【アナリスト水田雅展の銘柄分析】エスプールは売り一巡、15年11月期増収増益見通しを再評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 人材サービスのエスプール<2471>(JQS)の株価は、第1四半期の営業赤字で水準を切り下げたが、売りが一巡して反発の動きを強めている。15年11月期の増収増益見通しを再評価してボックスレンジ下限から切り返し局面だろう。

 ビジネスソリューション事業(ロジスティクスアウトソーシング、障がい者雇用支援・就労移行支援サービス、フィールドマーケティングサービス、マーチャンダイジングサービス、販売促進支援業務、顧問派遣サービスなど)、人材ソリューション事業(コールセンター向け派遣、携帯電話販売員派遣、ストアスタッフ派遣など)を展開している。

 ロジスティクスアウトソーシングサービスはネット通販市場拡大が追い風であり、子会社エスプールロジスティクスが、ECサイト出店企業などの物流センター運営・発送代行サービスで新規顧客獲得を推進している。

 障がい者雇用支援サービスは障がい者雇用促進法に基づいて大企業の障がい者雇用をサポートする。企業向け賃貸農園「わーくはぴねす農園」の栽培設備販売収入と農園運営管理収入を収益柱だ。子会社エスプールプラスが運営する千葉県市原市「わーくはぴねす農園 市原ファーム」では23社の企業がサービスを利用し、14年6月に新設した千葉県長南町「わーくはぴねす農園 茂原ファーム」も完売した。15年2月には第3農園となる山武農園を開設し、15年後半にも複数の農園の開設を計画している。高付加価値サービスとして千葉県を中心に事業規模を拡大する方針だ。

 また15年2月には、子会社エスプールプラスが就労移行支援事業所「障がい者就職塾」千葉校を開設すると発表した。今回の事業所開設で「障がい者就職塾」のネットワークは5拠点となる。これまで4年間で約150名の知的障がい者が就職し、退職率が1%未満という高い定着率を誇っている。

 フィールドマーケティングサービスでは、電力会社が推進するスマートメーター関連業務が拡大している。14年9月に子会社エスプールエコロジーが一般建設業(電気工事業、電気通信工事業)の許可を取得し、移動通信キャリアの通信・ネットワーク機器の設置業務、電力計のスマートメーター化に関連したサポート業務の事業拡大を推進している。

 さらに3月30日には子会社エスプールエンジニアリングの設立(2月2日付)と、大規模な工事を請け負うことができる特定建設業(電気工事業、管工事業)の許可取得を発表した。新会社設立に伴ってエスプールエコロジーが行っていた業務についても新会社に順次移管する方針だ。

 人材ソリューション事業(子会社エスプールヒューマンソリューションズ)では、ファミリーマート<8028>のFC店舗向けに人材提供を一括で行う「人材サポートセンター」を設立し、コンビニエンスストア向けストアスタッフサービスを強化している。

 なお14年11月には販売促進支援業務に特化した子会社エスプールセールスサポートを設立している。マーチャンダイジング業務、クレジットカードなどの会員獲得業務、販売イベントブースの運営業務など、複数の事業部や子会社で提供していた販売促進支援業務を集約して、事業拡大と収益性向上を目指す戦略だ。

 4月2日に発表した今期(15年11月期)第1四半期(12月~2月)の連結業績は、売上高が前年同期比11.5%増の16億61百万円、営業利益が22百万円の赤字(前年同期は17百万円の黒字)、経常利益が24百万円の赤字(同14百万円の黒字)、そして純利益が27百万円の赤字(同10百万円の黒字)だった。

 売上面ではロジスティクスアウトソーシングサービスや人材派遣サービスなどを中心に好調だったが、主力事業の業容拡大や新規事業の強化に向けた人員増に伴う人件費増加で営業赤字だった。障がい者雇用支援サービスにおける第3農園の開園遅れも影響したようだ。セグメント別(内部取引・全社費用等調整前)に見るとビジネスソリューション事業は12.2%増収、50.4%営業増益、人材ソリューション事業は9.4%増収、21.6%営業減益だった。

 通期の連結業績見通しは前回予想(1月14日公表)を据え置いて売上高が前期比10.5%増の73億円、営業利益が同9.4%増の2億26百万円、経常利益が同11.8%増の2億14百万円、そして純利益が同9.6%増の1億81百万円としている。配当予想は前期と同額の年間10円(期末一括)としている。

 セグメント別の計画は、ビジネスソリューション事業の売上高が28.2%増の34億68百万円、営業利益が46.1%増の4億10百万円、人材ソリューション事業の売上高が0.5%増の40億円、営業利益が17.8%減の2億55百万円としている。なお人材ソリューション事業からビジネスソリューション事業への業務移管(セグメント組替)の影響は売上高で約2億40百万円としている。

 ロジスティクスアウトソーシングサービスは訪日外国人旅行客によるインバウンド消費増加やネット通販市場拡大が追い風であり、障がい者雇用支援サービス、スマートメーター関連業務、コールセンター業務などの主力事業が順調に拡大する。スタッフ採用難や人件費増加などを織り込んで保守的な見通しとしているが増額余地があるだろう。

 15年1月に発表した新中期経営計画「Next2020-変化への挑戦」では、中期ビジョンとして「NO.1アウトソーシング・プロバイダー」を掲げている。社会貢献性・成長性の高い分野での事業展開、ニッチな分野・参入障壁の高い分野での事業展開を推進し、経営目標値は営業利益率5%の早期達成と20年度までに業界最高水準10%の達成、安定的かつ継続的な配当の実施、ROE最低5%堅持とした。高付加価値サービスが牽引して収益拡大基調だろう。

 株価の動きを見ると、第1四半期の営業赤字で水準を切り下げた。4月10日には年初来安値となる826円まで調整する場面があった。ただしその後は反発の動きを強めている。14日には882円まで戻す場面があった。目先的な売りが一巡したようだ。

 4月14日の終値876円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS60円37銭で算出)は14~15倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は1.2%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS251円66銭で算出)は3.5倍近辺である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んで調整局面だが、800円~1200円近辺のボックスレンジ下限に到達した形だ。目先的な売りが一巡し、15年11月期の増収増益見通しを再評価してボックスレンジ下限から切り返し局面だろう。

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