ソラストは自律調整一巡して上値試す、19年3月期2桁営業増益・連続増配予想

 ソラスト<6197>(東1)は医療事務・介護・保育関連サービスを展開し、地域の女性人材を活用するため女性が働きやすい職場づくりやICTの積極活用を推進している。19年3月期2桁営業増益・連続増配予想である。株価(7月1日付で株式3分割)は高値圏から一旦反落したが、自律調整一巡して上値を試す展開が期待される。なお8月3日に第1四半期決算発表を予定している。

■医療事務受託を主力に介護・保育サービスも展開

 医療事務・介護サービスのパイオニア(旧・日本医療事務センターが12年に現ソラストに社名変更)である。

 医療関連受託事業(医療事務請負・派遣)を主力として、介護事業(訪問介護、通所介護、居宅介護支援、グループホーム、有料老人ホーム・サービス付高齢者向け住宅など)・保育事業(認可保育所運営)、その他事業(教育サービスなど)を展開している。18年3月期のセグメント別売上構成比は医療関連受託事業72%、介護・保育事業27%、その他事業1%である。

 医療関連受託事業では大病院との長期取引を中心に請負が9割強を占めている。介護事業はM&Aを積極活用して東名阪地域に展開し、18年3月期末の介護事業所数は17年3月期末比115拠点増加の361拠点(訪問介護68、デイサービス103、居宅介護支援64、グループホーム53、有料老人ホーム・サービス付高齢者向け住宅16、その他57)となった。保育園は1施設増加の14施設となった。

 18年3月期末の連結ベース従業員(常勤・非常勤勤務者)数は2万5318人、およびアルバイト・嘱託・契約社員2593名(期中平均)で、女性が約90%を占める。地域の女性人材を活用するため、女性が働きやすい職場づくりとともに、ICTの積極活用も推進している。

■ICT活用による生産性向上や離職率低下、M&A活用で中期成長目指す

 新経営ビジョンの経営目標値は、売上高3000億円(医療関連受託事業1000億円、介護事業1500億円、新規500億円)、営業利益200億円(営業利益率は医療関連受託事業15%、介護事業10%、新規15%)としている。

 サービス業のデジタルカンパニーに脱皮し、継続的にサービスモデルを刷新する。M&A・アライアンスも積極活用して、医療および介護の分野で業界NO.1の早期達成を目指す。未来の成長を牽引する新規事業にも挑戦する。配当政策は、安定した配当を継続することを基本方針として、配当性向50%を目安としている。

 医療事務の市場規模は約6800億円(うち約5000億円が潜在市場)と推定され市場開拓余地は大きい。医療関連受託事業における利益率向上に向けた戦略としては、原価の大部分を占める人件費に関して、無駄の削減・効率性の向上、定着率・モチベーションの向上、離職率の飛躍的な低下を目指している。

 社員退職に伴う配置転換や新入社員の教育などに係る無駄を減らすことで現場の生産性を改善し、全社的なコスト競争力の向上や売上成長に繋げるため、ICTを積極活用し、コミュニケーションの向上、業務・職場環境の改善、待遇改善などを通じて離職率を大幅に低下させる方針だ。

 ICTの積極活用では、沖電気工業<6703>と共同開発した初診受付登録システムの設置病院を19年3月期から拡大し、20年3月期末に100病院への導入を目指す。採用プロセス管理の自動化・効率化では、17年9月に次世代採用管理システムが稼働した。AIを活用した離職を防ぐ取り組みでは、FRONTEO<2158>の人工知能エンジン「KIBIT」を用いて、退職リスクのある人を早期に発見してフォローを行うなど、社員の離職防止や定着率向上に向けた取り組みを推進している。
 
 18年5月には、17年6月から行ってきたAI活用による新入社員離職を防ぐ取り組みの効果検証結果を公表した。AIは退職リスクが高い社員を抽出していることがわかり、同時に退職リスクが高い社員に適切な対策を打てば、退職を防ぐことができる可能性があることがわかったとしている。

 介護事業はM&Aの積極活用による成長を目指している。17年3月期には住センターなど11件・事業所数41ヶ所のM&A、18年3月期にはデイサービス中心に展開するベストケア(愛媛県松山市)や、グループホーム中心に展開する日本ケアリンク(東京都)など9件・事業所数108ヶ所のM&Aを実行した。

 また通所介護における業務効率化と顧客満足度向上を目的として、インフォコム<4348>と協働で介護記録システム「Daily」を構築し、全事業所への導入を推進している。

 保育事業は、認証保育所を認可保育所に移行することにより、園児数の増加を図っている。

■19年3月期も2桁営業増益・増配予想

 19年3月期の連結業績予想は、売上高が18年3月期比12.5%増の836億30百万円、営業利益が13.2%増の47億43百万円、経常利益が12.5%増の46億87百万円、純利益が8.2%増の29億33百万円としている。医療関連受託の堅調推移、介護における18年3月期大型M&A効果の通期寄与、さらに生産性向上も寄与して2桁営業増益予想である。

 医療関連受託は売上高が3.7%増収で営業利益が7.1%増益、介護・保育は売上高が36.0%増収(介護が38.0%増収、保育が11.1%増収)で営業利益が81.0%増益(介護が85.9%増益、保育が46.3%増益)の計画としている。介護における期中の新規M&Aは保守的に売上高10億円を織り込んでいる、中期成長シナリオに変化はなく収益拡大基調が期待される。

 配当予想(7月1日付の株式3分割後)は年間16円(第2四半期末8円、期末8円)としている。株式3分割を考慮して18年3月期の年間45円を15円に換算すると1円増配となる。予想配当性向は50.9%である。

 なお介護サービス利用状況(速報値)によると、18年5月サービス利用者数は訪問介護が前年同月比13.4%増、デイサービスが75.5%増と好調だった。施設系サービスの月末入居率はグループホーム98.3%、有料老人ホーム95.2%、サービス付高齢者向け住宅96.8%と高水準を継続している。介護サービス事業所数は合計360ヶ所で、18年3月末比1ヶ所減少した。

■株価は自律調整一巡して上値試す

 株価(7月1日付で株式3分割)は、6月の上場来高値1341円から一旦反落したが、自律調整の範囲だろう。

 7月11日の終値1095円を指標面(7月1日付の株式3分割後)で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS31円42銭で算出)は約35倍、今期予想配当利回り(会社予想の年間16円で算出)は約1.5%、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS127円15銭で算出)は約8.6倍、時価総額は約1023億円である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線がサポートラインだ。自律調整一巡して上値を試す展開が期待される。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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