【編集長の視点】加賀電子はタイのEMS第2工場建設に1Q好業績見直しがオンして4連騰

加賀電子<8154>(東1)は、前日10日に49円高の1754円と高値引けで4営業日続伸し、8月6日につけた年初来安値1450円からの底上げを鮮明化させた。直接の買い材料は、今年9月3日に発表したタイでのEMS(電子機器の受託製造サービス)の第2工場建設だが、今年8月7日に開示した今2020年3月期第1四半期(2019年4月~6月期、1Q)業績のV字回復、3月期通期予想業績に対する高利益進捗率も合わせて見直され、割安株買いが増勢となった。テクニカル的にも、1500円台で日足の2点底(ダブルボトム)を形成し、5日移動平均線が25日移動平均線を下から上に抜くミニ・ゴールデンクロス(GC)を示現し、さらに25日線が、75日移動平均線を上抜くゴールデンクロス目前と上昇トレンド転換を示唆したことも、買い手掛かり材料となっている。

■2019年12月に稼働を開始し2年以内に売上高100億円目標

 タイ第2工場は、今年10月1日に米国の対中制裁関税第4弾が発動され、中国も報復関税発動と応酬が続き米中貿易協議が長期化することが懸念され、日本企業のなかで中国からアセアン地域へ生産移管を図る企業が増えており、既存企業の増産要望に応え、さらに新規顧客の受注を獲得するために決定された。同国チョンブリー県アマタナコーン工業団地内に約5億円を投資して建設するもので、2019年12月に稼働開始を予定、生産品目は、複合機、プリンタ用の電装基板とし操業開始後2年以内に売上高100億円を目指す。同社は現在、国内を含めて10カ国、16カ所のEMS工場をワールドワイドに展開しているが、新工場は、有力工場として同社の成長戦略を加速させることになる。

 一方、同社の今期1Q業績は、前年同期比97.4%増収、24.2%営業増益、21.8%経常増益、17.6%純益増益と増収増益転換した。子会社化した富士通エレクトロニクスの寄与やEMS事業の空調機器、医療向けの順調推移などで売り上げが、前年同期に比べてほぼ倍増となり、今3月期通期予想業績に対する利益進捗率は、29.2%となり目安の25%をオーバーした。

 今2020年3月期通期業績は、期初予想通りに売り上げ4300億円(前期比46.9%増)、営業利益70億円(同7.5%減)、経常利益70億円(同10.9%減)、純利益50億円(同37.6%減)と見込んでいる。米中貿易摩擦激化などの外部環境の不透明化を考慮して保守的に予想しているものである。そのなかでも、今回のタイ第2工場建設に先立って成長戦略を推進、今年4月にはドキドキグルーヴワークス(東京都新宿区)、LiveSmart(東京都港区)へ各出資し、今年7月にはパイオニアの製造子会社の十和田パイオニア(青森県十和田市)のグループ会社化などのM&Aを積極継続しており、今期1Qの好決算と合わせて業績上ぶれの可能性も高まってくる。

■ミニGCを示現してGC目前と上昇トレンド転換し年初来高値奪回を目指す

 株価は、米国のトランプ大統領が、8月1日に対中制裁関税第4弾発動を表明し世界同時株安が再燃したことで年初来安値1450円に突っ込み、1Q好決算開示とともに売られ過ぎとして1721円までリバウンドし、再度、下値を探ったが、1500円台で下げ渋り、日足チャートではダブルボトムを形成し、タイ第2工場建設でこのネックラインを上抜き直近高値に肉薄した。テクニカル的にもミニGCを示現ししたあとGC目前と上昇トレンド転換を示唆している。前日10日の高値引けで8月9日につけた戻り高値1721円を上回って、ここからは上値にフシらしいフシがなくなっており、PER9倍台、PBR0.62倍、年間配当利回りは3.42%の割安修正からも年初来高値2252円奪回に拍車を掛けよう。(本紙編集長・浅妻昭治)

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