【アナリスト水田雅展の銘柄分析】テクマトリックスは下値固め完了して戻り歩調、マイナンバー制度関連や中期成長力を評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 情報サービス事業のテクマトリックス<3762>(東1)の株価は、直近安値圏600円近辺で下値固めが完了して戻り歩調の展開だ。12日は691円まで上伸して2月の695円、さらに14年10月の戻り高値705円に接近している。マイナンバー制度やセキュリティ関連を材料視しているようだ。中期成長力も評価して上値を目指す展開だろう。

 ネットワーク・セキュリティ関連のハードウェアを販売する情報基盤事業、医療・CRM・EC・金融を重点分野としてシステム受託開発やクラウドサービスを提供するアプリケーション・サービス事業を展開している。

 重点戦略として、ストック型ビジネスの保守・運用・監視サービス関連の戦略的拡大、クラウド関連事業の戦略的・加速度的推進、ネットワーク・セキュリティ関連商材およびサービスの充実、ビッグデータ分析支援サービス、大規模EC事業者向けバックオフィスシステム構築ソリューション「楽楽ECインテグレーションサービス」などを強化している。

 中期成長に向けて、M&A・アライアンス戦略やグループ再編を推進している。14年2月に子会社の沖縄クロス・ヘッドが台湾のデータセンター事業者eASPNetと事業協力についての覚書締結、3月にクロス・ヘッドを完全子会社化、日本コンピュウェアと販売パートナー契約を締結、ラムダ・テクノロジーズとマレーシアにおける販売代理店契約を締結した。

 また7月には日本事務器(NJC)と医療情報クラウドサービス「NOBORI」に関する販売代理店契約を締結、8月には沖縄クロス・ヘッドが日本ヒューレットパッカード(日本HP)と業務提携、9月には米VERCODE社と販売代理店契約を締結した。

 10月にはクロス・ヘッドが仮想化技術の米Pica8(ピカエイト)社に出資、10月にはソフトバンクテレコムなどと3社共同でクラウド型医療情報サービス「地域健康・医療情報プラットフォームサービス(HeLIP)」の提供を開始した。

 14年12月にはクロス・ヘッドがエヌ・シー・エル・コミュニケーションの株式を追加取得して完全子会社化し、15年1月にはクロス・ヘッドとエヌ・シー・エル・コミュニケーションが4月1日付で合併すると発表した。ネットワーク仮想化技術であるSDN市場の本格成長が期待されているため、合併によって技術力強化や業務効率化を推進する。

 2月には未知のサイバー攻撃に対処するセキュリティ監視サービスの提供を開始した。またエヌ・シー・エル・コミュニケーションがネットワーク仮想化を容易に構築できる自社開発ソフトウェアの販売を開始した。

 また3月9日には、連結子会社カサレアルがチェコのJetBrains社とトレーニングパートナー契約を締結し、サムライズム社(東京都豊島区)とJetBrains社製品を利用した研修に関する業務提携を開始したと発表している。

 なお医療分野では、オンプレミス型(ユーザーがハードウェア、ソフトウェア、データを自分自身で保有・管理)システム提供から、クラウド型(ユーザーがインターネット経由で利用)サービス提供へビジネスモデル変更を推進しているため、前期(14年3月期)から医療情報クラウドサービスの売上と利益をサービス期間に応じて按分計上する方法に変更した。このため今後複数年に亘って売上と利益にマイナス影響となるが、他事業の成長でカバーする方針としている。

 今期(15年3月期)連結業績見通し(1月30日、本社移転に伴う原状回復費用の特別損失計上に伴い、純利益を80百万円減額修正)は、売上高が前期比5.5%増の183億円、営業利益が同3.7%増の11億60百万円、経常利益が同0.4%減の11億60百万円、純利益が同21.8%減の6億20百万円、配当予想が前期と同額の年間15円(期末一括)としている。

 ストック型ビジネスの戦略的拡大に向けて人件費が増加するが、情報基盤事業の好調が牽引して増収、営業増益見通しだ。セグメント別売上高の計画は、情報基盤事業が同9.0%増の122億円、アプリケーション・サービス事業が同0.9%減の61億円としている。情報基盤事業ではサイバー攻撃に対応した次世代ファイアウォール製品、アプリケーション・サービス事業では医療分野のクラウドサービスなどが好調に推移する。

 第3四半期累計(4月~12月)は前年同期比6.5%増収、同11.1%営業減益、同15.1%経常減益、同50.4%最終減益だった。ストック型ビジネスの戦略的拡大に向けた人件費の増加などで営業減益、経常減益、法人税等調整額計上の一巡や本社移転に伴う原状回復費用の特別損失計上などで最終減益だったが、売上面ではクラウドサービスなどのストック型ビジネスが順調に拡大して増収だった。

 四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)39億49百万円、第2四半期(7月~9月)46億55百万円、第3四半期(10月~12月)43億75百万円で、営業利益は第1四半期63百万円、第2四半期2億87百万円、第3四半期1億92百万円だった。

 通期見通しに対する第3四半期累計の進捗率は売上高が70.9%、営業利益が46.7%、経常利益が45.4%、純利益が37.9%と低水準だったが、第4四半期(1月~3月)の構成比が高い収益構造であり、挽回が期待される。また来期(16年3月期)は大型案件の寄与や、ストック型ビジネスの戦略的拡大に向けた先行投資費用の一巡などで好業績が期待される。

 株価の動きを見ると、直近安値圏600円近辺で下値固めが完了して戻り歩調の展開だ。3月12日には691円まで上伸する場面があり、新セキュリティ監視サービスの提供開始を材料視した2月12日の695円、さらに14年10月の戻り高値705円に接近している。マイナンバー制度やセキュリティ関連を材料視しているようだ。

 3月12日の終値680円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS51円24銭で算出)は13~14倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間15円で算出)は2.2%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS513円07銭で算出)は1.3倍近辺である。

 日足チャートで見ると抵抗線だった75日移動平均線を突破して上伸し、週足チャートで見ると26週移動平均線を突破して上伸した。下値固めが完了して強基調に転換した形だ。中期成長力を評価して上値を目指す展開だろう。

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