【アナリスト水田雅展の銘柄分析】アーバネットコーポレーションは第3四半期累計業績の高進捗率を評価して上値試す

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 アーバネットコーポレーション<3242>(JQS)は投資用マンションの開発・販売事業を展開している。5月7日に第3四半期累計(7月~3月)業績を発表し、通期見通しに対する進捗率は高水準だった。株価は4月の年初来高値392円から一旦反落したが、第3四半期累計の高進捗率を評価して上値を試す展開だろう。低PERや高配当利回りも評価材料だ。

 東京23区で投資用・分譲用マンションの開発・販売事業を展開している。15年3月には子会社アーバネットリビングを設立(7月操業予定)した。グループ全体の発展を目指して戸別分譲事業、マンション管理事業、賃貸事業を展開する。

 REIT、ファンド、海外投資家の参入などで投資用ワンルームマンションに対する投資・購入マインドは旺盛だ。日銀の異次元金融緩和、20年東京夏季五輪、脱デフレ、そして日本経済再生の流れも追い風となる。

 土地価格上昇と建設コスト上昇によって売上総利益率が低下傾向を強めるという事業環境に対して、投資意欲旺盛な台湾・シンガポール・香港・中国本土の海外投資家への直接販売など販売手法の多様化、川崎市や横浜市など人口増加・優良地域への開発エリアの拡大、売上総利益率安定化に向けた分譲物件開発の平準化などの施策を強化している。

 海外投資家への直接分譲については、14年7月に売買契約を締結した投資用ワンルームマンション「アジールコート銀座イースト」(15年2月末竣工、15年6月期売上計上)が第一弾となり、14年11月には投資用ワンルームマンション「アジールコート新宿」(16年3月末竣工、16年6月期売上計上予定)の売買契約も締結した。

 そして15年2月には、投資用ワンルームマンション「東邦大学前プロジェクト(仮称)」(マンション部分74戸、店舗1店)の売却を発表した。海外投資家への直接分譲で、売却価格は14年6月期売上高の10%相当額以上としている。

 5月7日に発表した今期(15年6月期)第3四半期累計(7月~3月)の連結業績は売上高が102億22百万円、営業利益が14億47百万円、経常利益が12億62百万円、純利益が8億03百万円だった。第3四半期から連結財務諸表を作成したため前年同期との単純比較はできないが、投資用ワンルームマンションの販売が好調に推移しているようだ。

 第3四半期累計では前期からの継続2物件(68戸)を含む9棟の一部戸別決済438戸を売上計上した。このうち「アジールコート銀座イースト」1棟(39戸)は海外投資家への1棟販売である。またコンパクトマンション「アジールコフレ新中野」1棟(47戸)を全戸売上計上した。

 なお参考値として四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(非連結7月~9月)29億47百万円、第2四半期(非連結10月~12月)18億84百万円、第3四半期(連結1月~3月)53億91百万円、営業利益は第1四半期3億63百万円、第2四半期1億33百万円、第3四半期9億51百万円である。

 通期の連結業績予想は前回予想(2月16日に2回目の増額修正)を据え置いて、売上高が118億円、営業利益が16億円、経常利益が13億20百万円、純利益が8億50百万円としている。前期の非連結との比較で12.6%増収、34.9%営業増益、33.2%経常増益、11.4%最終増益となる。配当予想(2月16日に2回目の増額修正)は配当性向約30%を目標として同1円増配の年間13円(第2四半期末5円、期末8円)としている。

 通期見通しに対する第3四半期累計の進捗率は売上高が86.6%、営業利益が90.4%、経常利益が95.6%、94.5%で、利益は計画をほぼ達成した水準である。

 投資用ワンルームマンション売上計上戸数の増減で収益が変動しやすいが、15年6月期の売上計上を想定していなかった15年5月竣工物件の店舗部分を6月に売上計上することも考慮すると、通期3回目の増額の可能性もあるだろう。

 株価の動き(2月4日付で貸借銘柄)を見ると、水準を切り上げて4月の年初来高値392円まで上伸した。13年5月高値560円以来の水準だ。その後は利益確定売りで一旦反落したが、350円近辺で自律調整一巡感を強めている。好業績見通しを評価する流れに変化はないだろう。

 5月7日の終値359円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS40円79銭で算出)は8~9倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間13円で算出)は3.6%近辺、前期実績PBR(非連結ベースの前期実績BPS153円34銭で算出)は2.3倍近辺である。

 週足チャートで見るとサポートラインの13週移動平均線が接近して切り返しのタイミングのようだ。第3四半期累計業績の高進捗率を評価して上値を試す展開だろう。低PERや高配当利回りも評価材料だ。

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