【編集長の視点】イグニスは続落も3Q赤字業績を「INSPIX」の早期リリースでカバーして下げ渋り

 イグニス<3689>(東マ)は、前日15日に68円安の1002円と変わらずを含めて4営業日続落して引け、取引時間中に974円まで売られ、6月26日につけた年初来安値995円を更新する場面があった。ただ同安値は下ヒゲでつけて引き戻し心理的なフシの1000円大台をキープする下げ渋りの動きもみせた。同社株は、今年8月9日に開示した今2019年9月期第3四半期(2018年10月~2019年6月期、3Q)業績が、連続赤字で着地したことが響いて、300円安とストップ安し、米中貿易摩擦激化による世界同時株安の再燃でさらに下値を探ったが、同13日には積極的投資事業のVR・エンタメ事業でバーチャルライブアプリ「INSPIX」のリリースを発表、業績寄与期待を高めて売られ過ぎ訂正買いが交錯した。3Q業績の赤字自体も、前年同期より縮小しており、同様の着地となった今期第2四半期(2018年10月~2019年3月期)累計業績の発表時並みの前向き評価に変わり、買い手掛かりとなっている。

■自宅にいながら音楽ライブに参加しバーチャル握手会も

 同社は、恋愛・婚活マッチングサービス「with」、ゲーム事業のほか、新規ジャンルのチャレンジとしてVR(仮想現実)やAI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)などの最先端技術を商業化する成長戦略を推進し、早期収益化に向け積極的に経営資源を投入してきた。今回、子会社のパルス(東京都渋谷区)が、AppStoreとGooglePlayでリリースした「INSPIX」は、スマホ対応のVR-HMDにより誰もが自宅にいながら音楽ライブやバーチャル握手会に参加し出演アーティストとリアルタイムコミュニケーションが取れるフェーズ3の革新的なサービスである。3Q決算発表時にリリース間近としていたものが、早期実現したことになり、先行投資の収穫期入りに貢献する見込みだ。 

 一方、今期3Q業績は、売り上げが40億6200万円(前年同期比11.7%増)と増収転換したが、営業利益は7億2300万円の赤字(前年同期は9億5100万円の赤字)、経常利益は8億700万円の赤字(同9億7900万円の赤字)、純利益は3億5800万円の赤字(同10億8300万円の赤字)と連続赤字となった。ただ今期四半期別の営業利益の赤字幅は、第1四半期の3億4000万円の赤字が、第2四半期に1億7400万円の赤字、3Qが2億900万円と縮小方向にあり、3Q累計でも赤字幅は、前年同期より2億2800万円改善した。

 今年4月3日に提供したグループ初のブラウザゲーム「猫とドラゴン」などの新規タイトルの売り上げ貢献が限定的となり、VR・エンタメ事業の先行投資拡大や人材採用費用の増加も響いたが、コミュニティ事業で主力の恋愛・婚活マッチングサービス「with」のユーザー数が今年6月末に200万人を突破し、同売り上げが前年同期比82%増と大きく伸び、売上高構成比も52%超とアップさせたことなどが増収転換の要因となった。今9月期通期業績は、売り上げ60億円(前期比23.1%増)、営業利益3000万円(前期は25億3200万円の赤字)、経常利益1000万円(同25億7100万円の赤字)、純利益500万円(同26億5100万円の赤字)と小幅ながら黒字転換を見込んでいる。 

■25日線から25%超の下方かい離と売られ過ぎを示唆し「リターン・リバーサル」妙味

 株価は、6月に突っ込んだ995円安値から「INSPIX」のリリース予定発表や「with」の新イベント開催などの好材料が続いて大きく底上げ年初来高値1588円まで60%高し、この間、25日線が75日線を上抜くゴールデンクロス(GC)を示現して上昇トレンド転換を強く示唆した。同高値後は、米国のトランプ大統領の対中制裁関税第4弾発動表明による世界同時株安の再燃にツレ安し、さらに3Q赤字業績も重なってストップ安した。今期2Q業績発表時も、当座は株価下ぶれとなったものの、その後は赤字縮小を手掛かりに出直った実績もあり、25日移動平均線より25%超の下方かい離と売られ過ぎを示唆しているここから、下げた株ほどよく戻すとする「リターン・リバーサル」妙味を発揮し、8月14日ザラ場高値1230円抜けから25日線水準の1350円を通過点に、年初来高値奪回と底上げに再発進しよう。(本紙編集長・浅妻昭治)

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