【どう見るこの相場】「暑さ寒さも彼岸まで」シナリオならまず定石通りに売られ過ぎ銘柄の「リターン・リバーサル」にトライ余地

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 3連休前の前週末14日のメジャーSQ値(特別清算数値)算出は、申し分のないイベント・ドリブンとなった。日経平均株価は、2万3000円台を回復して寄り付き、寄り後に一時ダレて一部に「幻のSQ」との弱気観測が出たものの、切り返して2万3000円台をキープ、そのままSQ値(2万3057円)を上回ってほぼ高値圏で引けた。個別銘柄でも、先物主導で一人勝ちしていたファーストリテイリング<9983>(東1)やソフトバンクグループ<9984>(東1)も、対照的に値崩れして年初来安値へ突っ込んでいた半導体関連株なども等しく急伸した。年初来安値更新銘柄も日々、拡大し年初来高値更新銘柄の倍どころか10倍の約300銘柄近くまで膨れ上がっていたが、高値更新株の半分にまで急減した。

 これは「暑さ寒さも彼岸まで」シナリオを示唆するシグナルかもしれない。記録的な猛暑や相次ぐ自然災害に見舞われた今年の夏の異常気象が、彼岸入りとともに平常に復し安定するのと軌を一にして、秋相場も、米中貿易戦争やトルコ・ショックなどに揺さぶれ続けてきた夏相場からは一変、日経平均株価の2万3000円台で再三押し返されていたボックス相場からの上放れを示唆するとの相場シナリオである。現に市場では、早くも日経平均株価は、過去3回、タッチしたあと跳ね返された2万3000円台をベースに年初来高値2万4129円にトライするとの強気観測も聞かれるようになった。「幻のSQ」解消が、市場を覆っていた弱気ムードの霧を吹き払ってくれたようだ。もちろん、週明け17日の米国株は、米国のトランプ大統領が中国向けに第3弾の制裁関税を発表すると伝えられて4営業日ぶりに反落しており、連休明けの東京市場も、同日にほぼ軒並み上昇したADR(米国預託証書)の日本株と綱引きとなるなど影響を受けるのは間違いないが、この先、同大統領のこれ以上の「チャブ台返し」がないとの前提付きではある。

 相場スケジュールも、「暑さ寒さも彼岸まで」シナリオを補強しそうだ。9月18日、19日に日銀の金融政策決定会合が開催され、9月20日には自民党の総裁選挙、21日には第2回目の日米貿易協議(FFR)が予定されている。またこの21日は、9月11日から再交渉が始まったカナダと米国の北米自由貿易協定(NAFTA)の交渉期限と伝えられている。残すのは、彼岸明けギリギリの9月25日、26日に開催されるFRB(米連邦準備制度理事会)のFOMC(公開市場委員会)のみとなる。米中間の制裁関税合戦も、第3弾の制裁関税発表後に米中の閣僚級貿易協議の再開が予定されており、同大統領のディール(取引)の落とし所が見えてくる可能性もあり、日本や中国の政治対応も含めて「暑さ寒さも彼岸まで」のシナリオにトライしてみる余地はありそうだ。

 となると問題は、3連休明け後の市場での銘柄対応である。取り敢えず出直り相場の定石として、大きく下げた株ほど大きく戻しとする投資セオリーの「リターン・リバーサル」にトライして正解となる可能性は大となる。年初来安値へ売り込まれた銘柄などを中心に、「ヒット・アンド・アウエー」でフォローすれば、値幅効果もついてきそうだ。

■第一候補は9月13日の年初来安値から14日に底上げの高初速銘柄

 「リターン・リバーサル」買いの第1候補は、9月13日に突っ込んだ年初来安値から、翌14日に底上げした銘柄である。なかでもこの底上げの初速が大きかった銘柄が狙い目で、反騰率が7%超となったCKD<6407>(東1)から3%超の銘柄が浮上する。反騰率の大きかった順に列挙すると、CDKに続き以下SUMCO<3436>(東1)、KOA<6999>(東1)、新電元工業<6844>(東1)、SCREENホールディングス<7735>(東1)、アルバック<6728>(東1)、ブイ・テクノロジー<7717>(東1)、山洋電気<6516>(東1)、エクセル<7591>(東1)、信越化学工業<4063>(東1)、明電舎<6508>(東1)、日本製鋼所<5631>(東1)で、日製鋼は3.03%の底上げとなった。

 KOAとエクセル、信越化を除くとPERは、いずれも10倍以下と割り負けており、3月決算会社に限るとCKDの2.8%を筆頭に配当利回りが、市場平均を上回る銘柄も多く、9月中間期末の配当権利取り妙味も示唆している。半導体関連株が中心だが、9月17日の米国市場でフィラデルフィ半導体指数(SOX指数)が反落して引けたが、急落した直近の9月11日安値よりは高い水準にあり、底上げの支援材料になりそうだ。

 「リターン・リバーサル」買いの第2候補は、これもやはり定石通りに24日移動平均線から大幅に下方修正している銘柄の売られ過ぎ修正狙いである。25日線から13%超もマイナスかい離したラサ工業<4022>(東1)に続いて、11%超下方かい離のHIOKI<6866>(東1)、10%超かい離の太陽誘電<6976>(東1)、アルプス技研<4641>(東1)、ニッカトー<5367>(東1)、スタートトゥデイ<3092>(東1)などがスクリーニングされる。スタートトゥは、日経平均株価の構成銘柄の定期入れ替えで、新規採用銘柄予想が外れたことで600円超の棒下げを余儀なくされており、修復相場の高まりが見込まれる。

■米10年国債利回り3%タッチとFOMCの合わせ技で銀行、生保、地銀株にも出番

 「リターン・リバーサル」買いの候補株では、銀行、生保の金融株も外せない。というのも9月14日に米国市場で、米10年物国債利回りが、一時3%台に乗せたからだ。今年6月、8月に続く3%台へのタッチでその後は今回も含めて2%台へハネ返されたが、今年9月25日、26日開催のFOMCで今年3回目の利上げがほぼ間違いないことを考慮すれば、3%台への国債価格の再低下は有力となり、利ザヤ拡大期待が株価押し上げ効果を発揮すると想定される。

 メガバンクの三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>(東1)、三井住友フィナンシャルグループ<8316>(東1)、みずほフィナンシャルグループ<8411>(東1)のほか、日経平均株価の構成銘柄となっている新生銀行<8303>、あおぞら銀行(8304)、りそなホールディングス<8308>(東1)、コンコルディア・フィナンシャルグループ<7186>(東1)、千葉銀行<8331>(東1)、静岡銀行<8355>(東1)、第1生命ホールディングス<8750>(東1)が注目される。中間配当の権利取りも株価底上げの支援材料となる。

 地方銀行株でも時価総額上位のめぶきフィナンシャルグループ<7167>(東1)、関西みらいフィナンシャルグループ<7321>(東1)、ふくおかフィナンシャルグループ<8354>(東1)は地銀再編の先駆株としても注目され、なかでも関西みらいFGは、巨額の負ののれん発生益計上で今年8月に年初来高値まで150円高しほぼ往って来いとなっただけに高値再挑戦も想定範囲内となる。(本紙編集長・浅妻昭治)

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