【忠田公夫の経済&マーケット展望】NYダウはQE3終了し金融相場から業績相場への移行期

忠田公夫の経済&マーケット展望

米国の9月の雇用統計が発表され、失業率は5.9%に低下、リーマン・ショック前の水準にまで改善してきた。思い返せば、あのリーマン・ショック(2008年9月)以降、世界経済は未曽有の危機に直面し、米国では当時、世界のトップクラスにあった超一流企業(自動車ではGMやクライスラー、金融ではシティグループ、保険ではAIGなど)が相次いで破綻の淵に追い込まれた。

終値ベースで紹介すると、NYダウは07年10月高値の1万4164ドルから09年3月には6547ドルまで、実に7617ドルの暴落となり半値以下のレベルに沈んだ。金融危機を内包した落ち込みは世界に拡散し、急激な需要の縮小をもたらし、日経平均も07年の高値1万8261円から09年3月には7054円まで1万1207円と震源地の米国をしのぐ暴落を演じた。これはドル円が07年の高値124円14銭から大幅な円高を余儀なくされたことに起因している。

ドイツのDAX指数も07年高値の8105ポイントから09年3月の3666ポイントまで半値以下に下落したが、下げの衝撃は日経平均ほどではなかった。これは08年7月以降ユーロドルが急速にユーロ安に振れたことが、経済のデフレ化を防いだ訳で、同時期に円高を招きデフレに陥ったわが国経済とは趣を異にしている。

リーマン・ショックに端を発した状況を当時、グリーンスパンFRB元議長は「100年に1度の危機」と形容したが米国は財務省とFRBが総力を結集し、TARPで巨額の公的資金を注入し不良債権を処理し、金融システムを正常化させると共に、QE1,QE2、QE3を発動して、NYダウは09年3月の6547ドルをボトムに、本年9月19日にはザラ場で1万7350ドルの高値をつけるに至ったのである。

今月末をもってQE3は終了し、来年には利上げを検討する方向にまで改善してきた米国経済だが、金融相場から次の業績相場への移行期にある今、市場はどのようなメッセージを発しようとしているのか、真摯に受け止めたい。(証券アナリスト)

 

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■岡崎医療センターで実証、医療従事者の負担軽減と業務効率化を確認  川崎重工業<7012>(東証プ…
  2. ■全国の介護事業者が安心して選定可能、TAISコード取得で信頼性向上  丸文<7537>(東証プラ…
  3. ■生成AIへの危機感、弁護士の間で高まる  GVA TECH<298A>(東証グロース)は8月21…
2025年10月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

ピックアップ記事

  1. ■全市場のわずか1.4%、希少な高配当利回り銘柄が浮上  株式市場では、高配当利回りを持つ10月決…
  2. ■「高市祭り」への期待と警戒交錯、資金は安定配当株へシフト  10月終盤相場は、「高市祭り」か「高…
  3. ■自民党総裁選と連立問題が相場を左右、短期急伸と急落を交錯  高市トレードは、まるで「超高速エレベ…
  4. ■東京市場、リスクオンとリスクオフが交錯、安全資産関連株に注目  週明けの東京市場は、米国株反発に…
  5. ■公明党離脱ショック一服、臨時国会控え市場は模索  またまた「TACO(トランプはいつも尻込みして…
  6. ■自民党人事でハト派ムード先行、逆張りで妙味狙う投資戦略も  今週の当コラムは、ハト派総裁とタカ派…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る