【アナリスト水田雅展の銘柄診断】山下医科器械は16年5月期の収益改善期待で戻り歩調

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 医療機器商社の山下医科器械<3022>(東1)の株価は、戻り歩調の展開で3月27日には1775円まで上伸した。その後一旦反落したが素早く切り返しの動きを強めている。15年5月期利益増額の可能性や16年5月期の収益改善期待で、14年5月以来の2000円台を目指す展開だろう。

 九州を地盤とする医療機器商社である。医療機器の販売・メンテナンス、医療材料・消耗品などの販売を主力として、子会社イーピーメディックは整形インプラントを製造販売している。

 中期成長に向けて、九州最大の需要地である福岡県での市場シェア拡大を最重点戦略としている。医療機関向けSPD(病院医療材料管理業務)の契約施設数増加に対応するため、13年7月に福岡SPDセンター(福岡県福岡市)を新設し、鳥栖SPDセンター(佐賀県鳥栖市)との2拠点体制とした。

 さらに15年1月には西諫早産業団地(長崎県諫早市)への進出に伴う諫早市との協定締結を発表した。長崎物流センター・SPDセンター(仮称)として物流体制を強化する。総投資額は約17億円で15年7月着工、16年6月稼働を予定している。

 13年12月に判明した従業員による不正行為に関して、14年2月28日に独立行政法人国立病院機構から指名停止(14年2月28日~14年11月27日)および一般競争参加資格降格(14年11月28日~15年8月27日)の処分を受けた。当該処分の対象となる施設の13年5月期売上高は全社売上高の1割強としている。

 不正行為の再発防止策に関して4月17日再発防止策実施状況その1、5月16日再発防止策実施状況その2、6月13日再発防止策実施状況その3、8月18日再発防止策実施状況その4を発表している。再発防止と信頼回復に向けて今後も実施状況を随時報告する方針だ。なお14年11月27日を以って指名停止期間満了となり、14年11月28日から一般競争参加資格の降格措置期間に入った。

 3月27日に発表した今期(15年5月期)第3四半期累計(6月~2月)の連結業績は、売上高が前年同期比3.7%減の350億89百万円、営業利益が同65.5%減の2億26百万円、経常利益が同55.2%減の2億78百万円、純利益が同55.1%減の1億61百万円だった。

 償還価格の改定、医療機関からのコスト削減要請の高まりに加えて、今期は病院建て替えや大型の設備更新案件が減少し、指名停止措置も影響して一般機器分野が同27.0%減収となり、売上総利益の減少で大幅減益だった。ただし一般消耗品分野はSPD契約施設数の増加などで同3.6%増収、低侵襲治療分野はサージカル備品の増加などで同5.4%増収と好調に推移している。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(6月~8月)105億82百万円、第2四半期(9月~11月)126億55百万円、第3四半期(12月~2月)118億52百万円、営業利益は第1四半期45百万円の赤字、第2四半期2億21百万円、第3四半期50百万円である。

 通期の連結業績見通しについては前回予想(7月11日公表)を据え置いて売上高が前期比9.2%減の463億48百万円、営業利益が同73.0%減の2億26百万円、経常利益が同62.3%減の3億11百万円、純利益が同68.9%減の1億71百万円、配当予想が同36円減配の年間20円(期末一括)としている。

 通期見通しに対する第3四半期累計の進捗率は売上高75.7%、営業利益100.0%、経常利益89.4%、純利益94.2%と高水準である。国立病院機構の一般競争参加資格の降格措置など不安定要因が残るとして通期会社見通しを据え置いたが、SPD契約施設数の増加などで一般消耗品の売上は堅調であり、通期利益見通しは増額の可能性が高いだろう。

 さらに来期(16年5月期)については、国立病院機構の一般競争参加資格の降格措置が第1四半期(6月~8月)で終了するため、第2四半期(9月~11月)以降は影響が一巡して収益改善基調が期待される。

 株価の動きを見ると、1月の直近安値圏1600円近辺から切り返して戻り歩調の展開となり、3月27日には1775円まで上伸した。その後は利益確定売りなどで一旦反落したが、1700円近辺から素早く切り返しの動きを強めている。戻り歩調に変化はないようだ。

 4月2日の終値1734円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS67円37銭で算出)は25~26倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は1.2%近辺、実績PBR(前期実績の連結BPS2191円36銭で算出)は0.8倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線、週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって強基調を確認した形だ。15年5月期利益増額の可能性や16年5月期の収益改善期待で、14年5月以来の2000円台を目指す展開だろう。

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