Jトラストは底値圏、19年3月期赤字予想だが20年3月期V字回復見込む

 Jトラスト<8508>(東2)は、日本、韓国、およびインドネシアを中心とする東南アジアで金融事業を展開し、銀行業を中心とする持続的な利益拡大へのステージアップを目指している。19年3月期はリスクを前倒して貸倒引当金を計上したため赤字・減配予想だが、20年3月期のV字回復を見込んでいる。株価は軟調展開だがほぼ底値圏だろう。反発を期待したい。なお5月13日に19年3月期決算発表を予定している。

■日本、韓国、インドネシア中心に金融事業を展開

 日本、韓国、およびインドネシアを中心とする東南アジアで、金融事業(銀行、信用保証、債権回収、クレジット・信販、その他の金融)を展開している。銀行業を中心に持続的な利益拡大へのステージアップを目指し、M&Aや債権承継などを積極活用して事業基盤を強化している。

 18年3月期のセグメント別営業収益構成比は、国内金融事業12%、韓国金融事業47%、東南アジア金融事業18%、総合エンターテインメント事業3%、不動産事業9%、投資事業10%、その他事業3%だった。

 19年3月期から事業セグメントを変更し、日本金融事業、韓国およびモンゴル金融事業、東南アジア金融事業、投資事業、総合エンターテインメント事業、不動産事業、その他事業とした。

 日本金融事業は日本保証、Jトラストカード、パルティール債権回収など、韓国金融事業はJT親愛貯蓄銀行、JT貯蓄銀行、JTキャピタル、TA資産管理など、東南アジアは金融事業をJトラスト銀行インドネシア、投資事業をJトラストアジアが展開している。

 18年5月にはJトラストアジアがモンゴルのファイナンス事業会社CCIを子会社化、Jトラストアジアがカンボジアの商業銀行ANZRの株式譲渡契約(19年5月までに取得予定)を締結、18年10月にはJトラストアジアがインドネシアの中古車ローン会社JTOを子会社化、Jトラストアジアがインドネシアのファイナンス会社OMFを子会社化(JトラストOMFに商号変更)した。18年12月にはモンゴルのCCIがビィ・フォアード(東京都)と、モンゴルにおける自動車ローン商品販売事業および中古車販売事業者向け資金融資で業務提携した。

 またSAMURAI&PARTNERS<4764>が発行する新株予約権を引き受けて業務提携(19年4月24日予定)した。

 なおJトラストアジアは、東南アジアにおけるリテール分野への進出を企図して販売金融事業のタイGL社に出資するとともに、タイGL社と共同でインドネシアに割賦販売金融事業のGLFI社(出資比率20%)を設立したが、17年10月タイGL社CEOである此下益司氏がタイSECから偽計および不正行為で刑事告発されたため、現在はタイGL社、此下益司氏およびGLの関連取締役に対して、刑事告発手続き、会社更生法申し立て・補償請求・賠償請求などの訴訟を提起している。

 総合エンターテインメント事業と不動産事業は子会社のKeyHolder<4712>が展開している。KeyHolderは18年3月、子会社アドアーズの全株式を譲渡してアミューズメント施設運営から撤退し、ライブ・エンターテインメント事業で新たな収益柱の構築を目指している。

■収益はM&A・事業再編・不良債権処理などで変動

 収益はM&A・事業再編・不良債権処理などで大幅に変動する可能性がある。利益配分については、将来の経営環境や業界動向を総合的に勘案しながら、積極的な利益還元を図ることを基本方針としている。

■19年3月期赤字予想だが20年3月期V字回復見込む

 19年3月期の連結業績予想(IFRS、2月13日に下方修正)は、営業収益が18年3月期比1.5%増の754億41百万円、営業利益が327億45百万円の赤字(18年3月期は47億59百万円の黒字)、親会社所有者帰属当期利益が363億50百万円の赤字(同7億31百万円の赤字)としている。配当予想(2月13日に期末5円下方修正)は年間7円(第2四半期末6円、期末1円)としている。18年3月期比5円減配となる。

 営業収益は、日本・韓国・モンゴルの金融事業が好調だが、遊戯機器開発・製造・販売のハイライツ・エンタテインメント(HE)の株式を譲渡して非継続事業としたことや、東南アジア金融事業の貸付金残高減少に伴って利息収益が減少したため計画を下回る。さらに第3四半期に東南アジア金融事業と投資事業で貸倒引当金を計上したため、ため各利益は赤字予想となった。

 今後の見通しとして、日本・韓国・モンゴルの金融事業は好調に推移し、東南アジア金融事業も体制のスリム化・効率化を図るとともに、18年10月子会社化したJトラストOMFとのシナジー効果や不良債権回収の強化などで業績改善を図る。そして19年3月期の貸倒引当金の計上で、20年3月期からの業績V字回復を目指すための準備が完了したとしている。

■中期的に銀行業の収益拡大期待

 中期ビジョンとして、国内金融事業では不良債権の買取回収と信用保証事業の拡大を推進する。韓国金融事業ではグループ内の相互連携を通じて各事業を有機的に連携させ、債権残高積み増しと収益拡大に取り組む。東南アジア金融事業では、Jトラストインドネシア銀行のアセット拡大と、不良債権回収による収益強化に取り組むとともに、インドネシア以外の東南アジア地域においても、さらなるM&Aを推進する方針だ。

 中期成長に向けて、M&Aや事業再編を活用したグループの事業基盤構築・強化に取り組んでいるため、一時的利益・費用で収益が変動する可能性もあるが、中期的に韓国金融事業の収益改善、東南アジアへの積極的な業容拡大、グループシナジーなどの効果で収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は6月末と12月末の株主対象

 株主優待制度は、毎年6月末または12月末時点の3単元(300株)以上保有株主を対象として、2500ポイント分の楽天ポイントギフトコードを贈呈する。18年6月末対象の株主から導入した。

■株価は底値圏

 株価は軟調展開で4月12日に363円まで下押したが、ほぼ底値圏だろう。反発を期待したい。4月18日の終値は373円、前期推定配当利回り(会社予想の年間7円で算出)は約1.9%、前々期実績連結PBR(前々期実績連結BPS1401円64銭で算出)は約0.3倍、時価総額は約420億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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