【どう見るこの相場】「水準より変化率」なら原油価格関連株、米長期金利関連株は連動ゾーン

どう見るこの相場

 兜町の地場筋独自の投資テクニックの一つに、「水準より変化率」とする投資判スタンダードがある。「あった」というべきかもしれず、昨今の証券アナリストのカバーの範囲外だろう。証券アナリストが見向きもしない極低位のボロ株から大穴株を掘り出そうという重要テクニックであるからだ。

 例えば業績サプライズ銘柄へのアタックでは、仮に何千億円の利益を安定的に毎期、毎期稼ぎ出す銘柄があるとして、その優良株より株価インパクトが大きいのは、赤字業績が黒字転換するなどの水面下から水面上に浮かび上がる限界銘柄と決め付けて、その高変化率を買い材料視する。「上がる株が優良株」などと囃し立て、連続無配、真っ赤々な財務状況などのその他もろもろのファンダメンタルズを度外視して面白がる。この重要テクニックは、兜町のかつての極低位株ファンのみの専売特許だったはずだが、最近は、どうもパンデミック(世界的な大流行)となっている新型コロナウイルスにも応用するのが、世界のトレンドになっているらしい。

 というのも、欧米の株価が、新型コロナウイルスの感染者や死者の絶対数よりもその増減に敏感に反応しているからだ。イタリアで1日当たりの感染者数の人数が減少すれば、感染のピーク通過は間近と評価し、4月8日には米国の感染者の入院患者が、同じく減少すれば、ダウ工業株30種平均株価(NYダウ)が、779ドル高などと急反発したりする。11日現在のイタリアの感染者が14万7577人、死者が1万8849人、米国が同じく50万1609人、1万8777人にも達しているのにである。1カ月以上にわたり罰則付きロックダウン(都市封鎖)を徹底し、その効果が顕在化したと変化率に重視した結果である。

■3月13日の3年4カ月ぶりの安値が大底になるか?

 翻ってわが日本はどうか?4月11日現在の感染者数は6005人、死者数は169人と欧米に比べて低水準である。安倍晋三首相は、欧米とは周回遅れで4月7日に「緊急事態宣言」を発出した。日本人の資質に期待したあくまで罰則なしの「お願いベース」の外出・接触制限策で、この先どのような水準と変化率をみせるかが株価の先行きを左右することになる。安倍首相は、発出時の記者会見で変化率の目安も明示した。「緊急事態宣言」を発出しなければ、2週間後に感染者は1万人を超え、1カ月後には8万人を超えるとしており、これが変化率のメドとなる。2週間後、1カ月後に感染者、死者が、目安を上回るのか下回るのかの変化率次第で、3月13日に突っ込んだ日経平均株価の3年4カ月ぶりの安値が大底になるか、それともなお二番底、三番底の模索を迫まられるか決まるに違いない。

【関連記事情報】
【特集】大暴落した原油価格関連株と米国の10年物国債利回り関連株

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■グローバルモデルに匹敵する日本語対応の高性能生成AIを4月から順次提供  ELYZAとKDDI<…
  2. ■優勝への軌跡と名将の言葉  学研ホールディングス<9470>(東証プライム)は3月14日、阪神タ…
  3. ■新たな映画プロジェクトを発表  任天堂は3月10日、イルミネーション(本社:米国カリフォルニア州…
2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■金先物と原油価格、史上最高値に迫る―地政学リスクが市場に与える影響  今週のコラムは、異例中の異…
  2. ■「虎」と「狼」の挟撃を振り切り地政学リスク関連株で「ピンチはチャンス」に再度トライ  東京市場は…
  3. ■海運株と防衛関連株、原油価格の動向に注目集まる  地政学リスクによる市場の不安定さが増す中、安全…
  4. ■中東緊張と市場動向:投資家の選択は?  「遠い戦争は買い」とするのが、投資セオリーとされてきた。…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る