【アナリスト水田雅展の銘柄分析】カーリットホールディングスは戻り歩調、新中期経営計画を評価して1月高値試す

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 自動車用緊急保安炎筒などを展開するカーリットホールディングス<4275>(東1)の株価は戻り歩調の展開だ。3月23日には694円まで上伸して1月高値722円に接近した。15年3月期利益下振れ懸念は織り込み済みであり、0.7倍近辺の低PBRや新中期経営計画を評価して上値を試す展開だろう。

 日本カーリットが株式移転で設立した純粋持株会社が13年10月東証1部市場に上場した。日本カーリットなど傘下の事業会社で、化学品事業(産業用爆薬、自動車用緊急保安炎筒、信号炎管、化成品関連、電子材料・機能性材料、危険性評価試験受託、2次電池充放電試験受託など)、ボトリング事業、産業用部材事業(半導体用シリコンウェーハ、研削材、耐火・耐熱金物、スプリングワッシャー)を展開している。

 自動車用緊急保安炎筒は新車装着用・車検交換用を展開し、国内市場シェアは約8~9割と想定されている。ボトリング事業は伊藤園<2593>向けが主力である。半導体用シリコンウェーハは小口径4~6インチのニッチ市場を主力としている。海外は中国・上海、シンガポールに展開している。

 前中期経営計画「飛躍500」では「事業領域の拡大、市場の拡大、シェアの拡大という、3つの拡大戦略により売上高500億円の化学会社への成長」を基本方針として、グループ収益基盤と総合力強化に向けたM&A戦略で事業の多様化を推進した。

 12年1月に工業用塗料販売・塗装工事の富士商事、12年8月に耐火・耐熱金物製造販売の並田機工、13年10月に一級建築士事務所の総合設計を子会社化、14年2月に各種スプリング製造・販売の東洋発條工業を子会社化した。

 そして2月26日に新中期経営計画「礎100」を発表した。18年の創業100周年を迎え、次の100年企業の礎となる事業基盤確立を推進する。目標数値は18年度の売上高650億円、営業利益35億円、15年度~18年度4年間合計の設備投資額200億円とした。中長期目標は24年度までに売上高1000億円到達としている。

 基本戦略としては、成長基盤強化(新商品・新規事業の創出と育成、M&Aや資本・技術提携など)、収益基盤強化(既存事業での領域拡大、付加価値の向上など)、グループ経営基盤強化(グループシナジーの最大化、関連企業の統合・再編、R&Dの新体制構築、海外展開の強化、CSR経営の推進など)を掲げた。

 新商品・新規事業の創出と育成に関しては、HⅡ-Aロケット用など高エネルギー化学物質の宇宙産業への展開、環境・エネルギー関連の次世代蓄電デバイスへの展開、ライフサイエンス関連のヘルスケア材料・農薬関連への展開、無機機能材料の展開など、重点分野を一段と強化する方針だ。

 今期(15年3月期)の連結業績見通し(5月15日公表)は売上高が前期比18.0%増の470億円、営業利益が同0.3%増の16億円、経常利益が同1.4%増の17億円、純利益が同28.1%減の9億円、配当予想が前期と同額の年間10円(期末一括)としている。M&A効果も寄与して増収見込みだ。

 第3四半期累計(4月~12月)は前年同期比14.7%増収だったが、同35.5%営業減益、同31.3%経常減益、同4.3%最終減益だった。新規連結子会社ののれん償却を含む販管費の増加、新規事業の受託試験設備の償却負担、ボトリング事業での設備メンテナンスなどが影響して減益だった。ただし産業用部材事業での新規顧客獲得、東洋発條工業の新規連結などで大幅増収だった。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)106億67百万円、第2四半期(7月~9月)115億52百万円、第3四半期(10月~12月)110億29百万円、営業利益は第1四半期54百万円の赤字、第2四半期2億67百万円、第3四半期3億82百万円である。

 通期見通しに対する第3四半期累計の進捗率は売上高が70.7%、営業利益が37.2%、経常利益が40.7%、純利益が57.3%である。利益進捗率が低水準のため下振れに注意が必要だが、構造的特徴により、第4四半期(1月~3月)の挽回が期待される。

 来期(16年3月期)は自動車用緊急保安炎筒やボトリング事業における消費増税の影響が一巡する。さらに緊急脱出用ガラス破壊器具付き自動車用緊急保安炎筒「ハイフレヤープラスピック」の拡販、2次電池充放電受託試験の本格稼働に伴う収益化、工業薬品のシェア拡大、光機能性材料の車載用・建材用熱線遮蔽フィルムの拡販、ボトリング事業での新商品受注、並田機工のごみ焼却場向け需要増加などで収益拡大が期待される。

 株価の動きを見ると、2月24日の直近安値642円から切り返して戻り歩調の展開だ。3月23日には694円まで上伸して1月高値722円に接近した。利益確定売りが一巡し、新中期経営計画を評価する動きのようだ。

 3月26日の終値681円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS43円71銭で算出)は15~16倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は1.5%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS922円98銭で算出)は0.7倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線を回復した。週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって下値を切り上げている。強基調を確認した形だ。15年3月期利益下振れ懸念は織り込み済みであり、0.7倍近辺の低PBRや新中期経営計画を評価して1月高値722円を試す展開だろう。

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