【小倉正男の経済コラム】文在寅政権:唯一無比は3品目だけではないという不都合な事実

■フッ化水素などの周辺にも唯一無比な存在が数多い

 例えば韓国への輸出規制3品目である高純度フッ化水素、レジスト、フッ化ポリイミドでみても、その周辺にそれらを測定する微粒子計測器(パーティクルカウンター)というものがある。

 フッ化水素、レジストが工場に納入された時点、生産ラインで半導体を製造する時点でそれぞれ超微細なゴミなどが混入していないかを計測するものだ。フッ化水素、レジストに少しでも超微細なゴミが入っていれば、半導体生産の歩留まりは大きく悪化する。

 この微粒子計測器、パーティクルカウンターを押さえているのがリオン(東証1部)という日本企業である。リオンは補聴器でトップシェアを持つ企業だが、アメリカの企業とほぼ2社でこのパーティクルカウンターの世界市場を二分化してマーケットを制圧している。

 フッ化水素など3品目の周辺にもこれがなければ半導体の生産が事実上ストップするような多くの品目を日本企業は押さえている。

 こうした事実を認識しないで韓国の文在寅大統領は、「北朝鮮と経済協力で平和経済を実現すれば、一気に日本経済の優位に追いつく」などと呆れてしまうような発言を繰り替えしている。事実も知らずに安上がりな言葉と感情に走って冷静さを失っている。

 これでは判断を誤るだけである。いや、というより北朝鮮と一緒になりたいというのが文在寅大統領の本心で、それがポロッと出たというべきか。

■「盗人猛々しい」「警告する」=事実は見えているのか

 言葉と感情というものは、いくら使ってもタダというかコストはかからない。文在寅大統領は、国民を煽るだけ煽っている。手がそれしかないのだろう。

 言葉と感情も時間がたてば色あせる。本物かどうか、自分のやっていることを正当化するだけのものか、判定されることになる。時間が過ぎれば過ぎるほど真贋が暴かれて窮地を迎えるのではないか。

 「盗人猛々しい」「警告する」「二度と日本に負けない」――文在寅大統領は、日本に対してそうした言葉と感情を使っている。ほとんど北朝鮮がやっているプロパガンダと同列次元の言葉であり、一国を率いる政治家としては気品に欠ける。首をかしげざるを得ない。

 「北朝鮮と平和経済が実現すれば、一気に日本経済の優位に追いつくことができる」
 極めつきは文在寅大統領の発したこの言葉だが、これも現実というか事実というか、見えているのかなと心配になるほどだ。

 言っているそばから北朝鮮は、ミサイルの実験をやり続けているというのに。文在寅大統領としたら、北朝鮮への“誠の恋路は結び難し”(シェクスピア)ということか。

 意表をつかれるというか、そんな発想や認識で考えているのかということになる。北朝鮮には鉱物資源はあるが、高度技術とは別の話で、都合よくすり替えている。ありとあらゆる汚い手を使って日本の技術をコピーして追い付くという戦法をまた採るのか。

 一国の大統領が、アジテートで支持率を上げようとしてもいずれ国民に見透かされる。チープな言葉と感情だけを受け取っても国民はやすやすと従うと思っているわけだが、お隣の北朝鮮とまったく変わることはない。国民を馬鹿にしているというしかない。

■冷静で余裕のある自国分析ができているのか

 日本が発動した輸出規制、たったの3品目である高純度フッ化水素、レジスト、フッ化ポリイミドだけで韓国は利下げを行った。

 慌てているというか、韓国の経済は危機的であることを露呈させたようなものだ。ほんの3品目だけの規制で、「盗人猛々しい」「警告する」「二度と負けない」と品のない呈を晒している。

 フッ化水素は半導体の洗浄に使われている。レジストは半導体基板に塗る感光剤だ。フッ化ポリイミドはスマホなどの有機ELディスプレーに使われている。

 これらの品目があったからサムスンなどが水平分業で成長できたのだから、一端の感謝をしてもしかるべきである。だが、そうした冷静で余裕のある自己分析というか、自分探しがまったくできていない。

 規制後にサムスンへのレジストの輸出が超スピードで許認可された。この発表では、あまりの早さに憶測が出るほどだったが、文在寅大統領は、感謝は一言も発せず、「ホワイト国除外」など日本への文句を並べ立てた。

■おカネは韓国の周章狼狽を見切っている

 どうやら感謝とか余裕とかはまったくない。「被害者意識」だけが極大化して、「責任は100%日本にある」というのだから、どうぞ北朝鮮と平和経済を実現して頑張ってくださいというしかない。

 やれることはあまりないのだから、お得意である「告げ口外交」も、言葉と感情で原材料費はタダだからどんどんやってくださいということになる。

 せっかく自国を冷静にみつめるよいチャンスなのに残念ながら亡国の兆しすら見え始めている。通貨安、株価安、韓国のマーケットは文在寅大統領に亡国の危機を先取りしている。

 おカネは韓国・文政権の周章狼狽ぶりを見切っているといえそうである。国民より2、3歩早く、資本とはそうしたものだが韓国から逃げ出している。

(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

最新記事

カテゴリー別記事情報

     

    新着記事

    ピックアップ記事

    1. ■フッ化水素などの周辺にも唯一無比な存在が数多い  例えば韓国への輸出規制3品目である高…
    2.  大型連休中の先週、野菜などで作った代替肉の食品メーカー、ビヨンド・ミートが米国でNASDAQ…
    3. ■前3月期の営業利益2.1倍など業績の大幅回復とともに注目強まる ミサワホーム中国<17…
    2019年11月
    « 10月    
     123
    45678910
    11121314151617
    18192021222324
    252627282930  

    アーカイブ

    IRインタビュー 一覧

    アルコニックスの竹井正人社長 JPホールディングス・古川浩一郎社長に聞く Eストアーの石村賢一社長に聞く アイビーシーの加藤裕之社長に聞く ピクスタの古俣大介社長に聞く メディカル・データ・ビジョンの岩崎博之社長に聞く イワキの岩城慶太郎副社長に聞く ヨコレイの西山敏彦社長に展望を聞く 平山の平山善一社長に近況と展望を聞く アンジェス MGの山田 英社長に聞く CRI・ミドルウェアの押見正雄社長に聞く 京写の児嶋一登社長に聞く

    アーカイブ

    「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
    また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
    ページ上部へ戻る