【どう見るこの相場】投資セオリーの「安値で出る悪材料は買い」を試しつつ逆張りと割安内需株買いの硬軟両様の投資スタンスで瀬踏み

どう見るこの相場

 「ハイテク株売りの割安株買い」 9月相場まで日米両市場は、ほぼこの相場シナリオ通りに推移してきた。長期金利が上昇するなか高PER水準まで買われたハイテク株から利ザヤが拡大する金融株や小売り株などの景気敏感株への乗り換えシナリオである。東京市場でも、日経平均寄与度の高い超値がさ株から、TOPIX(東証株価指数)構成の時価総額の大きい内需系銘柄へのシフトが進んだ。ところが、10月9日に米国の10年物国債利回りが、7年7カ月ぶりの水準まで急上昇すると、米国のダウ工業株30種平均株価(NYダウ)は、わずか3日間で約1500ドル安し、日経平均株価も、急落を繰り返して10月2日の日中につけた年初来高値2万4448円から2000円超も下げてしまった。前週9日付けの当コラムを含めて、大方がこの相場シナリオの見直しを迫られ、慌てさせられた。

 問題は、この株価急落がアルゴリズム(自動売買注文)取引などによる機械的・一時的な調整にとどまるか、それともトレンド転換して本格調整相場入りする前触れかということになる。この判断は、株価急落の要因をどう分析するかに深くかかわってくる。トランプ大統領からすれば、金利引き上げを急ぐFRB(米連邦準備制度理事会)を「クレージー」と非難したから「FRBショック」である。一方、世界経済見通しを下方修正した国際通貨基金(IMF)は、この要因をトランプ政権発の貿易戦争としているから「トランプ・ショック」と断ずるはずだ。

 「FRBショック」の長期金利の上昇なら、マーケットはある程度のインターバルを置いて折り合いをつけられるはずだ。現に前週末12日に発表された米大手銀行3行の第3四半期業績は、市場予想を上回る好決算となって週末12日のNYダウが、4日ぶりに87ドル高と反発することを牽引した。しかし、トランプ・ショック」となると深刻に受け止めざるを得ない。あと20日と迫っている米国の中間選挙を前に、米中摩擦は、貿易領域を越境して安全保障領域まで浸食、新たな冷戦などの懸念を強め、もう相場分析だけではカバーすることが不能となってくるからだ。13日には、日米の物品貿易協定(TAP)交渉で、円安誘導を防止する為替条項を議題にあげるムニューシン財務長官の強硬発言が報道されるなど難題はとどまることがしれない。

 どちらの可能性が高いかは判断が難しく時間も要しそうだが、少なくとも足元では相場セオリー的には「安値で出る悪材料は買い」かを試すことはできるはずだ。このあと貿易摩擦に加え長期金利の再上昇、イタリアの財政不安などの悪材料が続出するとして株価がどの水準まで耐えられるか、下げ渋るか、逆に悪材料織り込みとして買い転換するか慎重に見極めるのである。投資スタンスとしても、積極的に運用リスクを取るのではなく、ややディフェンシブに瀬踏みをしながらの市場追随型、インカム・ゲイン訴求型優先となる。そこで今週の当コラムでは、硬軟両様の投資スタンスを提案したい。ハイテク株中心に大きく下げた株ほどよく戻すとする「リターン・リバーサル(逆張り)」と内需系の10月期決算会社の期末のインカム・ゲイン中心の割安株買いの両建てである。もちろん「売り、買い、休む」のうちの「休む」も、トレンド確認を待つ真っ当な投資スタンスだが、市場参加することで市場モメンタムを体感することは、次の相場に備える一足早い陣取り戦略となるはずである。

■年初来安値から急反発、日経225採用の低PERハイテク株の追随買いが第一チョイス

 「リターン・リバーサル」狙いの第1候補株は、10月11日に突っ込んだ年初来安値から前週末に急反発した日経平均株価の採用銘柄で、この勢いに乗ってどこまでリバウンド幅を伸ばすか試す追随買いである。ハイテク株が中心で、SUMCO<3436>(東1)は、11日の年初来安値1424円から週末に8%超の底上げをしたが、なおPERは8倍台、配当利回りは3.7%と売られ過ぎを示唆している。同じくミネベアミツミ<6479>(東1)、アドバンテスト<6857>(東1)、SCREENホールディング<7735>(東1)、東京エレクトロン<8035>(東1)も年初来安値から3%~4%の底上げをしており、PERなどの投資採算も東証1部全銘柄平均より割り負けている。

 安川電機<6507>(東1)は、10月10日に半導体需要の減速と中国市場の弱含みを要因に今2019年2月期業績を下方修正し、前週末12日の寄り付き段階の年初来安値まで8%超の急落となったが、大引けにかけては同安値から8%超底上げ、急落分をほぼカバーした。また富士電機<6504>(東1)も、安川電機と同様に12日の取引時間中につけた年初来安値から大引けにかけ3.3%高しており、両社株とも底上げの初動段階にあると推定される。

 また逆に前週末12日に目先材料出尽くしとして2%~4%も急落した銘柄も、次点候補株として要注目である。内需株中心で、4%超急落したイオン<8267>(東1)、ユニー・ファミリーマートホールディングス<8028>(東1)のほか、今年9月の年初来安値からの底上げ途上で急落に見舞われたSOMPOホールディングス<8630>(東1)、MS&ADインシュアランスグループホールディングス<8725>(東1)、東京海上ホールディングス<8766>(東1)などが該当する。

■10月期期末接近で株式分割と配当の権利取りもインカム・ゲイン妙味

 硬軟両様の投資スタンスで、よりディフェンシブ志向の投資家向けには、10月末に株式分割と配当取りの権利付き最終売買日を迎える内需株が、投資適格銘柄となりそうだ。株式分割では、神戸物産<3038>(東1)のほか、ケア21<2373>(JQS)、グローバル・リンク・マネジメント<3486>(東マ)、エクストリーム<6033>(東マ)、日本スキー場開発<6040>(東マ)、リンクバル<6046>(東マ)、イトクロ<6049>(東マ)と続く。このうちリンクバルは、分割割合が1対6とサプライズとなって前週末12日にストップ高し、エクストリームも、同日スマホアプリ人気でストップ高した後に株式分割を発表した。ケア21は、10月末に迫った配当権利取りでも配当利回りが2.3%と新興市場平均を上回っており、日本スキー場開発は、これからスキー・シーズン入りする。

 配当権利取りでは、学情<2301>(東1)、パーク24<4666>(東1)、巴工業<6309>(東1)、ファースト住建<8917>(東1)カナモト<9678>(東1)の東証第1部銘柄ほか、東証2部株で低PER・PBRのアールエイジ<3248>(東2)、ハイレックスコーポレーション<7279>(東2)、ミロク<7983>(東2)、新興市場株では、同じくナトコ<4627>(JQS)、エイケン工業<7265>(JQS)、MICS化学<7899>(JQS)、トーシンホールディングス<9444>(JQS)などにインカム・ゲイン妙味があり、さらに権利落ち後の仕切り直し、再騰も期待したい。(本紙編集長・浅妻昭治)

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