【アナリスト水田雅展の銘柄分析】キャリアリンクは目先的な売り一巡、16年2月期業績は増額含みで見直し買いのタイミング

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 総合人材サービス事業のキャリアリンク<6070>(東1)は16年2月期も増収増益基調だ。株価は利益伸び率が鈍化したことから、戻り高値圏から急反落したが、16年2月期業績見通しは増額含みであり、目先的な売りが一巡して見直し買いのタイミングだろう。中期成長力を評価して2月高値2048円を目指す展開が期待される。

 官公庁・地方公共団体・民間企業向けのBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)関連事業を主力として、企業等のコンタクトセンター(コールセンター)向けCRM(カスターマー・リレーションシップ・マネジメント)関連事業、一般事務職分野の一般事務事業、さらに製造・物流分野の製造技術系事業など、人材派遣・紹介や業務請負などの総合人材サービス事業を展開している。

 顧客の業務効率化や品質向上などを実現する企画提案型の人材派遣および業務請負が特徴である。特にBPO関連事業では、企画提案による顧客企業の業務効率化や業務処理の品質向上を強みとして、それらを実現するために「単なるスタッフ派遣」ではなく、経験豊富な社員をリーダーとして編成したチームを派遣する「チーム派遣」を特徴としている。顧客にとっては、自社による導入時の研修や導入後の業務指導などに係る負担が軽減され、発注から短期間で大量業務処理の稼働開始が可能になるというメリットもある。

 BPO事業者からの受注を含めて1000名を超える大型案件でも、稼働開始まで短期間で対応できるノウハウを有していることも強みだ。スタッフに対してはキャリアパス制度などを活用して能力、満足度、出勤率、稼働率を高める仕組みを構築しており、こうした仕組みもチーム派遣や大型案件に対する短期間での対応を支えている。

 中期的な経営基盤強化に向けて、BPO関連事業における官公庁・地方公共団体関連の大型特需案件や成長市場である民間BPO案件の受注拡大、高品質で顧客満足度の高いBPOサービス提供の強化、M&Aも活用したBPO関連事業の領域拡大、CRM関連事業や製造技術系事業における高利益案件をメインターゲットとした受注活動の強化、そして業容拡大に向けた人材採用・育成の強化を推進している。

 4月14日に発表した前期(15年2月期)業績(非連結)は売上高が前々期比20.3%増の139億48百万円、営業利益が同2.8倍の8億31百万円、経常利益が同2.9倍の8億22百万円、そして純利益が同3.0倍の4億87百万円だった。ROEは24.5%で同15.1ポイント上昇した。配当予想は同2円増配の年間16円(期末一括=普通配当14円+創業20年記念配当2円)とした。

 主力のBPO関連事業の受注増加と、BPO大型案件における業務処理効率化の進展が牽引し、9月22日の2回目の増額修正値を上回る大幅増益だった。

 セグメント別の売上高を見ると、BPO関連事業は民間BPO大型案件の業務量拡大や新規受注の増加などで前々期比35.9%増の84億10百万円、CRM関連事業はテレマーケティング事業者への派遣需要がやや低調で同10.0%減の30億40百万円、一般事務事業は金融機関向けなど新規案件の獲得で同2.1%増の9億50百万円、製造技術系事業は食肉加工メーカー、機械部品メーカー、製薬メーカー等からの受注拡大で同40.7%増の15億46百万円となった。

 なお四半期別推移を見ると売上高は第1四半期(3月~5月)28億78百万円、第2四半期(6月~8月)36億08百万円、第3四半期(9月~11月)38億41百万円、第4四半期(12月~2月)36億21百万円、営業利益は第1四半期1億15百万円、第2四半期2億94百万円、第3四半期2億71百万円、第4四半期1億51百万円だった。

 今期(16年2月期)の業績(非連結)見通し(4月14日公表)は、売上高が前期比17.4%増の163億68百万円、営業利益が同14.4%増の9億51百万円、経常利益が同14.2%増の9億38百万円、そして純利益が同15.4%増の5億62百万円、配当予想は同2円増配の年間18円(期末一括)としている。

 BPO関連事業の拡大に向けて、BPOベンダー等との関係強化を推進するための営業推進部、人材育成を強化するための研修センター、人材採用・開発力を強化するための人材開発部を設置するなど新たな体制を構築した。また、派遣スタッフのキャリアパス制度の充実による社員登用増、無期雇用社員の採用増、高スキル・高スペック人材の確保などで「チーム派遣」を一段と強化する方針だ。

 セグメント別売上の計画はBPO関連事業が同14.9%増収、CRM関連事業が同26.7%増収、一般事務事業が同6.1%増収、製造技術系事業が同19.1%増収としている。マイナンバー(社会保障・税番号)制度関連については地方自治体・民間企業向けで若干程度の織り込みにとどめているようだ。

 業務効率化に向けた企画提案力、1000名以上の大型案件でも稼働開始まで短期間で対応できるノウハウ、官公庁向け大型BPO案件の受注実績などから、マイナンバー制度関連でも大型BPO案件を受注することが期待される。さらに業務効率化の進展も期待される。16年2月期業績の会社見通しは保守的としており増額が濃厚だろう。

 中期経営計画(16年2月期~18年2月期)では、目標値に18年2月期売上高250億90百万円、営業利益15億20百万円、経常利益15億10百万円、純利益9億40百万円を掲げている。BPO関連事業を成長エンジンとした成長戦略を加速させる方針で、BPO関連事業の売上規模拡大、企画提案力・運用力の強化、M&Aによる領域拡大を重点戦略としている。

 セグメント別売上高の計画は、BPO関連事業が高品質運用やIT分野を含めた事業領域拡大などで15年2月期比2.0倍の171億円、CRM関連事業が高利益案件をメインターゲットとして同42.0%増の43億円、製造技術系事業が製造業や流通業の高利益案件への戦略展開などで同64.2%増の25億円、一般事務事業が無期雇用・長期雇用を軸に高利益ビジネスモデルへの変革を目指して同11.2%増の10億円としている。

 中期的に事業環境は良好だ。官公庁・地方公共団体関連では財政健全化に向けた費用抑制の流れ、サービス向上や業務効率化のニーズ増大も背景として、官から民間への業務委託・移管の増加が予想されている。民間企業関連ではコア事業への経営資源集中や固定費の変動費化の流れも背景として、業務のアウトソーシング化が一段と増加すると予想されている。中期的に収益拡大基調だろう。

 なお3月13日に公表した従業員に対するインセンティブプランとしての株式給付信託(J-ESOP)導入について、4月21日に詳細を発表した。信託設定日は5月13日で、本信託における当初信託金額30百万円、取得期間5月14日~5月29日とした。

 株主優待制度については毎年8月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対して実施している。100株以上300株未満保有株主に対してオリジナルQUOカード1000円相当、300株以上保有株主に対してオリジナルQUOカード2000円相当を贈呈する。現金配当と株主優待を合算した総合利回りの向上を目指している。

 株価の動きを見ると、4月14日の戻り高値1850円から急反落して20日の1535円まで調整した。16年2月期の利益伸び率が鈍化したことから目先的な売りが優勢になったようだ。ただし22日は終値で1699円まで戻している。目先的な売りが一巡したようだ。

 4月22日の終値1699円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS89円63銭で算出)は19倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間18円で算出)は1.1%近辺、そして前期実績PBR(前期実績のBPS349円63銭で算出)は4.9倍近辺である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線を割り込んだが、26週移動平均線が接近してサポートラインとなりそうだ。16年2月期業績見通しは増額含みであり、中期成長力を評価して2月の上場来高値2048円を目指す展開が期待される。

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