【アナリスト水田雅展の銘柄分析】イーブックイニシアティブジャパンは調整一巡、電子書籍事業の成長力を評価して出直り

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 電子書籍配信のイーブックイニシアティブジャパン<3658>(東1)の株価は調整が一巡したようだ。クックパッド<2193>との資本業務提携を好感して9日に1419円まで急伸する場面があった。その後は人気一巡の形だが1050円~1100円近辺で下げ渋り、3月中旬~4月上旬の安値圏まで下押す動きは見られない。電子書籍事業の成長力を評価して出直り展開が期待される。

 00年から電子書籍書店「eBookJapan」を運営し、パソコン・モバイル向けの電子書籍配信サービスを展開している。漫画コミックの世界最大級の品揃えに強みを持ち、総合電子書店NO.1確立に向けて総合図書を中心に取扱冊数を大幅に増加させている。

 15年1月期末のジャンル別取扱冊数は男性マンガが前期比24.6%増の5万9595冊、女性マンガが同34.5%増の5万7702冊、総合図書が同2.6倍の21万2152冊、その他が同62.5%増の1万4396冊、合計が同91.2%増の34万3845冊となった。登録会員数は14年11月に100万人を突破し、15年1月期末時点では同15万人増加の103万人となった。

 中期目標値として5年後の売上高300億円、売上高経常利益率10%、日本発作品のグローバル電子書籍売上に占める当社電子書籍シェア7%を掲げている。中期成長に向けた重点戦略としてブランド力向上、品揃え充実、基盤システム刷新による使い易さ向上、販促強化などで新規会員獲得に取り組むとともに、M&Aやアライアンスも積極活用して、クロスメディア展開(事業領域拡大)やグローバル展開(取扱言語拡大)で業容を拡大する方針だ。

 14年6月にはアニメキャラクターを活用した企業向けタイアッププロモーションなどを展開するトキオ・ゲッツを子会社化、14年10月にはスマートフォンアプリを中心とした知育コンテンツ企画・開発のフォーリーを子会社化した。

 15年2月には、中国最大級のソーシャルメディア「微博(weibo.com)」の日本にける総括代理店で、日本企業に対する中華圏向けプロモーション支援事業を展開するFind Japanを子会社化した。さらに当社、Find Japan、および中国・上海世紀出版集団グループの出版会社である上海故事会文化伝媒有限公司の3社共同出資で上海に合弁会社を設立した。中国においてコミックを中心とした電子書籍配信ビジネスを開始する。

 4月2日には、自社ブランドのオンライン書店「booxstore」「BOOKFAN」運営や、提携先向けBtoBオンライン書店運営を手掛けるブークスを子会社化(効力発生日5月8日予定)すると発表した。オンライン書店「boox」への電子書籍提供事業を拡大するとともに、両社で新たなBtoB展開(紙と電子のハイブリッド書店)の共同開発を推進する方針だ。

 4月7日にはクックパッド<2193>との資本業務提携を発表した。クックパッドに対して第三者割当増資を実施(払込期日4月23日)して、クックパッドが第1位株主(保有比率10.39%)となる。クックパッドの有するマーケティング・ノウハウの当社への提供など、業務提携の詳細については今後両社間で協議のうえ決定するとしている。

 また4月27日にはクックパッドの子会社で漫画家・作家向け制作・配信システム構築を手がけるマグネットの第三者割当増資を引き受けて子会社化(保有比率50.98%)すると発表した。

 なお15年1月期から事業区分を、電子書籍配信事業(自社電子書籍配信サイト「eBookJapan」での電子書籍販売)、電子書籍提供事業(パートナー企業への電子書籍配信システム・書籍データ提供事業で、航空機内向けサービス等を含む)、プロモーション・その他事業(書籍の電子化受託、電子書籍配信プラットフォームの受託開発、eBook図書券の販売、コンテンツ/キャラクターを活用した販促プロモーションなど)とした。

 今期(16年1月期)の連結業績見通し(3月12日公表)については、売上高が60億円~70億円(前期比17.0%増~36.5%増)、営業利益が2億円の赤字~1億円の黒字(前期は3億13百万円の黒字)、経常利益が2億円の赤字~1億円の黒字(同3億16百万円の黒字)、純利益が1億28百万円の赤字~80百万円の黒字(同1億83百万円の黒字)のレンジ予想としている。

 登録会員数増加や新規連結などで大幅増収見通しだが、16年1月期と17年1月期は投資期間と位置付けているため、開発費、人件費、広告宣伝費の増加、さらに新期連結会社ののれん償却費増加などで減益見通しだ。ただし新規事業の業績に与える影響を考慮して、立ち上がり状況を慎重に見極めつつ投資額をコントロールしていくとしている。電子書籍市場の拡大も背景として、収穫期と位置付ける18年1月期以降の収益拡大が期待される。

 株価の動きを見るとやや軟調な展開が続いたが、クックパッドとの資本業務提携を好感して4月7日終値977円から急反発し、4月9日には1419円まで急伸する場面があった。その後は人気一巡して反落したが、1050円~1100円近辺で下げ渋り、3月中旬~4月上旬の安値圏950円~1000円近辺まで下押す動きは見られない。調整の最終局面のようだ。

 4月28日の終値1061円を指標面で見ると、前期実績PBR(前期実績のBPS463円27銭で算出)は2.3倍近辺である。日足チャートで見ると上向きに転じた25日移動平均線が下値を支える形となり、週足チャートで見ると戻りを押さえていた13週移動平均線を突破した。調整が一巡したようだ。電子書籍事業の成長力を評価して出直り展開が期待される。

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