【アナリスト水田雅展の銘柄分析】カーリットホールディングスは16年3月期増収増益期待で切り返し

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 自動車用緊急保安炎筒などを展開するカーリットホールディングス<4275>(東1)の株価は、3月の戻り高値圏680円~700円近辺から一旦反落したが、4月1日の618円から切り返している。15年3月期利益下振れ懸念を織り込んで調整が一巡したようだ。0.7倍近辺の低PBRも評価材料であり、16年3月期増収増益期待で切り返し展開だろう。

 日本カーリットが株式移転で設立した純粋持株会社である。化学品事業(産業用爆薬、自動車用緊急保安炎筒、信号炎管、化成品関連、電子材料・機能性材料、危険性評価試験受託、2次電池充放電試験受託など)、ボトリング事業、産業用部材事業(半導体用シリコンウェーハ、研削材、耐火・耐熱金物、スプリングワッシャー)を展開している。

 自動車用緊急保安炎筒は新車装着用・車検交換用を展開し、国内市場シェアは約8~9割と想定されている。ボトリング事業は伊藤園<2593>向けが主力である。半導体用シリコンウェーハは小口径4~6インチのニッチ市場を主力としている。海外は中国・上海、シンガポールに展開している。

 前中期経営計画「飛躍500」では「事業領域の拡大、市場の拡大、シェアの拡大という3つの拡大戦略により売上高500億円の化学会社への成長」を基本方針として、グループ収益基盤と総合力強化に向けたM&A戦略で事業の多様化を推進した。12年1月に工業用塗料販売・塗装工事の富士商事、12年8月に耐火・耐熱金物製造販売の並田機工、13年10月に一級建築士事務所の総合設計、14年2月に各種スプリング製造・販売の東洋発條工業を子会社化した。

 そして15年2月に新中期経営計画「礎100」を発表した。18年の創業100周年を迎え、次の100年企業の礎となる事業基盤確立を推進する。目標数値は18年度の売上高650億円、営業利益35億円、15年度~18年度4年間合計の設備投資額200億円とした。中長期目標は24年度までに売上高1000億円到達としている。

 基本戦略としては、成長基盤強化(新商品・新規事業の創出と育成、M&Aや資本・技術提携など)、収益基盤強化(既存事業での領域拡大、付加価値の向上など)、グループ経営基盤強化(グループシナジーの最大化、関連企業の統合・再編、R&Dの新体制構築、海外展開の強化、CSR経営の推進など)を掲げている。

 新商品・新規事業の創出と育成に関しては、ロケット用など高エネルギー化学物質の宇宙産業への展開、環境・エネルギー関連の次世代蓄電デバイスへの展開、ライフサイエンス関連のヘルスケア材料・農薬関連への展開、無機機能材料の展開など、重点分野を一段と強化する方針だ。

 前期(15年3月期)の連結業績見通し(5月15日公表)は売上高が前々期比18.0%増の470億円、営業利益が同0.3%増の16億円、経常利益が同1.4%増の17億円、純利益が同28.1%減の9億円、配当予想が前期と同額の年間10円(期末一括)としている。

 第3四半期累計(4月~12月)は前年同期比14.7%増収、35.5%営業減益、31.3%経常減益、4.3%最終減益で、通期見通しに対する進捗率は売上高70.7%、営業利益37.2%、経常利益40.7%、純利益57.3%とやや低水準だった。東洋発條工業の新規連結も寄与して大幅増収だったが、利益面では新規連結子会社ののれん償却を含む販管費の増加、2次電池充放電受託試験設備の償却負担、ボトリング事業での設備メンテナンスなどが影響した。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)106億67百万円、第2四半期(7月~9月)115億52百万円、第3四半期(10月~12月)110億29百万円、営業利益は第1四半期54百万円の赤字、第2四半期2億67百万円、第3四半期3億82百万円である。

 今期(16年3月期)は、緊急脱出用ガラス破壊器具付き自動車用緊急保安炎筒「ハイフレヤープラスピック」の拡販、2次電池充放電受託試験の本格稼働に伴う収益化、工業薬品のシェア拡大、光機能性材料の車載用・建材用熱線遮蔽フィルムの拡販、ボトリング事業での新商品受注、並田機工のごみ焼却場向け需要増加などで増収増益が予想される。

 中期的にも積極的なM&A戦略の効果、新商品・新規事業の育成、経営資源の有効配分、グループシナジーの最大化などで収益拡大基調だろう。

 株価の動きを見ると、3月期末の配当権利落ちも影響して3月の戻り高値圏680円~700円近辺から一旦反落したが、4月1日の618円から切り返しの動きを強めている。15年3月期利益下振れ懸念を織り込んで調整が一巡したようだ。

 4月17日の終値644円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS43円71銭で算出)は14~15倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は1.6%近辺、前々期実績PBR(前々期実績の連結BPS922円98銭で算出)は0.7倍近辺である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線近辺で下げ渋る動きだ。サポートラインを確認した形だろう。0.7倍近辺の低PBRも評価材料であり、16年3月期増収増益期待で切り返し展開だろう。

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■グローバルモデルに匹敵する日本語対応の高性能生成AIを4月から順次提供  ELYZAとKDDI<…
  2. ■優勝への軌跡と名将の言葉  学研ホールディングス<9470>(東証プライム)は3月14日、阪神タ…
  3. ■新たな映画プロジェクトを発表  任天堂は3月10日、イルミネーション(本社:米国カリフォルニア州…
2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■金先物と原油価格、史上最高値に迫る―地政学リスクが市場に与える影響  今週のコラムは、異例中の異…
  2. ■「虎」と「狼」の挟撃を振り切り地政学リスク関連株で「ピンチはチャンス」に再度トライ  東京市場は…
  3. ■海運株と防衛関連株、原油価格の動向に注目集まる  地政学リスクによる市場の不安定さが増す中、安全…
  4. ■中東緊張と市場動向:投資家の選択は?  「遠い戦争は買い」とするのが、投資セオリーとされてきた。…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る