【アナリスト水田雅展の銘柄診断】キーウェアソリューションズは16年3月期は大幅増益・復元配予想、マイナンバー制度関連も期待

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 キーウェアソリューションズ<3799>(東2)はシステム受託開発やシステムインテグレーションを展開している。12日に15年3月期決算を発表し、16年3月期大幅増益・復元配予想を好感して13日の株価はストップ高の648円まで急伸した。マイナンバー制度関連のシステム開発需要も期待され、収益改善基調を評価して出直りの動きが本格化しそうだ。

 システム受託開発事業(公共システム開発、ネットワークシステム開発)、経営とITの総合コンサルティング事業(システムインテグレーション、ITサービス、サポートサービス)、その他事業(機器販売など)を展開している。

 主要顧客は、筆頭株主であるNEC<6701>グループ向けが約4割を占め、NTT<9432>グループ、JR東日本<9020>グループ、三菱商事<8058>グループ、日本ヒューレット・パッカードなどが続いている。NECと連携して医療分野や流通・サービス業分野へ事業領域を広げ、ERP(統合業務パッケージ)関連やセキュリティ関連も強化している。

 15年1月には経済産業省「平成26年度健康寿命延伸産業創出推進事業」の「職場における健康投資に関する効果指標および投資環境整備(健康データのオープン化・小規模事業所)」に、職域健康投資コンソーシアムとして参画した。また総務省「新たなワークスタイルの実現に資するテレワークモデルの実証」プロジェクトにモデル企業として選ばれ、15年1月から実証を開始している。

 15年3月には、自治体向けに農作物の品質・生産性向上や栽培技能の継承を支援する農業ICTサービス「OGAL(オーガル)」シリーズの提供を開始した。圃場に設置した各種センサーから収集した環境情報を遠隔からリアルタイムでモニタリングできるクラウド型サービスで、14年6月に宮城県亘理町いちごファームが導入して研究利用が開始されている。

 また慶応義塾大学SFC研究所が農業ICTの普及と農業情報標準化に向けて設立したアグリプラットフォームコンソーシアムに参画した。政府が取り組む農業分野IT施策方針「農業情報創成・流通促進戦略」などを踏まえて、産学連携により国の農業IT施策の実地検証を行うとしている。

 5月12日に発表した前期(15年3月期)の連結業績は、売上高が前々期比4.8%減の163億82百万円、営業利益が同99.4%減の2百万円、経常利益が同82.1%減の65百万円、純利益が78百万円の赤字(前々期は2億40百万円の黒字)だった。配当予想(1月30日に減額修正)は無配(前期は期末一括の年間10円)とした。

 前々期下期からの複数の不採算案件の影響により、受注機会損失が発生して受注・売上高とも減少した。受注高は同3.9%減の159億83百万円だった。さらに不採算案件の収束に係るコスト増加や、競争激化による採算性低下で大幅減益だった。ただし既存プロジェクトにおけるシステム機能強化を目的とした顧客からの追加受注が寄与して、1月30日の減額修正値(営業利益は非開示)を上回った。

 セグメント別売上動向を見ると、システム受託開発事業の公共システム開発は官庁系および通信系の継続案件の規模縮小で同19.5%減の40億52百万円、ネットワークシステム開発は監視制御系案件の好調などで同11.0%増の22億76百万円だった。

 総合コンサルティング事業のシステムインテグレーションは前々期受注の運輸系および流通系案件の追加などで同1.0%増の22億01百万円、ITサービスは継続案件の規模縮小で同5.9%減の39億12百万円、サポートサービスはサービスデリバリ系案件の減少で同15.6%減の8億26百万円だった。その他は新規案件の獲得などで同11.0%増の31億12百万円だった。

 なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)33億34百万円、第2四半期(7月~9月)39億19百万円、第3四半期(10月~12月)40億67百万円、第4四半期(1月~3月)50億62百万円で、営業利益は第1四半期3億24百万円の赤字、第2四半期1億95百万円の赤字、第3四半期70百万円の黒字、第4四半期4億51百万円の黒字だった。第4四半期の構成比が高い収益構造だが営業損益は改善基調だ。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(5月12日公表)については、売上高が前期比8.0%増の177億円、営業利益が5億円(前期は2百万円)、経常利益が4億20百万円(同65百万円)、純利益が3億70百万円(同78百万円の赤字)、配当予想が年間10円(期末一括)の復元配としている。

 不採算案件の一巡、マイナンバー制度(社会保障・税番号制度)関連のシステム開発需要、および販管費の抑制などの効果で収益が大幅に改善する見込みだ。さらに国・地方を通じた行政情報システムの改革、20年東京夏季五輪に向けたITインフラ投資需要なども寄与して受注拡大が期待される。

 株価の動きを見ると、3月の戻り高値650円から反落して調整局面だったが、12日発表の16年3月期大幅増益・復元配予想を好感する形で13日はストップ高の648円まで急伸し、3月の650円に接近した。

 5月13日の終値648円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS44円47銭で算出)は14~15倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は1.6%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS702円85銭で算出)は0.9倍近辺である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線近辺から急反発し、一旦割り込んだ13週移動平均線を素早く回復した。15年2月安値369円をボトムとして強基調への転換を確認した形だ。マイナンバー制度関連のシステム開発需要も期待され、収益改善基調を評価して出直りの動きが本格化しそうだ。

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