インテージホールディングスの第2四半期業績は、増収だがマーケティング支援(消費財・サービス)での先行投資、CRО事業等の利益率低下で減益

■ビジネスインテリジェンス事業は大幅増収増益

インテージホールディングス<4326>(東1)の第2四半期業績は、増収となったもののマーケティング支援(消費財・サービス)での先行投資、CRО事業等の利益率低下で減益となった。

 20年6月期第2四半期連結業績は、売上高251億48百万円(前年同期比9.0%増)、営業利益11億90百万円(同1.8%減)、経常利益11億01百万円(同9.5%減)、純利益7億13百万円(同11.8%減)であった。

 セグメント別の業績は、マーケティング支援(消費財・サービス)は売上高154億32百万円(同3.4%増)、営業利益3億69百万円(同26.9%減)となった。減益となった要因は、SRI+のリニューアル費用が嵩んだことに加え、海外事業(タイ・香港等)の利益率が低下したことが挙げられる。

 マーケティング支援(ヘルスケア)は、売上高62億72百万円(同21.6%増)、営業利益4億51百万円(同18.6%減)であった。減益となったのは、CRО事業の製造販売後調査については想定以上にプロジェクトの単価が下落したことに加え、協和企画の売上が減少していることが要因。

 ビジネスインテリジェンスは売上高34億43百万円(同14.5%増)、営業利益3億69百万円(同144.0%増)と2ケタ増収大幅増益。大幅増益となったのは、既存事業が堅調に推移したことおよび昨年10月に子会社化したエヌ・エス・ケイが貢献したことによるもの。

 第2四半期は、増収となったものの、マーケティング支援での減益が響き、全体でも減益となった。

 通期連結業績予想においては、当初予想を据え置いている。

 2019年度の経営計数目標は、連結営業利益率8%水準および売上高R&D経費比率2%水準を継続している。投資は、SRIリニューアル関連を中心に実施する予定。

 戦略ポイントとして、成長ドライバー創出に向けた研究開発の多産継続と事業の展開、データ価値向上を果たすビジネスアクションの確実な遂行と見極め、真の働き方改革へ向けた意識改革の3点を挙げている。

 具体的な取組として、マーケティング支援(消費財・サービス)の成長戦略では、SRI+の確実な立ち上げとフェーズ2の事例創出と流通領域事業の展望に注力する。

 現行のSRIをリニューアルしたSRI+の可能性としては、市場反映性、データ精度の向上により、既存顧客の市場監査領域を盤石にするとともに、メーカーと小売り・流通をつなぐ共通言語としての役割を果たしていくことが期待される。また、フェーズ2では、様々なビッグデータとの統合による新サービスの開発を見込んでいる。

 SRI+の特長は、サンプリングだけでなく一部チェーンの全店データを含むビッグデータであり、量が膨大であることと、複数の手法を組み合わせたユニークな推計ロジックを最先端の技術を用いて実現する。更に、現行のSRIは月次、週次、日次別のデータベースであるが、SRI+では日次ベースに一本化し、データの整合性と速報性を実現する点が挙げられる。

 今後のSRI+のリニューアルのスケジュールは、メーカーのデファクトスタンダードである現行のSRIのクオリティをSRI+でも維持することを最優先し、20年6月にSRIとSRI+の平行提供を開始し、21年の1月よりSRIのデータを順次SRIプラスに切り替え、6月でSRIの更新を終了する。一方、SRI+を1月からリリースすると共に、20年1月から本リリースするECデータサービスについては、21年1月にSRI+に統合される予定。また、順次対象品目の拡大も図る。

 次に、広告主のためのコミュニケーション支援事業の育成については、同社がメディアゲージダイナミックパネルを開発したことで、スマートテレビの機器のログを匿名化・統計化された人ベースの視聴ログに推計し、分解できる。サンプルサイズは約50万人で、実数分析に使えるレベルである。つまり、テレビの効果を可視化できるデータを得ることが出来ることになる。現状では、エリア別での分析ができるという点でオンリーワンのデータである。テレビの視聴と行動変容により、テレビCMの効果を測定できることから、出稿枠の高度化、CMや動画などクリエイティブの差し替え判断に利用できる。同社では将来的に、ただこのデータを提供するだけではなく、SRI+と組み合わせることで、さらに詳細なサービスが提供できると考えている。

