三洋貿易は売られ過ぎ感

 三洋貿易<3176>(東1)は自動車向けゴム・化学関連商品やシート部品を主力とする専門商社である。20年9月期増益予想である。新型コロナウイルス感染拡大の影響で下振れに注意必要だが、中期的に収益拡大を期待したい。株価は地合い悪で昨年来安値を更新する展開だが、売られ過ぎ感を強めている。反発を期待したい。

■自動車向けゴム・化学関連製品やシート部品が主力の専門商社

 ゴム関連商品、化学品関連商品、産業資材関連商品、科学機器関連商品、機械・資材関連商品の5分野に展開し、自動車向けゴム・化学関連商品やシート部品を主力とする専門商社である。メーカー並みの技術サポート力が特徴だ。海外は米国、メキシコ、中国、タイ、ベトナム、インド、インドネシア、シンガポール、ドイツに展開している。

 自動車関連は合成ゴム・添加剤、タイヤ用特殊クレー、防振ゴム・ホース原料、自動車用シート部品(レザーシート、シートヒーター、ランバーサポート、シートセンサー)といった高付加価値品を中心に展開している。シートヒーター(Gentherm社製)はカーボンファイバー仕様市場を独占し、ランバーサポート(L&P Group社製)は世界市場6割を占有している。

 19年9月期のセグメント別(連結調整前)営業利益構成比は化成品が24%、機械資材が62%、海外現地法人が13%、その他が1%だった。収益面では設備投資関連商材を含むため、3月期決算企業の期末にあたる第2四半期の構成比が高い特性がある。

 M&Aも活用して業容拡大・グローバル戦略を推進している。19年5月ゴムライニング製ポンプで世界首位の新東洋機械工業を子会社化、19年10月畜産機能性原料の輸入専門商社ワイピーテックを子会社化、19年11月英国OXIS社と業務提携した。

 3月10日には、食品添加物を中心とする化学品輸入販売商社のNKSコーポレーションを子会社化すると発表した。

■長期経営計画の経営スローガン「最適解への挑戦」

 長期経営計画「VISION2023」では、目標値を23年9月期経常利益75億円、ROE15%、海外拠点成長率(売上高、年率)10%としている。

 経営スローガンに「最適解への挑戦」を掲げ、基本戦略として企業体質の強化で最適解への挑戦、企業基盤の強化、人材への投資、収益基盤の強化で事業領域の深化、新規ビジネスの開拓、グローバル展開の加速、新規投資案件の推進に取り組む。

 事業領域深化では注力ドメインを、自動車部材(内装材、ゴム部材)、ファインケミカル(高機能化学品、ゴム添加剤)、ライフサイエンス(医薬中間体、医療機器、ゴム部材)、サステナブル(木質バイオマス、地熱発電)、畜産関連(ペレットミル機械、畜産部材)、科学分析機器(先端計測・分析機器)としている。今後の成長ドライバーとして木質バイオマス関連、自動車関連、および海外への展開を加速する方針だ。

 木質バイオマス関連は、実績豊富な木質ペレット製造装置(CPM社製)やガス化熱電併給装置(ブルクハルト社製)のプロジェクト受注を積み上げて、将来的には部品更新やメンテナンスを中心とするストック型収益の構築を目指す。18年8月には大日本コンサルタント<9797>と合弁で、静岡県・湯船原地区の木質バイオマス発電所を管理運営する合同会社ふじおやまパワーエナジーを設立した。

 自動車関連はEV化や自動運転化に対応し、モビリティ分野での移動環境の快適化・高付加価値化の流れを踏まえた商品開発を推進する。また海外はアセアン+インド、中国、北中米の3拠点を主軸としてグローバル展開を加速する。

 なお19年11月策定の中期経営計画では、21年9月期目標値を売上高1020億円、営業利益65億円、経常利益67億円、純利益45億円としている。長期経営計画「VISION2023」で掲げた企業体質の強化、収益基盤の強化を重点戦略とする。

■20年9月期増益予想

 20年9月期の連結業績予想は、売上高が19年9月期比13.5%増の945億円、営業利益が2.2%増の60億円、経常利益が2.0%増の62億円、純利益が4.5%増の42億円としている。配当予想は20年2月1日付株式2分割遡及換算後で50銭増配の37円50銭(第2四半期末18円50銭、期末19円)としている。

 第1四半期は、売上高が前年同期比5.9%減の211億77百万円、営業利益が12.2%減の15億75百万円、経常利益が2.2%減の17億81百万円、純利益が7.1%減の11億13百万円だった。

 化成品は3.8%増収だが、自動車向け合成ゴムや副資材の採算性低下、ワイピーテック買収関連費用の一括計上などで19.7%減益だった。機械資材は自動車内装部品が堅調だが、木質バイオマス関連や海洋開発分野の大型案件が一巡し、9.5%減収で10.1%減益だった。海外現地法人は需要減速の影響で全体的に伸び悩み、14.2%減収で8.3%減益だった。

 第2四半期以降は新型コロナウイルス感染拡大の影響が懸念され、通期下振れに注意必要だが、中期的に収益拡大を期待したい。

■株価は売られ過ぎ感

 株価(20年2月1日付で株式2分割)は地合い悪で昨年来安値を更新する展開だが、売られ過ぎ感を強めている。反発を期待したい。3月18日の終値は722円、今期予想連結PER(会社予想連結EPS146円69銭で算出)は約5倍、今期予想配当利回り(会社予想の37円50銭で算出)は約5.2%、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS1011円32銭で算出)は約0.7倍、時価総額は約209億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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