【どう見るこの相場】新春の「びっくり相場」はファンダメンタルズ重視で高利益進捗銘柄の第3四半期決算発表を先取りも一法

どう見るこの相場

 日本や米国で「2019年びっくり予想」の公表が相次いだ。年明け後の米国市場も、この「びっくり予想」を躍如させるような「びっくり相場」である。ニューヨーク・ダウ工業株30種平均(NYダウ)が、1月3日に660ドル安と急落したと思ったら、週末の4日には746ドル高と急反発した。急落も急反発も、まさにトランプのカードのように、同じ株価材料が、表に出るか裏に返るかの違いによるものであった。3日のカードは、米中貿易摩擦激化による中国や米国の景気後退懸念などと裏返ったが、4日は米国の好調な雇用統計やパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の金融政策の柔軟化発言、さらに米中の次官級貿易協議への期待などと表が出た。

 それにしても、株価の高安の振れ幅が大きく、「ジェットコースター相場」と形容される通り売買が一方向に傾きやすい。この犯人も特定されている。アルゴリズム取引(高速自動取引)である。株価や出来高の変動に瞬時に反応してコンピューターシステムが、高速で売買を執行することから売りが売りを呼び、買いが買いを呼ぶ一方交通となる。同取引にはマーケットのニュースや要人発言などのキーワードを分析して反応するプログラムが盛り込まれているシステムもあり、4日のNYダウの急反発は、パウエル議長の発言が引き金になったと報道されている。

 週明けの東京市場も、4日の米国株の急反発を受け取り敢えず戻りを試すスタートとなるのは間違いない。日経平均株価のフシ目の2万円台割れからの底上げを探る展開である。アルゴリズム取引主導で大きく下げた株を大きく担ぎ上げる「リターン・リバーサル」が先行し、大発会で軒並み急落したアップル関連株などの大幅リバウンドが有力となり、この主力ハイテク株がどこまで底上げするかが、新春相場のモメンタムとスケールを決めることになりそうだ。

 しかし、AI(人工知能)が、囲碁や将棋のプロ棋士に連勝する時代である。新年相場で、アルゴリズム取引を相手に急ぎ働きをしたくないとお考えの個人投資家も少なくないと推察される。また、4日の米国株の急反発にもかかわらず、なおボラティリティの高い値動きが続き、相場の方向性が定まったとはいえないとの慎重な観測も強く、これも危惧する投資家には、まずファンダメンタルズ重視の投資スタンスをお薦めしたい。折からこの1月は、10日のファーストリテイリング<9983>(東1)や安川電機<6506>(東1)、23日の日本電産<6594>(東1)、29日の信越化学工業<4063>(東1)など2月・8月期決算会社、3月決算会社の主要企業の第3四半期業績の発表が相次ぐ。

 とういことで注目したいのが、昨年10月~12月の今3月期第2四半期(2018年4月~9月期、2Q)累計決算発表時に、その2Q累計業績が、3月通期予想業績に対して高進捗率を示した銘柄である。参考になるのは、日本経済新聞が昨年11月23日付けで決算番付で集計した純利益の高進捗率銘柄である。高進捗率順に上位20銘柄が一覧されており、このなかから四半期決算発表時に業績が上ぶれる銘柄が出てくる可能性もあり、バリュー面、材料株人気などをウオッチしつつ選別買いをするのも一考余地がありそうだ。

■市場予想を下回る低PER・PBR10銘柄は内需系、信用好取組株など多彩

 高利益進捗率銘柄20銘柄からまずPER・PBR水準が、東証第1部全銘柄平均のそれぞれ12.4倍、1.10倍を下回っている銘柄を選別すると10銘柄が浮上する。このなかから次は業績評価で、今3月期第1四半期・第2四半期業績とも前期比増益で着地した銘柄は、エディオン<2730>(東1)、日本板硝子<5202>(東1)、JVCケンウッド<6632>(東1)、コメリ<8218>(東1)の4銘柄となる。4銘柄とも、昨年12月25日に昨年来安値に突っ込み、今年の大発会ではやや持ち直したものの、PERは4倍台~11倍台、PBRは0.5倍~0.7倍の評価でしかない。内需系のエディオン、コメリ、株価が3ケタ台の値ごろ妙味のある板硝子、JVCケンウッドなど逆行高素地を内包している。

 次に第1四半期決算発表時に今期業績を上方修正し、第2四半期決算開示時にその業績を下方修正したのは帝人<3401>(東1)とJFEホールディングス<5411>(東1)の2銘柄で、それにもかかわらず第2四半期の純利益が、通期予想業績に対して高進捗した。第1四半期・第2四半期業績とも減益で着地し、配当も無配継続となるが、信用取組が売り長で逆日歩のつく東洋エンジニアリング<6330>(東1)ともども、どのような第3四半期決算を開示するか要注目となる。

■上方修正が続いた石油株2銘柄も原油価格の「水準より方向性」をウオッチしつつ逆張り妙味

 第3四半期決算発表時に上方修正、下方修正のいずれに振れるか微妙なのが石油株の富士石油<5017>(東1)とJXTGホールディングス<5020>(東1)の2社である。両社とも第1四半期決算と第2四半期決算の発表時に合計2回、3月通期業績の上方修正をしたが、これは原油価格上昇による在庫評価益が大きな要因となった。今期第3四半期以降の想定原油価格は、ドバイ原油でそれぞれ1バーレル=65ドル、70ドルとなっている。現状では1バーレル=55ドル台と年初来高値水準の80ドル台から突っ込んだ直近安値の51ドル台から底上げしており、原油価格売りの要因となった世界景気後退による需給悪化懸念が、株高展開で後退するとすればなお戻りを試す可能性もある。米ニューヨーク・マーカンタイル取引所のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)価格は、シェールオイルの損益分岐点とされる1バーレル=40ドルを前にした42ドル台で下げ止まって47ドル台まで持ち直しており、「水準より方向性」を優先する投資セオリーからも逆張り余地が出てくる。(本紙編集長・浅妻昭治)

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