【アナリスト水田雅展の銘柄分析】Jトラストは調整一巡、16年3月期の収益改善期待で出直り

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 Jトラスト<8508>(東2)の株価は安値圏でモミ合う展開だが、足元では水準切り上げの動きを強めている。調整がほぼ一巡したようだ。16年3月期の収益改善期待で出直り展開だろう。

 M&Aや債権承継などを積極活用して業容拡大戦略を推進し、金融サービス事業(事業者向け貸付、消費者向け貸付、クレジット・信販、信用保証、債権買取)、不動産事業、アミューズメント事業、海外金融事業(消費者金融業、貯蓄銀行業)、その他事業(システム開発など)を展開している。

 国内金融分野では、日本保証(12年3月ロプロが武富士の消費者金融事業を承継、12年9月ロプロと日本保証が合併)、Jトラストカード(11年8月楽天KCを子会社化、15年1月「KCブランド」事業を譲渡、14年3月に子会社化した個品割賦事業NUCSの「NUCSブランド」事業を承継、商号をJトラストカードに変更)、クレディア(12年7月子会社化)など、国内不動産分野・アミューズメント分野ではアドアーズ<4712>(12年6月子会社化)を傘下に置いている。

 海外金融分野では韓国での事業基盤確立を推進している。12年10月に貯蓄銀行認可を受けた韓国・親愛貯蓄銀行は、未来貯蓄銀行の一部資産・負債を承継し、13年1月韓国・ソロモン貯蓄銀行から、13年6月韓国・エイチケー貯蓄銀行から消費者信用貸付債権の一部を譲り受けた。

 14年3月には韓国・ハイキャピタル貸付、韓国・ケージェイアイ貸付を子会社化、14年8月には韓国・ハイキャピタル貸付、韓国・ケージェイアイ貸付、および韓国・ネオラインクレジット貸付(11年4月子会社化)の貸付事業を韓国・親愛貯蓄銀行に譲渡した。韓国・親愛貯蓄銀行の相対的に低金利の預金を原資として事業を運営し、グループ全体として収益構造改善を進める方針だ。

 14年6月に発表した韓国スタンダードチャータードキャピタル(SCキャピタル)および韓国スタンダードチャータード貯蓄銀行(SC貯蓄銀行)の買収については、15年1月韓国スタンダードチャータード金融持株会社が保有するSC貯蓄銀行の全株式を取得し、SC貯蓄銀行はJT貯蓄銀行に名称変更した。今後は親愛貯蓄銀行とJT貯蓄銀行の合併を進めるとともに、SCキャピタルの株式取得に向けての作業を行うとしている。

 なお14年11月に自動車割賦金融業の韓国・亜州キャピタルの株式売却に係る優先交渉権を取得したが、条件合意に至らなかったとして2月13日に交渉終結を発表している。

 アジアへの展開については、13年12月に子会社Jトラスト・アジア(シンガポール)がインドネシアのマヤパダ銀行と資本業務提携し、14年11月にはインドネシアの商業銀行であるムティアラ銀行を連結子会社化した。また3月9日にはJトラストアジアを通じて、オートバイの販売金融事業を展開しているタイのGL(証券取引所一部上場)の転換社債引き受け契約を締結すると発表した。

 なおアジアの不動産分野では、14年9月にシンガポールの不動産開発会社LCDの株式29.5%を取得して筆頭株主となったが、2月3日にLCDの大株主グループの1社であるAFグローバルが実施するTOBに応募して、所有する全株式を譲渡すると発表した。本件取引により投資有価証券売却益を約10億円計上する見込みだ。

 アミューズメント分野では14年9月、子会社アドアーズが韓国でカジノ事業を展開するJBアミューズメント(JBA)の第三者割当増資を引き受けて第2位株主となった。またアドアーズは14年11月に日本介護福祉グループを子会社化して介護事業に進出した。

 また連結子会社のJトラストベンチャーキャピタル合同会社は、3月9日にSmartEbook<2330>が発行する第1回無担保転換社債型新株予約権付社債および第6回新株予約権の引き受けを行うと発表し、3月13日にはSmartEbookの株式借入を行ったと発表している。事業再生や海外展開に係るグループの各種ノウハウを活用し、企業ニーズに応えるファイナンス支援や事業支援などを通じて支援先企業の企業価値向上を追求し、自社グループの成長に繋げる方針だ。

 今期(15年3月期)の連結業績見通し(8月13日公表)は営業収益が前期比11.9%増の692億91百万円、営業利益が同80.7%減の26億56百万円、経常利益が同79.5%減の27億38百万円、そして純利益が同0.8%増の112億39百万円としている。配当予想(5月14日公表)は前期と同額の年間10円(第2四半期末5円、期末5円)としている。

 中期成長向けてM&Aや事業再編を活用したグループの事業基盤構築・強化に取り組んでいるため、今期は一時的に営業費用が増加して営業減益、経常減益の見通しだ。純利益については韓国SCキャピタルおよび韓国JT貯蓄銀行の株式取得に伴う負ののれん発生益が寄与する見通しだ。

 第3四半期累計(4月~12月)は不良債権売却による債権売却損計上、不良資産整理に備えた貸倒引当金積み増しなどで営業利益、経常利益、純利益とも赤字だった。ただし将来の黒字化を見据えた一時的な損失計上であり、第3四半期(10月~12月)には海外事業の損失減少や為替差益の計上などで収益改善が進み、今後は収益構造の着実な改善が見込めるとしている。

 四半期別推移を見ると、営業収益は第1四半期(4月~6月)159億28百万円、第2四半期(7月~9月)160億51百万円、第3四半期(10月~12月)161億41百万円で、営業利益は第1四半期3億58百万円の赤字、第2四半期22億74百万円の赤字、第3四半期6億89百万円の赤字である。

 当面はM&A・事業再編、一時的利益・費用の計上などに伴って収益が大幅に変動するが、クレジットカード事業の再構築、韓国事業の収益改善、アジアへの積極的な業容拡大戦略などで、来期(16年3月期)の収益改善と中期的な収益拡大が期待される。

 株価の動きを見ると安値圏でのモミ合い展開が続いている。ただし2月4日に直近安値となる930円まで調整したが、その後は1000円台に戻して水準切り上げの動きを強めている。調整がほぼ一巡したようだ。

 3月27日の終値1029円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS95円24銭で算出)は10~11倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は1.0%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS1502円54銭で算出)は0.7倍近辺である。

 週足チャートで見ると戻りを押さえていた26週移動平均線突破の動きを強めている。16年3月期の収益改善期待で出直り展開だろう。

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