【アナリスト水田雅展の銘柄分析】テラは下値切り上げて調整一巡感、中期成長力を評価して出直り展開

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 独自開発のがん治療技術を医療機関に提供するテラ<2191>(JQS)の株価は、10月中旬の直近安値圏1330円近辺から反発して下値切り上げの動きを強めている。調整が一巡して強基調に転換したようだ。中期成長力を評価して出直り展開だろう。

 東京大学医科学研究所発のバイオベンチャーで、細胞医療事業(樹状細胞ワクチン「バクセル」を中心とした独自開発のがん治療技術を契約医療機関に提供)を主力として、医薬品事業(樹状細胞ワクチン「バクセル」の薬事承認取得に向けた開発活動)、および医療支援事業(研究機関・医療機関から受託する細胞加工施設の運営・保守管理サービス、細胞培養関連装置の販売、治験支援サービス)を展開している。

 細胞医療事業は契約医療機関における症例数に応じた収入が収益柱で、契約医療機関における累計症例数は14年6月末時点で約8250症例に達している。なお14年11月に3医療機関と新たに連携契約を締結し、契約医療機関数は全国で合計36カ所となった。

 成長に向けたM&A・アライアンス戦略も加速している。13年4月iPS細胞による再生医療実用化を目指すヘリオスに出資、13年5月がん新薬を中心とした治験支援事業に参入するため子会社タイタンを設立、13年7月アンジェスMG<4563>と子宮頸がんの前がん病変治療ワクチンの共同研究・開発基本契約を締結、13年12月iPS細胞を利用したがん免疫細胞療法の開発に向けてヘリオスと業務提携した。

 さらに14年1月樹状細胞ワクチン「バクセル」の薬事承認取得を目指して子会社テラファーマを設立、14年2月ゲノム診断支援事業に向けてゲノム解析ソフトウェア開発のジナリスと合弁子会社ジェノサイファーを設立、14年4月組織培養用培地のパイオニアであるコージンバイオに出資して資本業務提携、14年8月少額短期保険業者のミニンシュラーを子会社化(14年12月1日付で商号をテラ少額短期保険に変更予定)して保険事業に参入した。

 今期(14年12月期)の連結業績見通し(8月1日に減額修正)は、売上高が前期比32.5%増の20億40百万円だが、営業利益が3億16百万円の赤字(前期は23百万円の黒字)、経常利益が3億51百万円の赤字(同24百万円の赤字)、純利益が3億24百万円の赤字(同58百万円の赤字)としている。

 第3四半期累計(1月~9月)は前年同期比16.9%増収となり、通期ベースでも医療支援事業での細胞培養関連装置新規受注などが寄与して大幅増収見通しだが、樹状細胞ワクチン「バクセル」の薬事承認取得に向けた開発活動本格化による経費増加、さらに新規事業立ち上げ費用などが影響して各利益は赤字の見通しだ。ただし樹状細胞ワクチン「バクセル」薬事承認取得に向けた動きが注目される。

 13年5月公布の「再生医療推進法」の理念のもと、14年11月には「医薬品医療機器等法(旧薬事法の改正)」および「再生医療等安全性確保法」の再生医療関連2法が施行され、再生医療・細胞医療の早期実用化の促進が期待されている。樹状細胞ワクチン「バクセル」に関しては「医薬品医療機器等法」に基づき、がん治療用再生医療等製品として早期承認制度を活用した薬事承認取得に向けて開発体制整備を強化し、15年度中に治験届の提出を目指すとしている。潜在需要は大きいだけに中期成長に対する期待感が高まる。

 株価の動きを見ると、10月中旬の直近安値圏1330円近辺から反発し、10月31日の1382円、11月17日と18日の1422円、12月5日の1473円と下値切り上げの動きを強めている。調整が一巡して強基調に転換したようだ。日足チャートで見ると25日移動平均線がサポートラインの形となり、週足チャートで見ると26週移動平均線突破の動きを強めている。中期成長力を評価して出直り展開だろう。

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