JPホールディングスは戻り歩調、18年3月期営業微減益予想だが増収基調

 JPホールディングス<2749>(東1)は保育園業界最大手である。グループ力を活かした総合子育て支援カンパニーとして、ベトナムにおいても幼稚園事業を推進している。18年3月期は保育士待遇改善や新規事業投資などで営業微減益予想だが、増収基調に変化はなく、中期的に収益拡大が期待される。株価は調整一巡して戻り歩調だ。なお3月23日に臨時株主総会を予定している。

■保育園業界の最大手、グループ力を活かした総合子育て支援カンパニー

 保育園業界最大手で、グループ力を活かした総合子育て支援カンパニーである。保育園・学童クラブなどを運営する子育て支援事業を主力として、保育所向け給食請負事業、英語・体操・リトミック教室請負事業、保育関連用品の物品販売事業、研究・研修・コンサルティング事業なども展開している。

 17年12月末の運営施設数(16年9月子会社化したアメニティライフ含む)は、保育園183(認可保育園・公設民営11、認可保育園・民設民営148、認可外保育園・東京都認証保育園21、その他認可外保育園3)、学童クラブ71施設、児童館12施設、民間学童クラブ5施設、海外幼稚園1施設、合計272園・施設(17年3月末比21園・施設増加)である。首都圏中心に展開している。

■保育士確保に向けて待遇改善や職場環境整備を推進

 保育士確保に向けて待遇改善や職場環境整備などを推進している。17年3月期には2年連続の大幅賃上げなど、保育士の待遇改善を国に先行して実施した。18年3月期も賃金水準の引き上げを実施し、社会的に評価される賃金制度の構築を目指す。

 また保育士の業務負担軽減、保育士と保護者のコミュニケーション強化に向けた取り組みの一環として、日本保育サービスが運営する全国の保育園にhugmo(ハグモー)の保育クラウドサービス「hugmo」を導入している。17年5月には夜間保育時間帯に特化したアルバイト保育士「スターライト先生」の採用を開始した。

 こうした待遇改善や職場環境の整備が奏功して、17年度の保育士採用数は新卒で過去最多となる247名となった。資格取得コースは32名だった。また17年12月末時点では17年度中途317名を採用し、18年度の新卒内定250名、中途内定131名、資格取得コース内定47名となっている。

 17年11月には東京都スポーツ推進企業認定制度において「平成29年度東京都スポーツ推進企業」に認定された。17年12月にはスポーツ庁から「スポーツエールカンパニー」に認定された。

■保育士待遇改善、新学童クラブ、海外展開などを推進

 中期経営計画では、安全対策の強化および保育の質のさらなる向上、新規開設および既存施設の保育士増員による受入児童数の拡大、人材投資の拡大、経営管理体制の再整備、収益基盤拡大に向けた新規事業への着手(民間児童クラブ、既存サービスの拡販、海外展開)を掲げている。

 補助金を申請せず料金設定の面で自由度が高い新タイプの民間学童クラブは、16年9月AEL(アエル)湯島、17年4月AEL横浜ビジネスパークを開設した。

 コンサルティング事業は、子育て支援施設の新規開発・運営のコンサルティングを展開する。17年3月期の契約済みは12件、新規契約見込みは3件である。

 海外はベトナムにおいて、中間層共働き世帯をターゲットに幼稚園事業を展開している。17年9月ダナン市(100%出資現地法人が運営するCOHAS DA NANG)とホーチミン市(現地企業とのFC契約によるCohas Kids)に幼稚園を開園した。

■収益は稼働率や補助金などが影響する特性

 収益は既存施設の稼働率、新規施設の開園、保育士待遇改善に伴う人件費の増加、補助金の増減などが影響する。また新規施設の開園は概ね4月だが、稼働率が上昇する期後半に向けて収益が拡大する傾向もある。

 利益配分については将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、配当性向30%前後の業績連動型配当の継続実施を基本方針としている。

■18年3月期営業微減益予想だが増収基調

 今期(18年3月期)の連結業績予想(5月9日公表)は、売上高が前期(17年3月期)比14.6%増の261億25百万円、営業利益が1.0%減の11億57百万円、経常利益が3.7%増の14億円、純利益が17.6%増の7億77百万円としている。配当予想は年間3円(期末一括)としている。前期比50銭増配で予想配当性向は32.4%となる。

 第3四半期累計は売上高が前年同期比18.2%増の197億71百万円、営業利益が4.9%減の6億37百万円、経常利益が5.7%増の8億55百万円、純利益が3.9%増の4億84百万円だった。

 新規21施設開設や既存施設の稼働率上昇などで大幅増収だったが、営業利益は人件費の増加に加えて、計画外の費用(消費税課税区分見直しに伴う控除対象外消費税額の増加90百万円、臨時株主総会関連費用1億12百万円)発生も影響して営業減益だった。営業外では補助金収入が増加した。

 通期でも保育士待遇改善、システム投資負担、新規事業への先行投資などで営業微減益予想としている。また来期(19年3月期)の新規開設は合計24ヶ所(認可保育園15園、企業主導型事業所内施設2園、学童クラブ7園)の計画としている。

■待機児童解消政策が追い風の事業環境に変化なく、中期的に収益拡大期待

 都市部を中心に保育サービスの需要は高水準であり、待機児童解消に向けて保育士待遇改善、保育所運営補助金拡大、各種規制緩和などの政策が進展している。国や東京都の待機児童解消政策、さらに新たなアベノミクス「人づくり革命」が追い風となる事業環境に変化はなく、中期的に収益拡大が期待される。

■株主優待制度を再開

 株主優待制度は17年9月末日現在の対象株主から再開した。公平な利益還元という観点から16年度に一旦廃止したが、旧優待制度を見直し、保有株式数および保有期間に応じた還元の基準(詳細は会社HP参照)を定め、毎年9月末日現在の5単元(500株)以上保有株主を対象とした。

■株価は調整一巡して戻り歩調

 株価は2月6日の直近安値279円から切り返して戻り歩調だ。調整が一巡したようだ。

 3月1日の終値314円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS9円25銭で算出)は34倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間配当3円で算出)は1.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS84円52銭で算出)は3.7倍近辺である。時価総額は約276億円である。

 週足チャートで見ると安値圏で下ヒゲを付けて調整一巡感を強めている。戻りを試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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