【小倉正男の経済コラム】ワンダーコーポレーション:次世代型ビジネスへの取り組み

■百聞は一見にしかず

 池袋サンシャインシティ噴水広場という「名所」があるのだが、初めて行ってみた。
 サンシャインシティには、昔(大昔か)はセゾングループの堤清二代表への取材、最近では劇場での観劇(2・5次元ミュージカルなど)で何度も伺っている。
 
 「噴水広場」というのは知らなかったのだが、iPop(アイドル・ポップス)などのライブ・エンターテインメントの「名所」になっているということだ。アイドルたちにとっては「噴水広場」でのライブは“登竜門”を意味する模様である。
 
 この11月14日にRIZAPグループの20年3月期第2四半期決算説明会があったのだが、瀬戸健社長は傘下のワンダーコーポレーションについて、「ライブ・エンターテインメントの会社に変貌している」と発言した。
 
 そのワンダーコーポレーションが「噴水広場」でiPopのライブ・イベントを行っているということで取材(実体は見学)させてもらった。
 
 日曜日の夜だし、寒いし、ということでサボる理由は少なからずあったが、百聞は一見にしかず――、である。(どこかの編集部のように)決算短信だけ見て判断しているのではなく、現場に行くのが基本。

■不採算店の閉店で原価・販管費を改善

 ワンダーコーポレーションは、19年3月期に営業損益4・5億円の黒字を計上しているのだが、純損益では51億円強の赤字を出している。「事業構造改善費用」として48億円強の特損発生が巨額赤字の中身である。不採算店舗の閉店が22店(うちSHINSEIDOは14店閉店)規模で進められた。
 営業損益ベースでは、GOO(ゲームソフト、新刊本販売など)5・2億円の黒字、REX(リユース販売など)2・5億円の黒字、TSUTAYA(映像・音楽ソフトレンタルなど)0・2億円の赤字、SHINSEIDO(CD販売など)3億円の赤字が内訳である。SHINSEIDOがいちばん大きい赤字を出していたわけである。
 
 ワンダーコーポレーションのこの20年3月期第2四半期は営業損益4・6億円の黒字(前年同期0・6億円の赤字)。セグメント別では、GOO1・7億円の黒字(前年同期増減額6300万円増)、REX1・4億円の黒字(同8900万円増)、TSUTAYA7400万円の黒字(同6500万円増)、SHINSEIDO7800万円の黒字(同1億6000万円増)と改善が行われている。

 この第2四半期も不採算店の閉店は継続されている。前年同期比でGOO10店、TSUTAYA9店、SHINSEIDO19店の閉店がなされている。これにより人件費、店舗賃貸費用などコスト面の改善・低減が進行しているのは間違いない。

 GOOではトレーディングカード、REXではEコマースを強化する取り組みが進められている。TSUTAYAでは映像・音楽レンタルをスマホ向けのサブスクリプションに切り替える動きを採っている。これらの「事業構造改善」努力により原価、販管費などコストは改善・縮小されている。

■SHINSEIDOイベント売り上げ32%増

 だが、「事業構造改善」の顕著な変化は、SHINSEIDOのイベント売り上げ32%増(前期比)だ。
 瀬戸健社長が語っている「ライブ・エンターテインメントの会社に変貌している」というのがSHINSEIDOのイベント事業である。
 
 「噴水広場」でのライブ・エンターテインメントでは、ミニ・コンサート後にファンとの握手会、撮影会などが行われている。同時にCDなどの即売会も行われている。迫力あるライブ・エンターテインメント=コト体験の直後だけにCDが見ている間に売れていく。
 
 SHINSEIDOは、20年3月期を起点にこうしたライブ・イベントをショッピングモールや自社店舗で頻繁に開催している。ワンダーコーポレーションの内藤雅義社長はこの試みについて「次世代型SHINSEIDOに取り組んでいる」と発言している。
 
 いまやアパレル、化粧品などあらゆる業界でリアル店舗の販売が厳しい状態になっている。百貨店などが典型だが、閉店が相次いでいる。Eコマースは逆に増加している。それはSHINSEIDOでも同様だった。このままでは生き残れない。生き残るためにライブ・エンターテインメントに活路を求めたことになる。
 
 店舗でお客を待っていても売り上げは伸びないどころか減少するばかりだ。しかし、ライブ・エンターテインメントの「感動」があれば売り上げは違ってくる。SHINSEIDOの挑戦は注目される試みといえそうだ。
 師走の寒い日曜日の夜だったが、元気なiPOPSのライブ・エンターテインメントで売り上げがつくられる様相を見て納得させられたものである。

(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■グローバルモデルに匹敵する日本語対応の高性能生成AIを4月から順次提供  ELYZAとKDDI<…
  2. ■優勝への軌跡と名将の言葉  学研ホールディングス<9470>(東証プライム)は3月14日、阪神タ…
  3. ■新たな映画プロジェクトを発表  任天堂は3月10日、イルミネーション(本社:米国カリフォルニア州…
2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■海運株と防衛関連株、原油価格の動向に注目集まる  地政学リスクによる市場の不安定さが増す中、安全…
  2. ■中東緊張と市場動向:投資家の選択は?  「遠い戦争は買い」とするのが、投資セオリーとされてきた。…
  3. ■節約志向が市場を動かす?  日本の消費者は、節約志向と低価格志向を持続しており、これが市場に影響…
  4. ■投資家の心理を揺さぶる相場の波  日米の高速エレベーター相場は、日替わりで上り下りと忙しい。とく…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る