【どう見るこの相場】きょう寄り付き前が即断即決の重要ポイント、市場予想通りなら消費税再々延期関連株に緊急対応

どう見るこの相場

 ようやく国内市場の独自材料らしきものが出てきた。消費税増税の再々延期と衆参ダブル選挙の観測である。令和相場入りしてから2週間、米中貿易協議の動向により上へ下へと揺さぶられ、米国のトランプ大統領のツイートに右往左往させられっ放しでもどかしかったが、足元の国内材料だけで株価の先行きを判断することが可能となったのである。

 しかしこの独自材料は、即断即決の必要があると忙しい。きょう20日の寄り付き前の8時50分に内閣府が発表する今年1-3月期の実質国内総生産(GDP)の速報値がこのカギを握っているからである。すでにネット上では、市場予想が0.2%程度のマイナスになり、昨年10-12月期の1.9%のプラスから大幅に鈍化するとの情報が溢れ返っている。このため今年10月1日に8%から10%に引き上げられる予定の消費税増税が、2014年11月、2016年6月に続いて3回目の延長になるとの観測につながっている。

 安倍晋三首相の側近とされる萩生田光一幹事長代行が、テレビ番組で「崖に向かって皆を連れていくわけにはいかない」と消費税増税の再々延期に言及したのは今年4月18日のことである。同幹事長は、この判断は6月の日銀短観の数字を見たうえでとしており、実質GDPの成長率次第で政治決断するとすれば、1カ月以上も前倒しされることになる。もちろん増税の再々延期となれば、国民に信を問うのが政治の常道で衆議院の解散・総選挙は避けられず、込み入った政治日程からも7月の参議院選挙は、衆議院選挙と同日のダブル選挙となるはずだ。

 アベノミクス効果が賞味期限切れとなっている景気実感からいえば、消費税増税の再々延期そのものは誰でも大歓迎だろう。マーケットにとっても、株高、円安・ドル高要因となる可能性が強い。問題があるとすれば、消費税増税対策として消費者の増税感を軽減するためのポイント還元関連として人気化したキャッシュレス決済関連株の先行きで、ハシゴを外される形になる恐れもある。しかしその関連株も、平成時代にひと山もふた山も関連相場を形成しており、売るべき投資家はすでに売っていると想定され、マイナスの影響は、全般相場を崩すほどには大きくないとみたい。

 そこで今週の当コラムでは、早手回しに消費税増税の再々延期関連株を取り上げることとしたい。もちろんきょう寄り付き前に発表される1-3月期実質GDPが、市場予想通りにマイナス転換することが、「買う」、「買わない」の分かれ目の大前提となり、不確かで申訳ないが、この数値を確認したうえでのみ関連株にアプローチ余地が生じる。選挙関連の常連株、消費税増税で業績・株価とも不調だった百貨店株などをマークしたい。

■選挙関連の三羽烏を中心に2017年9~10月の急伸相場の再現が有力

 消費税増税の再々延期関連の一番手候補は、衆議院解散・総選挙、ダブル選挙で大忙しとなる選挙関連株となる。なかでも選挙関連三羽烏の政治サイト運営のパイプドホールディングス<3919>(東1)、選挙用メーリングサービス事業を展開のイムラ封筒<3955>(東2)、投開票システムで首位のムサシ<7521>(JQS)は外せない。このうちイムラ封筒とムサシは、増税する消費税の使途変更を争点に踏み切った前回の2017年10月の衆議院選挙では、これを先取りして再三のストップ高を交えて急伸した。今年は、統一地方選挙を前に急伸する場面があったものの、往って来いとなっており、先取りの勢いにはやや物足りなさが残るが、今回は、選挙関連人気に実需が後追いして株価を押し上げる展開が想定される。

 三羽烏の人気相場がスタートすれば、さらに選挙関連の常連株が追随高することになる。ネット選挙配信システムのエイジア<2352>(東1)、ネット調査のGMOリサーチ<3695>(東マ)、投票用紙自動交付機のグローリー<6457>(東1)、拡声器のTOA<6809>(東1)、選挙資機材のワキタ<8125>(東1)、西尾レントオール<9699>(東1)などである。選挙のたびごとに動意付く麻生太郎財務大臣のルーツの麻生グループ会社の麻生フオームクリート<1730>(JQS)も、思惑株として再注目されそうだ。

■高額商品関連の百貨店株はPBR1倍と売られ過ぎで円安進行ならインバウンド需要回復も

 消費税増税の再々延期で業績と株価人気の復元が期待されるのは、今年10月を前に株価が年初来安値水準に張り付き、業績も展開難となっている銘柄で、その代表は、高額商品関連の百貨店株だろう。大手百貨店のJ.フロント リテイリング<3086>(東1)、三越伊勢丹ホールディングス<3099>(東1)、高島屋<8233>(東1)、エイチ・ツー・オー リテイリング<8242>(東1)の大手4社は、いずれもこの4月、5月に年初来安値まで売り込まれたが、PBRは揃って1倍台割れと解散価値を下回って売られ過ぎとなっている。業績は今期もなお伸び悩み状況にあるが、不採算店舗の閉店や高島屋の日本橋SCの本格稼働などの新店舗の寄与などリストラも進んでおり、下げた株ほどよく戻るとする「リターン・リバーサル」展開が期待できる。さらに消費税増税の再々延期で円安・ドル高が進むようならインバウンド需要の回復という側面支援材料も出てくる。

 このほか今2月期配当を普通配当の増配と創業150周年の記念配当を予定している松屋<8237>(東1)、今2月期業績を消費税増税の影響で最も厳しく予想している近鉄百貨店<8244>(東1)、地方百貨店の大和<8247>(東2)、井筒屋<8260>(東1)、ながの東急百貨店<9829>(JQS)なども底上げを期待したいところで、一部銘柄は信用好需給もサポート要因となりそうだ。(本紙編集長・浅妻昭治)

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