズ事業60%、その他5%だった。収益は販売数量、為替、原油価格、原料価格と販売価格の差であるスプレッド、プロダクトミックスなどが影響する特性がある。

■高機能・高付加価値製品の拡販推進、自動車用「ピーブロック」が拡大

 自動車部品用発泡ポリプロピレン「ピーブロック(英名ARPRO)」や、住宅用高性能断熱材「ミラフォーム」など高機能・高付加価値製品の拡販を推進し、生産能力の増強も進めている。

 自動車用「ピーブロック」は自動車軽量化要求に対応する製品として需要が急速に拡大している。特に日系自動車メーカーのリアシートコア材への採用が広がり、搭載車種生産台数は16年度の約130万台から20年度には約520万台に拡大する見込みだ。

 北米におけるシートコア部品の受注が日系車種に広がり、競技用グラウンド基礎緩衝材の需要も拡大しているため、北米における「ピーブロック」の生産能力を今後3年間で25%増強する。

■18年3月期3Q累計高進捗で通期予想に上振れ余地

 今期(18年3月期)連結業績予想(4月28日公表)は、売上高が前期(17年3月期)比6.8%増の1165億円、営業利益が1.2%減の95億円、経常利益が3.3%減の97億円、純利益が8.2%減の67億円としている。配当予想は前期と同額の年間50円(第2四半期末25円、期末25円)としている。予想配当性向は22.2%となる。

 第3四半期累計は、売上高が前年同期比5.5%増の864億34百万円、営業利益が0.1%増の78億67百万円、経常利益が2.2%減の79億68百万円、純利益が7.0%減の58億11百万円だった。

 販売数量の増加、高付加価値製品比率の上昇、原材料価格上昇に対する製品価格改定などで増収となり、原材料価格上昇や運送費値上がりなどのコストアップ要因を吸収した。売上総利益率は30.2%で1.5ポイント低下、販管費比率は21.1%で1.0ポイント低下した。営業外では為替差損益が悪化した。

 押出事業は売上高が3.1%増の296億80百万円で営業利益が10.1%減の22億63百万円だった。高付加価値製品の好調などで増収だが、上期における原材料価格上昇の影響で減益だった。ビーズ事業は売上高が7.5%増の525億02百万円で営業利益が4.2%増の61億76百万円だった。自動車用「ピーブロック」など高付加価値製品の拡販も寄与して販売数量が順調に増加した。その他事業は売上高が1.3%減の42億51百万円で営業利益が20.0%減の99百万円だった。

 通期ベースでは、販売数量が順調に増加して増収だが、国内外における原料価格の上昇などで営業微減益予想としている。またビーズ事業においては、北米自動車市場の減速、中国における第3四半期(10~12月)の一時的需要減少などを想定しているようだ。

 ただし保守的な印象が強い。通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高74.2%、営業利益82.8%、経常利益82.1%、純利益86.7%と高水準である。自動車用「ピーブロック」など高付加価値製品の拡販が進展し、押出事業で製品価格改定が第3四半期に進展したことなども考慮すると、通期予想に上振れ余地がありそうだ。

 中期経営計画「Deepen&Grow2017」では、目標数値に18年3月期の売上高1350億円(海外が約530億円)、営業利益88億円(売上高営業利益率6.5%以上)を掲げている。今期(18年3月期)連結業績予想は、原油価格下落の影響などで売上高が計画未達となるが、高付加価値製品へのポートフォリオ改善や原油価格安定によるスプレッド回復などで各利益は計画を超過達成する見込みだ。中期的にも収益拡大基調が期待される。

■株価は売り一巡感

 株価は1月高値3980円から急反落し、地合い悪化も影響して2月6日3020円まで水準を切り下げた。その後は切り返して売り一巡感を強めている。

 2月16日の終値3225円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS224円75銭で算出)は14~15倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間50円で算出)は1.6%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2433円10銭で算出)は1.3倍近辺である。時価総額は約1013億円である。

 週足チャートで見ると52週移動平均線近辺で下げ渋る形だ。売り一巡して戻りを試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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