川崎近海汽船は出直り期待、19年3月期営業減益予想だが3Q累計の利益が高進捗率で通期上振れ余地

 川崎近海汽船<9179>(東2)は近海輸送と内航輸送を主力としている。19年3月期は燃料油価格上昇などで営業・経常減益(純利益は特別利益計上で増益)予想だが、第3四半期累計の利益が高進捗率であり、通期予想に上振れ余地がありそうだ。株価は12月の安値から切り返している。調整一巡して出直りを期待したい。

■近海輸送と内航輸送を展開

 石炭・木材・鋼材輸送などの近海部門、石炭・石灰石・紙製品・農産品輸送やフェリー輸送などの内航部門、日本近海における海洋資源開発・探査・掘削設備・洋上再生可能エネルギー設備に関わるオフショア支援船事業(OSV部門)を展開している。18年3月期の売上高構成比は近海部門28.5%、内航部門67.6%、OSV部門3.9%、その他0.0%だった。

 内航部門では、トラックドライバー不足に対応した長距離幹線輸送のモーダルシフトの受け皿となるべく、フェリー輸送の航路拡大を推進している。OSV部門では、子会社のオフショア・オペレーション(OOC)がオフショア・ジャパン(OJC)を18年7月吸収合併した。また日本初のLNG燃料フェリー就航に向けて、川崎汽船<9107>と共同で技術的検証を本格化している。

 収益面では輸送量、運賃市況、為替、燃料油価格、および燃料油価格変動に伴う燃料調整金などが影響する特性がある。

■中期経営計画で21年3月期営業利益34億円目標

 中期経営計画(19年3月期~21年3月期)では、有利貨物の取り込みや船隊整備による近海部門の収支改善、新鋭船投入や新規航路開設による内航部門のサービスの充実、OSV部門の収益拡大、20年適用開始予定のSOx規制への適切な対応を推進している。

 経営目標値には、21年3月期の売上高495億50百万円(近海144億円、内航330億円、OSV21億50百万円)、営業利益34億円(近海50百万円、内航32億50百万円、OSV1億円)、経常利益33億50百万円、純利益21億50百万円、ROE7.8%などを掲げている。前提条件は為替が1ドル=110円、内航燃料油価格(C重油)が6万9200円/KLである。新造船等に対する投資額は3年総額168億円の予定としている。

■19年3月期営業減益予想だが3Q累計が高進捗率で通期上振れ余地

 19年3月期連結業績予想(10月31日に売上高を上方、営業利益と経常利益を下方、純利益を上方修正)は、売上高が18年3月期比12.2%増の463億円、営業利益が33.0%減の17億円、経常利益が32.8%減の17億50百万円、純利益が23.5%増の15億50百万円としている。配当予想は18年3月期と同額(17年10月1日付株式併合換算後)の年間120円(第2四半期末60円、期末60円)としている。予想配当性向は22.7%となる。

 第3四半期累計は、売上高が前年同期比11.4%増の346億61百万円、営業利益が33.1%減の15億28百万円、経常利益が31.7%減の16億03百万円、純利益が32.0%増の14億01百万円だった。燃料油価格上昇に伴う燃料調整金収入の増加も寄与して2桁増収だが、減価償却費の増加、修繕費の増加、夏場に頻発した台風による欠航の影響などで営業・経常減益だった。純利益は特別利益に計上した固定資産売却益5億79百万円が寄与して大幅増益だった。

 近海部門は輸送量の増加、市況の改善、効率配船などで10.7%増収となり、営業黒字化した。内航部門は輸送量の増加、フェリー輸送における新造船の投入、燃料油価格上昇に伴う燃料調整金収入の増加などで10.4%増収だが、新造船シルバーティアラ竣工に伴う原価償却費の増加、修繕費の増加、台風・豪雨・地震など自然災害の影響などで50.7%営業減益だった。OSV部門は季節要因で第1四半期の稼働率が低下したため56.8%営業減益だが、通常の支援作業に加えて、自力航行不能に陥った超巨大タンカー(VLCC)の台風回避・曳航も寄与して35.5%増収だった。

 通期ベースでは、近海部門が市況改善を背景に8期ぶりの営業黒字を見込み、OSV部門も受注増加を見込むが、内航部門が燃料油価格上昇、減価償却費増加、修繕費増加、台風等の荒天による運航費増加、事務所開設等による販管費増加、宮古~室蘭航路での定期貨物定着遅れの影響を見込み、全体として営業・経常減益予想である。純利益は特別利益計上で増益予想である。
 
 なお第3四半期累計の進捗率は売上高74.9%、営業利益89.9%、経常利益91.6%、純利益90.4%である。利益が高進捗率であり、通期予想に上振れ余地がありそうだ。

■株価は出直り期待

 株価は12月安値2822円から切り返している。第3四半期累計業績には反応薄だ。調整一巡して出直りを期待したい。2月5日の終値は3065円、今期予想連結PER(会社予想連結EPS528円00銭で算出)は約6倍、今期予想配当利回り(会社予想の年間120円で算出)は約3.9%、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS8323円69銭で算出)は約0.4倍、時価総額は約90億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■更新前のスーパーコンピュータの約4倍の計算能力  富士通<6702>(東証プライム)は2月21日…
  2. ■両社の資源を有効活用しSDGsに貢献  伊藤忠商事<8001>(東証プライム)グループのファミリ…
  3. ■純正ミラーと一体化し、左後方の視界を広げる  カーメイト<7297>(東証スタンダード)は、純正…
2024年3月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

ピックアップ記事

  1. ■投資と貯蓄の狭間で・・・  岸田内閣の「資産所得倍増プラン」は、「貯蓄から投資へ」の流れを目指し…
  2. ■「ノルム(社会規範)」解凍の序章か?植田新総裁の金融政策正常化  日本銀行の黒田東彦前総裁が、手…
  3. ■「日経半導体株指数」スタート  3月25日から「日経半導体株指数」の集計・公表がスタートする。東…
  4. ■投資家注目の適正株価発見ツール  日銀の価格発見機能が不全になる可能性がある中、自己株式取得が新…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る