【小倉正男の経済コラム】米中貿易戦争:報復の連鎖か、大人の解決か

小倉正男の経済コラム

■7月6日=米中貿易戦争が勃発

 7月6日、ついに米中貿易戦争が開始された。お互いに340億ドル相当の輸入品に25%追加関税を課すことになった。さらに時期をみて160億ドル相当の輸入品に追加関税を課す予定としている。

 日本、アメリカとも、アク抜けとして、株価が騰がる動きがあったということだが、アク抜けというよりややヤケッパチな感がしないではない。本当にアク抜けならよいのだが、むしろアクがどんどん溜まっていくのではないか。

 世界のふたつの経済大国が「貿易戦争」に突入するのだから、世界経済は縮小が避けられない。

 関税は輸入する側が負担する。関税を負担する側は、確実に売れるモノしか輸入しない。ともあれ関税分は商品価格に上乗せされ、最終的には消費者がそれを負担する。
 しかし、25%の高関税を価格に上乗せして確実に売れるモノは、この世界に多くは存在しない。

■ダイムラーの下方修正

 貿易戦争に勝者はなく、それだけではなく当事国のみならず、すべてを敗者にしかねない。

 米中経済の相互に大きな損出が出る。トランプ大統領としたら、ブラフを掛ければ、習近平国家主席が白旗を掲げると思っていたのだろうが、引っ込みがつかない事態となっている。アメリカでは、貿易戦争で景気が低下するという懸念が生まれておる。

 すでにダイムラーが下方修正を発表した。これはダイムラーが、アメリカ工場で生産したスポーツタイプの多目的車を中国市場で販売しているのだが、高関税により売れ行きが鈍化するということを理由としている。

 そうなれば、アメリカでのダイムラーの雇用にマイナスの影響が出かねない。アメリカでは、貿易戦争の影響で金利上昇のスピードが緩和されるのではないかという見方が出ている。つまり、アメリカの景気は鈍化するとみられているのだ。

 中国もアメリカへの輸出にブレーキがかかるのだから、強化を進めていた「中国製造2025」などの設備投資が減速するという影響が出るだろう。
 トランプ大統領が撒いたタネなのだが、米中が相互に貿易戦争を継続・拡大するのならば、世界経済はシリアスなことになりかねない。

■「アメリカファースト」=ポピュリズムのもたらすもの

 米中の貿易戦争で、日本は漁夫の利を得るという話があるが、そう甘くはない。

 トランプ大統領は、日本にも高関税などをかけてくる可能性がある。
それに中国が設備投資を手控えれば、工作機械・製造装置・電子部品を供給している日本によいことはない。

 中国が、アメリカのボーイングに発注するとしている旅客機にしても、中国が報復としてキャンセルすれば、ボーイングの旅客機製造の「下請け」を担っている日本にマイナスが発生する。世界経済は縮小の悪循環に陥ることになりかねない。

 中国にしても、欧州にしても、愚かしい貿易戦争が継続・拡大すれば、経済パニックが起こる可能性もある。
 報復が報復を呼ぶような事態になるのか、大人の解決に向かうのか。現状は、「アメリカファースト」というポピュリズムのアクが抜けるどころか、溜まるばかりとなっている。

(『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(ともに東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(ともにPHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事(1971年~2005年)を経て現職。2012年から「経済コラム」連載。)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

最新記事

カテゴリー別記事情報

     

    新着記事

    ピックアップ記事

    1. 隠れた関連株として注目  本2018年も、スポーツイベントが目白押しである。今年2月の韓国・平昌冬…
    2. 花粉症シーズン到来で再注目  冬本番である。「冬来たりなば春遠からじ」と「春よ、早く来い」と希うの…
    3. 日経平均株価=1万8700円~2万4000円を予想  日経平均株価は、11月9日に23382.15…
    2018年11月
    « 10月    
     1234
    567891011
    12131415161718
    19202122232425
    2627282930  
    IRインタビュー 一覧

    アイビーシーの加藤裕之社長に聞く 協立情報通信の長谷川浩社長に聞く ピクスタの古俣大介社長に聞く メディカル・データ・ビジョンの岩崎博之社長に聞く JPホールディングスの荻田和宏社長に経営への取組みを聞く 翻訳センターの東郁男社長に聞く イワキの岩城慶太郎副社長に聞く ヨシムラ・フード・ホールディングスの吉村元久社長に聞く ヨコレイの西山敏彦社長に展望を聞く 平山の平山善一社長に近況と展望を聞く アンジェス MGの山田 英社長に聞く CRI・ミドルウェアの押見正雄社長に聞く セキドの関戸正実社長に現況を聞く アルコニックスの正木英逸社長に聞く 京写の児嶋一登社長に聞く トレックス・セミコンダクターの藤阪知之社長に聞く イーグランドの代表取締役社長江口久氏に聞く ミロク情報サービスの是枝周樹社長に聞く 日本マニュファクチャリングサービスの小野文明社長に聞く 日本エム・ディ・エムの大川正男社長に聞く 建設技術研究所の村田和夫社長に聞く 東京個別指導学院の的場一成社長に聞く ビューティガレージの野村秀輝社長に聞く サンコーテクノの洞下英人社長に聞く

    アーカイブ

    「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
    また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
    ページ上部へ戻る