加賀電子は売り一巡して反発期待、20年3月期減益予想だが中期的には収益性向上期待

 加賀電子<8154>(東1)は独立系の大手エレクトロニクス商社である。富士通エレクトロニクスを19年1月子会社化(段階的に株式取得して22年1月完全子会社化予定)した。19年3月期は営業・経常減益(純利益は負ののれん代計上して増益)だった。現状は富士通エレクトロニクスの利益寄与が小さく、世界経済減速の影響も考慮して20年3月期減益予想だが、中期的には収益性向上を期待したい。株価は水準を切り下げて16年以来の安値圏だが、売り一巡して反発を期待したい。

■独立系の大手エレクトロニクス商社でEMSビジネスも展開

 独立系の大手エレクトロニクス商社で、半導体・電子部品・情報機器等の商社ビジネス、および電装基板製造受託サービスのEMSビジネスを展開している。

 19年1月富士通エレクトロニクスを子会社化(富士通セミコンダクターから株式70%取得)した。この後20年12月15%、21年12月15%を段階的に追加取得し、22年1月完全子会社化予定である。

 この買収によって売上高5000億円級の企業グループとなる。取り扱い商材の拡大や顧客基盤の共有によって電子部品事業における業界NO.1規模を目指す。現状は富士通エレクトロニクスの利益水準が低いため短期的な目標は商社ビジネスの量的拡大だが、中期的な目標として商社ビジネスとEMSビジネスのシナジーによる収益性向上(利益額の拡大と利益率の向上)を目指す。さらにグローバル競争に勝ち残るため「世界に通用する企業」を目指す方針だ。

 19年3月期(第4四半期から富士通エレクトロニクスを新規連結)のセグメント別売上高構成比は、電子部品事業(半導体、電子部品、EMS)77%、情報機器事業(パソコン・周辺機器、各種家電、写真・映像関連商品)15%、ソフトウェア事業(CGアニメ映像制作、アミューズメント関連商品)1%、その他事業(エレクトロニクス機器修理、アミューズメント機器製造販売、スポーツ用品販売など)7%、営業利益(連結調整前)構成比は電子部品事業64%、情報機器事業26%、ソフトウェア事業3%、その他事業7%だった。

 20年3月期からセグメント区分を電子部品事業、EMS事業、CSI事業(従来の情報機器事業)、その他事業(従来のソフトウェア事業、その他事業)とする。

 なおベンチャー投資として、ウェアラブルコミュニケーションデバイス開発のBONX、前立腺癌生検および治療用システム開発の米HARMONUS、スマートセキュリティサービスのSecual、ソフトバンクグループで保育クラウドサービスを展開するhugmo、AIソフトウェア開発のハカルス、次世代蓄電デバイス「グリーンキャパシタTM」開発のスペースリンクなどに出資している。

■20年3月期減益予想だが中期的には収益性向上期待

 19年3月期連結業績(第4四半期から富士通エレクトロニクスを新規連結)は、売上高が18年3月期比24.1%増の2927億79百万円、営業利益が6.8%減の75億70百万円、経常利益が10.1%減の78億59百万円、そして純利益が23.5%増の80億14百万円だった。純利益は負ののれん代21億64百万円を計上して13期ぶりに最高更新した。配当は創立50周年記念配当5円と特別配当5円を含めて、19年3月期比10円増配の年間80円(第2四半期末35円、期末45円)とした。配当性向は27.4%である。

 富士通エレクトロニクスを第4四半期から新規連結(売上高570億90百万円、営業利益2億42百万円の寄与)して大幅増収だが、従来の加賀電子分が0.1%減収、9.7%営業減益だった。電子部品事業において、EMSは車載向けや空調向けが順調だったが、部品販売が家電製品分野の主要顧客における生産調整などで低調だった。情報機器では商業施設向けLED設置が順調だったが、住宅向け家電販売が販売先の納期調整で低調だった。

 セグメント別営業利益(連結調整前)は、電子部品が10.4%減の47億61百万円、情報機器が13.4%減の19億06百万円、ソフトウェアが43.6%増の2億47百万円、その他が59.1%増の4億90百万円だった。

 20年3月期の連結業績予想は、売上高が19年3月期比46.9%増の4300億円、営業利益が7.5%減の70億円、経常利益が10.9%減の70億円、純利益が37.6%増の50億円としている。配当予想は20円減配の年間60円(第2四半期末30円、期末30円)で、予想配当性向は32.9%となる。

 富士通エレクトロニクスが通期寄与(売上高1950億円、営業利益5億円)して大幅増収だが、グループ全体として先行き不透明な内外情勢を慎重に織り込み、従来の加賀電子分(売上高が0.3%減の2350億円、営業利益が11.3%減の65億円)において減益を見込んでいる。また富士通エレクトロニクス分についても、大口商権解消リスクを織り込んで減収減益見込みとしている。純利益は負ののれん代一巡なども影響する。

 セグメント区分変更後の営業利益(連結調整前)計画は、電子部品が3.4%減の22億円、EMSが5.0%増の28億円、CSIが21.3%減の15億円、その他が9.7%減の5億円としている。

 現状は富士通エレクトロニクスの利益寄与が小さく、世界経済減速の影響も考慮して20年3月期減益予想だが、中期的には収益性向上を期待したい。

■22年3月期営業利益130億円目指す

 中期経営計画2021では、基本方針に収益基盤強化、経営基盤安定化、新規事業創出、経営目標値に22年3月期売上高5000億円、営業利益130億円、ROE8%以上を掲げている。為替の前提は1米ドル=110円、売上高構成比は電子部品60%、EMS28%、CSI10%、その他2%である。株主還元は連結配当性向25~35%を確保しつつ安定的な配当を実施する方針だ。

 収益基盤強化では、成長分野(車載、通信、環境、産業機器、医療・ヘルスケア)への取り組み、EMSビジネスおよび海外ビジネスの強化・拡大を推進する。経営基盤安定化では、富士通エレクトロニクスをグループ化した後の効率性・財務健全性の早期改善に向けて、グループ横断的なコスト削減、組織体制整備によるグループ経営効率化、コーポレートガバナンス強化を推進する。新規事業創出ではM&Aも積極活用して、保育・福祉・介護等の社会課題ビジネスや素材ビジネスへの取り組み、ベンチャー投資によるオープンイノベーションを推進する。

 EMSビジネスの成長シナリオは、オーガニック成長として、既存の中国、アセアン、欧州の生産拠点に加えて、新拠点で18年1月稼働のメキシコ、18年3月稼働のベトナム、18年10月稼働のトルコ、19年春稼働予定のインドが順次、収益寄与が本格化する。そして今後は車載、産業機械、空調、医療・ヘルスケア分野を成長ドライバーとして事業拡大を推進する。また富士通エレクトロニクスが持つ有力顧客に対して「キーデバイス+EMS」のアプローチを展開してシナジー効果を目指す。さらにEMSビジネス拡大に向けて新たなM&A機会に挑戦するとしている。

■株価は売り一巡期待

 株価は5月31日に1584円まで下押した。水準を切り下げて16年11月以来の安値圏だが、売り一巡して反発を期待したい。5月31日の終値は1586円、今期予想連結PER(会社予想連結EPS182円17銭で算出)は約9倍、今期予想配当利回り(会社予想の年間60円で算出)は約3.8%、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS2790円97銭で算出)は約0.6倍、時価総額は約455億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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