【アナリスト水田雅展の銘柄診断】ミロク情報サービスは16年3月期増収増益予想、自社株買いも評価して上値追い

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ミロク情報サービス<9928>(東1)は財務・会計ソフトの開発・販売やコンサルティングサービスなどを展開している。5月12日に15年3月期決算と自社株買いを発表した。株価は高値圏700円近辺で堅調に推移している。16年3月期増収増益予想や自社株買いを評価して上値追い展開だろう。

 会計事務所(税理士・公認会計士事務所)と、その顧問先企業である中堅・中小企業向けに、業務用アプリケーションソフト開発・販売、汎用サーバ・パソコン・サプライ用品販売、運用支援・保守サービス、経営情報・コンサルティングサービスなどを展開している。

 会計事務所が抱えている課題を解決することで中堅・中小企業支援にも繫がるトータルソリューションが強みで、システム導入契約売上とサービス収入が収益柱である。全国約8400の会計事務所ユーザーおよび約1万7000社の中堅・中小企業ユーザーを有し、サービス収入などのストック型収益構造を特徴としている。13年10月には、連結会計システム開発のプライマルと資本・業務提携して、連結会計や連結納税までグループ経営支援ソリューションの提供を強化している。

 14年5月に発表した第3次中期経営計画(15年3月期~17年3月期)では、目標値として17年3月期売上高260億円、経常利益40億円、純利益24億50百万円、売上高経常利益率15%、ROE15%を掲げている。

 重点戦略としては、顧客基盤拡大に向けた販売戦力増強と販路拡大(市場ポテンシャルに合わせた人的リソース配分適正化、販社M&Aも活用したエリア拡大、顧客サポート体制と経営情報サービスの充実など)、新規顧客を創造する新製品・サービス開発(マルチデバイス対応クラウドサービスなど)、新規事業による新たな収益基盤確立(利益率向上に向けた事業ポートフォリオ再設計、中小企業の事業再生支援サービスへの参入など)を推進している。

 新規事業では、登録会員数約130万人の中小・ベンチャー企業支援ビジネス情報サイト「bizocean(ビズオーシャン)」のクラウド拡充とネットビジネスへの展開、マルチデバイス対応お金管理アプリ「マネトラ」による消費者間取引(CtoC)市場への参入、経済団体・FC企業への会計クラウドサービスの提供などを推進している。

 14年5月には全国商工会連合会の会員事業者向け「会計・税務のクラウド型アプリケーションソフト」を開発し、14年8月にはソフトテックス社から完全Web対応クラウド販売管理システム「商い哲人EX」を譲り受け、14年9月には中小企業の事業承継や事業再生を支援する子会社MJS・M&Aパートナーズを設立した。

 14年10月にはCtoC向けクラウド型会計アプリ「フリビズbyマネトラ」の提供を開始した。また韓国の電子金融専門企業Webcash(ウェブキャッシュ)社と資本業務提携した。韓国Webcash社と日本法人(14年11月MWIに社名変更)の株式を取得し、新たなクラウドサービスを共同開発して日本国内で事業展開する。14年12月にはクラウド型POSシステムのオフィス24グループと業務提携した。

 15年1月には次世代サービス共同開発を目的として、次世代Web標準言語HTML5を活用したWebソリューション開発に強みを持つニューフォリアに出資して資本提携した。

 なお4月21日には一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)への加盟を発表した。税理士・公認会計士事務所と中堅・中小企業の経営革新を推進し、その繁栄に寄与するという経営方針のもと、日本経済の発展に貢献できるよう企業としての社会的責任を果たせるよう努めるとしている。

 5月12日に発表した前期(15年3月期)の連結業績(2月3日に投資有価証券売却益計上に伴い純利益を増額修正)は、売上高が前々期比1.4%増の223億83百万円、営業利益が同5.6%増の25億24百万円、経常利益が同6.8%増の25億87百万円、純利益が同26.5%増の17億57百万円だった。概ね計画水準の増収増益だった。純利益は投資有価証券売却益2億91百万円も寄与した。

 配当予想は前々期と同額の年間15円(期末一括)とした。連結配当性向は26.9%である。なおROE(自己資本当期純利益率)は同1.0ポイント上昇して13.7%、自己資本比率は同4.2ポイント上昇して67.8%となった。

 システム導入契約売上高は主力製品のライフサイクルの影響で同2.1%減の142億29百万円だったが、サービス収入が同6.9%増の76億71百万円と好調に推移した。会計事務所向け総合保守サービスTVS収入、ソフト使用料収入、企業向けソフトウェア運用支援サービス収入、ハードウェア・ネットワーク保守サービス収入が増収だった。ストック型のサービス収入の好調で差引売上総利益率は同1.9ポイント上昇して64.0%となった。

 なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)56億22百万円、第2四半期(7月~9月)56億41百万円、第3四半期(10月~12月)54億77百万円、第4四半期(1月~3月)56億43百万円、営業利益は第1四半期5億96百万円、第2四半期7億06百万円、第3四半期4億56百万円、第4四半期7億66百万円だった。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(5月12日公表)は売上高が前期比5.4%増の236億円、営業利益が同18.8%増の30億円、経常利益が同16.0%増の30億円、純利益が同3.0%増の18億10百万円、配当予想が前期と同額の年間15円(期末一括)としている。

 会計事務所向けシステムや中堅・中小企業向けERPシステムの拡販、新規顧客の開拓、ソフト保守サービス契約率の上昇などで人件費増加などを吸収して増収増益基調だ。16年1月スタートに向けたマイナンバー制度関連需要も追い風だろう。

 既存のソフトウェア関連事業の拡大に向けて新規顧客の拡大と収益基盤の強化に注力するとともに、クラウドサービスやマルチデバイス対応などの新たな製品・サービス、中小企業の事業承継・事業再生を支援するサービスも強化する方針だ。ストック型の収益構造であり中期的にも収益拡大基調だろう。

 なお15年4月から若手社員の基本給を月額平均で4.8%、定期昇給を含めると月額平均7.1%(1万4880円)引き上げた。また15年4月入社の新卒を過去最高となる74名採用し、新卒初任給は月額平均7.3%(1万4000円)引き上げた。

 また5月12日に自己株式取得を発表した。取得株式総数の上限100万株(自己株式除く発行済株式総数に対する割合3.09%)、取得価額総額の上限7億円、取得期間15年5月22日~5月31日で、自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)の利用を予定している。

 株価の動きを見ると、04年以来の高値圏700円近辺で堅調に推移している。4月23日には729円まで上伸する場面があった。中期成長力を評価する流れに変化はないだろう。

 5月12日の終値701円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS57円42銭で算出)は12~13倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間15円で算出)は2.1%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS411円46銭で算出)は1.7倍近辺である。

 週足チャートで見ると上昇トレンドの中段保ち合いの形だが、13週移動平均線がサポートラインとなって煮詰まり感を強めている。16年3月期の増収増益予想や自社株買いを好感して上値追い展開だろう。フシ突破の形となって一段高の可能性がありそうだ。

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