メディカル・データ・ビジョンは売られ過ぎ感、19年12月期大幅増益予想

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 メディカル・データ・ビジョン<3902>(東1)は、民間最大級の大規模診療データベースを活用して医療分野ビッグデータ関連ビジネスを展開している。19年12月期大幅増益予想である。CADA-BOXや新規事業の進捗遅れが課題だが、20年12月期も収益拡大を期待したい。株価は水準を切り下げて1月の年初来安値に接近しているが、売られ過ぎ感を強めている。調整一巡して反発を期待したい。

■医療分野ビッグデータ関連ビジネス

 医療分野のビッグデータ関連ビジネスとして、医療機関向けに医療情報システムを開発・販売するデータネットワークサービス、および製薬会社向けに各種データ分析ツール・サービスを販売するデータ利活用サービスを展開している。18年12月期の事業別売上構成比はデータネットワークサービスが41%、データ利活用サービスが59%だった。データ利活用サービスの構成比が上昇基調である。

 データネットワークサービスで医療機関向けに医療情報システムを販売するとともに、2次利用許諾を得た患者の医療・健康関連情報を集積する。そして集積した各種情報を分析し、データ利活用サービスとして製薬会社向けに提供するビジネスモデルだ。19年11月末の大規模診療データベース実患者数は18年12月末比360万人増加の2953万人となった。

 データネットワークサービスは営業の主軸をDPC分析のEVEから、病院向け経営支援のMedical Codeにシフトするとともに、病院向けデジタルソリューションのCADA-BOXの導入を推進している。患者自身が診療情報の一部を保管・閲覧できるWEBサービスのカルテコと、患者が自由に支払条件を設定できる医療費後払いサービスのCADA決済を、電子カルテと連動させて活用するサービスである。データ利活用サービスはオーダーメード調査・分析サービスのアドホックを主力としている。

 18年12月末時点の導入数はEVEが801病院、Medical Codeが274病院、CADA-BOXが7病院(稼働5病院、準備中2病院)だった。

 収益は医療機関からのシステム利用料・メンテナンス費用、製薬会社からのサービス対価(システム利用料含む)である。またデータ利活用サービスにおいて下期偏重の傾向がある。

■事業領域拡大

 中期成長戦略として、2次医療圏344病院へのCADA-BOX導入、データ基盤のさらなる拡大、データ利活用ビジネスの拡大、M&Aを含めた他社との協業を推進している。

 事業領域拡大に向けて、17年1月医師向けサービスのDoctorbookを子会社化、17年6月SMO業務のコスメックス(現MDVトライアル)を子会社化、17年11月テクマトリックス<3762>と業務提携、18年1月国内最大級の人間ドック・健診予約ポータルサイト「MRSO」を運営するマーソ社と資本業務提携した。

 19年1月にはメディパルホールディングス<7459>と資本業務提携した。医療情報ポータルサイト構築で協業し、メディパルホールディングスがDoctorbookの株式23.0%を取得する。19年10月にはレセプトおよび検査領域に関わる医療系システム開発のメディカルドメイン(MDI)を子会社化した。

 なおMDVコンシューマ・ヘルスケアのOTC医薬品・H&BC製品製造販売事業は、17年7月販売開始したスキンケアシリーズに大幅な販売計画の遅れを生じたため19年4月撤退した。そしてMDVコンシューマ・ヘルスケアを19年12月吸収合併予定である。

■未病領域データ事業

 18年9月には未病領域データ事業を発表している。従来のDPCデータから、次のフェーズであるオプトインリアルタイムデータ(個人から同意を得てリアルタイムに集積する診療情報、健診・検診情報)に軸足を移行しながら、DPCデータとオプトインリアルタイムデータを相互に集積した「さくらデータバンク」として成長を推進する。

 乳がん領域の健診・検診データ集積からスタートする。アジアNO.1の女性医療を目指す相良病院と提携し、健診施設や検診バスで受診する際に個人から二次利用の同意を得て健診・検診データを集積する。なお健診・検診データ利活用は、第1弾として子会社Doctorbookの「SCAPO」から開始する。また子会社MDVチェックアップが健診・検診センター向け「けんしんBOX」導入を促進する。

■19年12月期大幅増益予想

 19年12月期連結業績予想(11月11日に売上高を下方、利益を上方修正)は売上高が18年12月期比7.3%増の38億40百万円、営業利益が84.9%増の6億50百万円、経常利益が84.7%増の6億50百万円、純利益が5.8倍の4億円としている。

 第3四半期累計は、売上高が前年同期比14.7%増の27億57百万円、営業利益が4億61百万円の黒字(前年同期は18百万円の赤字)、経常利益が4億62百万円の黒字(同18百万円の赤字)、純利益が3億11百万円の黒字(同1億42百万円の赤字)だった。アドホック調査サービスが伸長して黒字化した。

 データネットワークサービスの売上高は1.6%増の11億44百万円だった。メンテナンスが堅調だった。CADA-BOXの累計導入数は8病院(受注ベースでは9病院・1団体)となったが、通期の新規受注・売上目標(受注22病院、売上13病院)の達成は厳しい状況としている。Doctorbookは既存の歯科領域が堅調だが、新たに開始した医科領域の進捗が遅れている。

 データ利活用サービスの売上高は26.3%増の16億12百万円だった。主力のアドホック調査サービスが件数増加で30.5%増収と大幅伸長した。データ活用治験事業のMDVトライアルは売上が進捗遅れだが費用減少で黒字化した。

 通期は、CADA-BOXの目標受注件数の未達、重点子会社(DoctorbookおよびMDVトライアル)の新規事業進捗遅れで、売上高が計画を下回る見込みだが、データ利活用サービスのアドホック調査サービスが牽引して増収、生産性向上による販管費の抑制も寄与して大幅増益予想である。CADA-BOXや新規事業の進捗遅れが課題だが、20年12月期も収益拡大を期待したい。

■株主優待制度は毎年12月末の株主対象

 株主優待制度は毎年12月31日現在の100株(1単元)以上保有株主に対してクオカード1000円分を贈呈する。

■株価は売られ過ぎ感

 株価は水準を切り下げて1月の年初来安値に接近しているが、売られ過ぎ感を強めている。調整一巡して反発を期待したい。12月9日の終値は910円、今期予想連結PER(会社予想連結EPS9円99銭で算出)は約91倍、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS81円91銭で算出)は約11倍、時価総額は約364億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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