アイリッジは戻り試す、20年3月期収益改善期待

 アイリッジ<3917>(東マ)は、O2O・OMOソリューションをベースとして、電子地域通貨やライフデザインにも事業領域拡大戦略を推進している。20年3月期は通期ベースで収益改善を期待したい。株価は12月の昨年来高値圏から一旦反落したが、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。なお2月14日に第3四半期決算発表を予定している。

■O2O・OMOソリューションをベースに事業領域拡大

 企業向けにO2O(Online to Offline)やOMO(Online Mergrs with Offline)を支援するO2O・OMOソリューションをベースとして、フィンテック(電子地域通貨)領域やライフデザイン領域にも事業領域拡大戦略を推進している。

 18年5月デジタルガレージ<4819>と資本業務提携、18年8月デジタルガレージからセールスプロモーションのDGマーケティングデザインの株式80%取得して連結子会社化、19年10月システム受託開発のキースミスワールドを吸収合併した。

 20年3月期第2四半期累計のサービス別売上高構成比は、月額報酬(FANSHIPのサービス利用料、アプリのシステム保守料等)が14%、アプリ開発・コンサル・プロモーション等(アプリ企画・開発に伴う収入、アプリマーケティングに伴う収入、広告・販売プロモーションに伴う収入)が86%だった。

■O2O・OMOソリューションはFANSHIPが主力

 O2O・OMOソリューションは、ファン育成プラットフォーム(顧客データ分析プラットフォーム)FANSHIPが主力である。従来のスマホ向け位置情報連動型O2Oソリューションpopinfoを19年7月ブランドリニューアルした、利用ユーザー数(ID発行数)は19年9月末時点で1億6505万となった。利用ユーザー数に応じた従量課金型月額報酬の積み上げによるストック収益となる。

 成長戦略として、FANSHIPの機能強化によるストック収益拡大を推進する。19年7月には商業施設特化型アプリ開発・運用・販促サービスFANSHIP for SCの提供を開始、19年12月にはアプリ向け企画・運用支援サービスを開始した。

 さらに子会社DGマーケティングデザインとの連携によって、デジタル・フィジカルマーケティング領域に展開する。オンライン・オフライン双方において、広告~購買~決済~SRMまで消費者の行動プロセス全てをカバーするトータルソリューションを推進する。

■電子地域通貨も展開加速

 フィンテック領域(電子地域通貨)は、18年8月設立の子会社フィノバレーが、電子地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy」をベースとして事業展開を加速している。

 17年12月飛騨信用組合「さるぼぼコイン」商用利用開始、18年2月伊予銀行「IYOGIN CO-in」実証実験開始、18年7月小田急電鉄「新宿シネバルコイン」実証実験開始、18年10月木更津市役所・君津信用組合「アクアコイン」商用利用開始した。また九州全域のキャッシュレス決済インフラ整備を目的とした九州キャッシュレス観光アイランド推進コンソーシアムに参画した。

 19年9月にはeumo、ポケットマルシェ、IKEUCHI ORGANICと共同で電子地域通貨「eumo」の実証実験を開始した。電子地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy」が採用された。また19年9月開催された「J-Coin Payビジネスコンテスト2019」で最優秀賞を受賞した。今後「J-Coin Pay」を活用した新サービスの実現に向けて、みずほフィナンシャルグループ等との協業の検討を進める。

■ライフデザインなど新規事業も育成

 ライフデザイン領域の新規事業では18年8月、デジタルガレージの子会社で分譲マンションのチラシ制作など、不動産マーケティング大手のDGコミュニケーションズの株式14%を取得した。従来は流通・小売・鉄道・金融分野が主力だったO2Oソリューションを、DGコミュニケーションズと連携して、不動産・住まい・街づくりなどライフデザイン領域にも展開する。

 また18年9月にはAIスピーカー向けアプリ開発プラットフォームNOIDを提供開始している。プログラミング不要で簡単にスマートスピーカーアプリが作れるクラウドサービスである。

■20年3月期は通期ベースで収益改善期待

 20年3月期連結業績予想(19年3月期は決算期変更で8ヶ月決算)は、売上高が55億円、営業利益が2億50百万円、経常利益が2億50百万円、純利益が1億20百万円としている。

 開発体制強化による生産性向上と内製割合上昇、高付加価値案件への取り組み拡大による粗利率改善、ストック型ソリューションの展開・開発強化、販管費の適正化などを推進する。

 第2四半期累計は、売上高が24億26百万円、営業利益が76百万円の赤字だった。ただし四半期別に見ると、第1四半期は売上高が7億88百万円で営業利益が1億75百万円の赤字、第2四半期は売上高が16億38百万円で営業利益98百万円の黒字だった。大型案件の売上計上や販管費の抑制で第2四半期に収益改善した。

 通期予想に対する第2四半期累計の進捗率は低水準の形だが、大型案件の増加で第4四半期偏重の売上・利益計画である。また前期からの低粗利案件の影響が第2四半期までにほぼ解消している。さらに大型高付加価値案件の順次リリースを予定している。通期ベースで収益改善を期待したい。

■ストック型ソリューションを拡大

 今後の重点取り組みとしては、開発体制強化・高付加価値案件拡大による粗利率改善、FANSHIPを軸としたストック型ソリューションの拡大、グループシナジー拡大と新規事業・サービスの強化などを推進する。

 中期経営計画の目標値としては、22年3月期売上高70億円、営業利益5億円、EBITDA7億50百万円を掲げている。中長期的に収益拡大を期待したい。

■株価は戻り試す

 株価は12月の昨年来高値圏から一旦反落したが、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。1月23日終値は1313円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS18円19銭で算出)は約72倍、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS385円29銭で算出)は約3.4倍、時価総額は約87億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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