生化学工業は戻り試す、20年3月期大幅営業・経常増益予想

 生化学工業<4548>(東1)は関節機能改善剤アルツが主力の医薬品メーカーである。20年3月期は上方修正して大幅営業・経常増益予想(純利益は特別損失計上に伴い下方修正して赤字予想)としている。株価は8月の年初来安値から反発して下値を切り上げている。戻りを試す展開を期待したい。

■関節機能改善剤アルツなど糖質科学分野が主力の医薬品メーカー

 糖質科学分野が主力の医薬品メーカーで、国内医薬品(関節機能改善剤アルツ、白内障手術補助剤オペガン、内視鏡用粘膜下注入材ムコアップ)、海外医薬品(米国向け単回投与関節機能改善剤Gel-One、米国向け3回投与関節機能改善剤VISCO-3、米国向け5回投与関節機能改善剤SUPARTZ-FX、中国向けアルツ)、医薬品原体(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸)、LAL事業(エンドトキシン測定用試薬関連)を展開している。

 19年3月期の事業別売上構成比は、医薬品事業が77%(国内医薬品50%、海外医薬品23%、医薬品原体が4%)で、LAL事業が23%だった。

■新薬開発は糖質科学分野に焦点

 研究開発は糖質科学分野(糖鎖や複合糖質を研究する科学分野)に焦点を絞り、開発パイプラインには腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603、変形性膝関節症改善剤SI-613、腱・靱帯付着部症を適応症とするSI-613-ETP、ドライアイ治療剤SI-614、癒着防止材SI-449、間質性膀胱炎を適応症とするSI-722がある。

 SI-6603は日本では18年3月製造販売承認を取得し、日本における独占的販売契約を締結している科研製薬<4521>が18年8月販売開始(腰椎椎間板ヘルニア治療剤ヘルニコア)した。また16年8月にはスイスのフェリング社とSI-6603の日本を除く全世界におけるライセンス契約を締結している。フェリング社から最大90百万米ドルのマイルストーン型ロイヤルティを受領する。

 なお米国で実施したSI-6603第3相臨床試験について、17年11月に下肢痛軽減において統計学的に有意な改善効果が認められなかったと発表したが、18年2月第3相臨床の追加試験を開始した。22年11月経過観察終了を目指している。

 SI-613は日本で第3相臨床試験が完了し、20年3月期中の承認申請を目指している。米国では第2相臨床試験結果の解析が終了し、第3相臨床試験の検討と並行して提携先の選定を進めている。また17年9月には日本でSI-613-ETPの後期第2相臨床試験を開始した。

 SI-613は17年9月に小野薬品工業<4528>と日本における共同開発・販売提携に関する契約を締結している。小野薬品工業から契約締結一時金として20億円、最大で総額100億円のマイルストーン型ロイヤルティを受領する。19年2月には、小野薬品工業と日本で共同開発中の変形性膝関節症治療剤ONO-5704/SI-613の第3相臨床試験において、変形性膝関節症を対象とした検証的試験で良好な結果を得たと発表した。

 SI-614は米国・欧州で15年1月第2・3相試験が終了し、次相試験について検討中である。SI-449は18年5月、日本でパイロット試験を開始した。

 19年11月には、間質性膀胱炎を適応症とするSI-722の米国における第1・2相臨床試験を開始した。

■20年3月期大幅営業・経常増益予想

 20年3月期の連結業績予想(11月8日に売上高、営業利益、経常利益を上方修正、純利益を下方修正)は、売上高が19年3月期比0.8%増の286億円、営業利益が38.1%増の13億50百万円、経常利益が31.2%増の37億50百万円、純利益が110億円の赤字(19年3月期は22億44百万円の黒字)としている。配当予想は19年3月期と同額の26円(第2四半期末13円、期末13円)である。

 売上面では米国における単回投与関節機能改善剤Gel-Oneの増加を見込んでいる。コスト面では研究開発費が増加するが、営業利益は減損処理に伴う減価償却費の減少、経常利益は受取ロイヤリティーの増加が寄与して大幅営業・経常増益予想である。純利益は第2四半期の特別損失に固定資産減損損失123億04百万円を計上したため赤字予想としている。なお想定為替レートは1米ドル=105円である。

 なお第2四半期累計は、売上高が前年同期比9.1%増の155億55百万円、営業利益が2.2倍の21億50百万円、経常利益が0.2%減の24億71百万円、純利益が107億66百万円の赤字(前年同期は19億12百万円の黒字)だった。

 売上面では、医薬品事業が11.9%増収(国内医薬品4.1%増収、海外医薬品29.5%増収、医薬品原体0.0%減収)、LAL事業が0.1%増収と堅調に推移した。利益面では、増産効果などで売上原価率が改善し、研究開発費の減少も寄与した。営業外損益では受取ロイヤリティーの計上がなく、投資有価証券売却益が減少した。また為替差損益が悪化した。特別損失には固定資産減損損失123億04百万円を計上した。

■22年3月期経常利益45億円目標

 19年11月策定の新中期経営計画の目標には、22年3月期売上高283億円、経常利益45億円、SKK EBITDA(営業利益に減価償却費、受取ロイヤリティーを加えた利益指標)50億円、海外売上高比率50.0%を掲げている。想定為替レートは1米ドル=105円である。利益配分は配当性向50%を目指す。

 重点施策としては、新たな収益の柱となる新薬開発の加速、製品の市場拡大による収益基盤強化、生産性向上のための改革を推進する。

■株価は戻り試す

 株価は8月の年初来安値から反発して下値を切り上げている。戻りを試す展開を期待したい。11月21日の終値は1251円、今期予想配当利回り(会社予想26円で算出)は約2.1%、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS1294円88銭で算出)は約1.0倍、時価総額は約711億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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