 旧来型カスタムリサーチに依拠しない事業領域の開拓については、2016年頃からアジアモバイル構想を掲げて、パネル数の増加やアプリの開発を進めてきた。この動きを加速するために、パートナーとして事業を進めてきたマーケティングアプリケーションの国際事業dataSpring事業を切り出して20年2月に新会社を設立する。これによりパネル数は170万となる。アジアでもPCではなく、モバイルシフトというのが急速に進んでいる。そのため例えば、現地の通信キャリア、或いはそれ以外のデータホルダーと連携することによって、一気にパネル数を拡大するといった構想が考えられる。それだけでなく、データ連携している企業もウインになるような関係を構築していく。リサーチパネルというだけでなく、アジア、東南アジアにおけるアジアのビジネス拡大を目指す。

 マーケティング支援(ヘルスケア)の成長戦略としては、業界の環境変化に対応したアセット・サービスの統合が大きな狙いである。薬や治療の最新情報を医療の従事者への提供の重要性が非常に高まっているのが現状である。その狙いに対応するための一つが18年に協和企画のM&A実施であった。同社のメイン事業であるプロモーション事業はダウントレンドではあるものの、市場シェアを上げる、市場を創造する、市場を再生する、市場を開拓するという新しい領域にチャレンジすることで活動を強化することにより挽回を図り、ダウントレンドから脱して、成長軌道に乗せていく。まず、市場シェアを上げることで、競合から扱いを奪取する。そのためには、顧客の窓口を統合する。ヘルスケアのリサーチにおいて大きなシェアを持つインテージヘルスケアと、協和企画とが包括的に事業を進めるをことで、協和企画が提供する全てのサービスプロセスとリサーチ(データ)を連動させ、協和企画は基幹事業のビジネスチャンスの拡大を目指し、インテージヘルスケアはより提案型のリサーチビジネスを拡大していく。次に、プロモーションからエデュケーションへのシフトの加速に対応することにより新たな医療市場を創造する。今後は益々、医療従事者の視点、医療消費者の視点が重要になってくる。そうすると、まさにリサーチの機能が果たす役割は大きくなってくる。アセットを融合したことで、その役割を果たすことが出来る。更に、市場の再生、開拓については、デジタルマーケティングのやり方を応用し、インテージのパネルデータも活用しながら、拡大基調に向けたアクションをとる。

 ビジネスインテリジェンスの成長戦略は、AIワンストプソリューションをコアにした新規領域の拡張を行う。AIやデータ活用を軸とした新規ビジネスは、まだ規模は小さいが、売上は着実に増加。デジタル化の大きな流れで、最終的にはAIを組み込んだデータ活用支援システムが重要になってくる。従来からインテージテクノスフィアは、外部向けや事業会社インテージのリサーチに関するデータのハンドリングを行うとともに、AIを使用した事業支援を行ってきた。また、SIerとしても外部向けの事業を展開しているため、単にモデルを作るだけでなく、システム化もできることから、顧客からも評価を得て伸びてきている。様々な領域の顧客からの業務を受託しているが、今後は特に自動車系、公共インフラ系への受注に注力し、データ活用と仕組化といったビジネスで売上拡大を狙う。また、高い技術力を持つ外部パートナーとの連携も活発化させていく。直近では、画像処理検査用LED照明のリーディングカンパニーで、「AIラボ」を保有しているシーシーエスと業務提携したことで、製造業向け外観検査へのAIの活用をより容易に行うことが出来るようになり、コンサルティングからアルゴリズム開発・実装まで、ワンストップでの顧客のAI活用を全面的にサポートする。

 グループ全体のトピックスとしては、INTAGE Open Innovation Fundの投資状況が紹介された。2019年10月時点で21社の企業に対し、約23億60百万円を投資している。

 現行の事業環境の認識について、代表取締役社長 石塚純晃氏は、「デジタル化からデジタルトランスフォーメーションということで、我々の事業戦略に関わるすべてのお客様は色々な試行錯誤を繰り返されています。その試行錯誤について、色々な相談が期待を込めて、当社に寄せられています。BtoB企業である我々は、そういうお客様の変化をきちんとキャッチアップして、データの収集と共にデータ活用についてのリサーチや、やり方というものをお客様と共に切り開いていくということが、私たちにとって不可欠なものと捉えています。ものすごいスピードで変化していますので、手綱を緩めることなく挑戦し続けてまいります。当社グループはまさにその途上にあり、12次中期経営計画のテーマは、Take the initiative(データ活用の領域で先手を取れ)を掲げています。大きな成長を目指しながら、努力を継続しているところです。」と語った。

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