【どう見るこの相場】マクロよりミクロならささやかながら成長戦略推進の小型株からクオリティー・スタート

どう見るこの相場

新年度相場早々に「人気は時の花」か試される銘柄がある。AmidAホールディングス<7671>(東マ)である。同社株は、前年度期末の前週28日寄り付き段階に上場来高値4400円まで買い進まれ、昨年12月20日の新規株式公開(IPO)時の公開価格1320円に対して3.3倍と大化けしたが、その高値からは一転してストップ安の3410円まで急落し安値圏で引ける高速エレベータ相場を演じた。この高人気は、同社がインターネット通販で販売している印鑑やスタンプなどの商材に、新元号に改元される関連需要の拡大を期待したことを起因としたが、きょう1日11時30分にはこの新元号が発表予定にあり、その発表を前に利益確定売りに見舞われた。新元号がクローズアップされるなか、28日と同様に「時の花」が出尽くしとなるのか、それとも改元関連需要が本格化するのかが焦点となる。

新年度は、相場全般、マクロ相場の動向も注目される。今年3月以来発表された主要各国の経済指標が、世界的な景気減速を示唆するマイナスの内容ばかりが続き、とくに米国市場では長短金利水準が逆転し、この逆イールド化がアノマリー通りにリセッション(景気後退)入りするとの懸念を強めており、この方向性がまだ不透明であるためだ。それどころか前週末には、トランプ政権からFRB(連邦準備制度理事会)に対して即時の利下げを迫る発言などが伝えられており、これでは逆に、年内の利上げ回避、資産圧縮を決定した3月22日まで開かれたFOMC(公開市場委員会)と同様に、景気実態の悪化を際立たせることなる可能性さえ心配しなくてはならない。

マーケットでは、相場のマクロ環境が不透明な時期に幕間継ぎとして「ミクロはマクロ」、「神は細部に宿る」などと言い交わして個別株物色が中心のミクロ相場が展開されることはよくある。「木を見て森を見ない」投資スタンスの盛り上がりだ。もちろん「人気は時の花」といわれるように、マクロ相場の方向性が定まった途端に主力株買いが再燃し、ミクロ銘柄は、高値でハシゴが外されて人気離散、売り逃げ競争となることはこれまでもよくみられた相場シーンではある。

新年度相場は、前週末の欧米株高を受けて取り敢えず海外投資家主導で主力株の戻りを試す展開からスタートするに違いないが、問題はこの買いが一巡したあととなる。今週も、先進各国で主要経済指標の発表が相次ぎ、さらに舞台を米国ワシントンに移して継続される米中の閣僚級貿易協議も、前週末に先取り買いした株高通りの合意形成につながるか保証の限りではない。ということは、新年度相場は、主力株主導か個別材料株選好かはなお予断を許さないということにもなる。

ここで今週の当コラムでは、そうしたややディフェンシブな相場感を持つ投資家の皆さん向けに個別材料株物色の参考資料をお届けすることとした。ただ個別材料株といっても、AmidAHDのように派手さはなくまだ「時の花」が開花していない銘柄である。今年年初来、国内に新工場の建設を発表するなどの成長戦略を推進し、この投資金額が小規模とささやかで市場の注目を集めたこともないため、なお「時の花」人気の可能性を内包する銘柄の情報である。「時の花」開花までに相当のインターバルを覚悟する必要もあることから、PER・PBR評価でも割り負け水準にいる限定条件付き銘柄である。新年度相場は、こうした銘柄からメジャー・リーグでいう安定性を評価するクオリティー・スタートすることも一興となりそうだ。

■資生堂に比べれば超小粒投資だが低PER・PBRの修正可能性

今年年初来、国内で新工場建設を発表して最も株価感応度が高かったのは、資生堂<4911>(東1)である。2月4日に400億円~500億円を投資して国内外のスキンケア製品の需要拡大に対応して福岡新工場を建設すると発表し、建設中の大阪新工場などを含めると総投資額は約1700億円にも達し、その後、今2019年12月期業績が連続して過去最高更新と予想したことも加わり、年初来高値8020円まで約1300円高した。

大規模投資の資生堂に比べればささやかな投資額になるが、今年年初来、固定資産取得や新工場建設の情報開示をした低PER・PBR株は、発表順に並べるとサカタインクス<4633>(東1)、加藤製作所<6390>(東1)、フジ住宅<8860>(東1)、中部飼料<2053>(東1)、シノブフーズ<2903>(東1)、放電精密加工研究所<6469>(JQS)、ヤマダコーポレーション<6392>(東2)、ザ・パック<3950>(東1)と続く。

このうち加藤製は、共同印刷<7914>(東1)が保有する茨城工場の隣接地をクレーンの試験・研究施設用地として取得(取得価額は非公表)し、戸建て住宅・マンション分譲が主力のフジ住宅は、事業用資産としてビル3棟を81億8000万円で取得し、放電精密は、新工場建設用地を約23億円で取得し、ヤマダコープは、竣工以来50年以上が経過して老朽化した相模原工場を約36億円を投資して建て替え新鋭化する。いずれも昨年12月末に突っ込んだ昨年来安値からの底上げ途上に発表した材料だが、株価はまだ十分に戻し切っておらず新年度入りとともに息の長い新評価につながる展開も想定される。

■業容多様化投資の再生可能エネルギー関連株も人気再燃を期待

また電子部品・半導体用化学品の製造・販売を主力とする太陽ホールディングスは、今年2月5日に近畿地区で3カ所の太陽光発電所を開所したのに続き、再生医療製品を研究・開発・製造・販売するサイフューズ(東京都文京区)と資本・業務提携をし、不整脈治療剤を譲り受けるなど次々と業容多様化の成長戦略を打ち出した。PER評価はやや市場平均を上回るが、自己株式取得を並行して進め、昨年12月末の昨年来安値から1000円幅の底上げをしており、なお上値を刺激しそうだ。この再生エネルギー関連では、タケエイ<2151>(東1)が、バイオマス発電所の竣工・売電開始とともに新たなバイオマス発電所の建設を発表し、Abalance<3856>(東2)も、太陽光発電所の建設決定を開示しており、やや人気の圏外にいる新エネルギー関連株が再び脚光が浴びる牽引役となる可能性もありそうだ。(本紙編集長・浅妻昭治)

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