【編集長の視点】ブラザーは続伸業績が市場予想に未達も連続増配と綱引きをして反発

編集長の視点

ブラザー工業<6448>(東1)は、34円高の1955円と反発して始まっている。前日7日大引け後に3月期決算を発表、前2015年3月期業績は、今年2月の前期3回目の上方修正通りに連続して過去最高を更新して着地し、今2016年3月期業績は、純利益が、不動産売却益の一巡で減益転換、市場コンセンサスを下回ることと、今期配当を連続増配することとが強弱材料の綱引きとなっており、連続増配をややポジティブに評価して超割安株買いが優勢となっている。昨年3月に発表した英国の印刷機器会社・ドミノ社の買収(M&A)が、なお法的手続き中で、これに伴う財務負担懸念が尾を引いていることから上値の伸びは鈍くなっている。

■スマートフォン向けの工作機械が続伸し円安進行もサポート

前2015年3月期業績は、ほぼ再々上方修正通りに前々期比14.7%増収、32.9%営業増益、44.8%経常増益、2.80倍純益増益と連続して過去最高を更新した。通信・プリンティング機器が、アジア地域向けに堅調に推移し、スマートフォン向け工作機械も大きく伸び、自動車関連顧客向けの拡販効果もオン、為替レートが、1ドル=110.03円(前々期実績100円)、1ユーロ=138.68円(同134.01円)と円安が進んだことなどが要因で、純利益は、賃貸用不動産の売却益160億円強を計上したことで大幅増益となった。

今2016年3月期業績は、為替レートを1ドル=115円の円安、1ユーロ=125円の円高と想定し、引き続きスマートフォン、自動車向けの工作機械が好調に推移することから売り上げ7600億円(前期比7.5%増)、営業利益580億円(同0.8%増)、経常利益560億円(同8.6%増)と続伸し、純利益は、特別利益の一巡で355億円(同34.2%減)と減益転換を見込んでいる。利益は、いずれも市場コンセンサスにやや未達となる。今期配当は、36円(前期実績30円)と連続増配を予定している。

なお、ドミノ社へのM&Aは、今年3月期に発表、同社が中期経営計画で目標としている売り上げ1兆円の達成に向け事業領域を拡大するために、ペットボトルの印刷などのコーティング・マーキング分野で世界有数の同社を総額1890億円で完全子会社化するもので、すでに米国独禁法当局の承認を取得し、5月末までにEU(欧州連合)、中国でも承認を取得し、6月4日には英国裁判所での審問手続きが予定されている。

■純利益は減益転換もPERは14倍台と割安で下げ過ぎも示唆

株価は、今年2月の前期業績の3回目の上方修正も、業績水準が市場コンセンサスを下回るとして年初来安値1872円と売られ、下げ過ぎとして2000円台まで戻したが、M&Aの財務負担懸念で再度、1888円と下ぶれ25日移動平均線水準での下値固めを続けてきた。今期純利益は、減益転換予想だが、それでも投資採算的にはPER14倍台と割安放置となっており、一段の戻りを試し、今年1月の年初来高値2192円、昨年12月の昨年来高値2331円を目指す展開も想定される。(本紙編集長・浅妻昭治)

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