Delta-Fly Pharmaは戻り試す

 Delta-Fly Pharma<4598>(東マ)は新規抗がん剤の開発を目指す創薬ベンチャーである。既存の抗がん活性物質を利用するモジュール創薬という独自コンセプトを特徴としている。株価は4月の安値圏から急反発している。戻りを試す展開を期待したい。

■新規抗がん剤の開発を目指す創薬ベンチャー

 新規抗がん剤の開発を目指す創薬ベンチャーである。既存の抗がん活性物質をモジュール(構成単位)として利用し、創意工夫を加えてアセンブリ(組み立て)することで、新規抗がん剤を創製するモジュール創薬という独自コンセプトを特徴としている。基礎研究がほとんど不要となり、臨床での有効性と安全性の予測が可能となるため、一般的な抗がん剤開発に比べて研究開発の期間が短く、かつ臨床試験で失敗する開発リスクも低減される。

 ビジネスモデルとしては、研究開発のマネジメント業務に集中し、具体的な業務については外部の研究開発受託会社や製造受託会社に委託している。効率的な運営を特徴としている。

 収益モデルとしては、研究開発段階では提携製薬会社からの契約一時金、マイルストーン、開発協力金が主な収入となり、提携対象製品が上市に至った場合は売上高に応じたロイヤリティ収入を得る。

■開発中のパイプライン

 開発中のパイプラインは、難治性・再発急性骨髄性白血病を対象疾患とする抗がん剤候補化合物DFP-10917(米国で臨床第3相試験中、日本で臨床第1相準備中)、肺がん等を対象疾患とするDFP-14323(ウベニメクスの適応追加、日本で臨床第2相試験中)、膵がん等の固形がんを対象疾患とするDFP-11207(米国で臨床第2相準備中)、固形がん・血液がんを対象疾患とするDFP-14927(米国で臨床第1相試験中)、腹膜播種移転がんを対象疾患とするDFP-10825(前臨床試験中)、固形がんを対象疾患とするがん微小環境改善剤DFP-17729(日本で臨床試験準備中)である。

 DFP-10917は日本で日本新薬、DFP-14323は日本で協和化学工業と提携している。

 DFP-14323については、日本国内での製造販売権を付与している協和化学工業から19年8月、既承認薬ウベニメクスとの生物学的同等性試験によって同等性を検証し、ウベニメクスの後発医薬品の製造承認を独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に申請したとの報告を受けた。協和化学工業は申請後1年程度で製造承認取得を見込んでいる。

 20年3月には国内臨床第2相試験の症例登録が完了した。そして20年4月には臨床第3相試験(大規模比較試験)に移行する見通しになったと発表した。なお臨床第3相試験(大規模比較試験)は、日本と中国での合同試験の実施を目指し、中国の製薬会社と交渉を開始している。また20年5月には欧州における特許が成立したと発表している。

 DFP-17729は、18年11月出願した特許(がん細胞の代謝の特異性に基づく新規抗悪性腫瘍剤)が、19年8月日本に続いて韓国でも成立した。19年8月には、新たな特許(抗がん剤の効果増強剤)を出願した。また20年3月には日本ケミファ<4539>に対して日本国内における独占的販売権、および日本国内で販売するための独占的製造権を付与するライセンス契約を締結した。

 DFP-14927は18年10月米国で物質特許成立、18年12月米国FDA(食品医薬局)へIND(臨床試験用の新医薬品)申請、19年1月米国FDAによるIND安全性審査が完了して米国での第1相臨床試験の実施が許諾された。19年7月には日本でも物質特許が成立した。

 DFP-10917は、米国MD Anderson Cancer Centerを中心に臨床第3相(単剤療法)を進めているが、19年4月にDFP-10917と難治性・再発慢性リンパ性白血病治療薬Venetoclaxの併用臨床試験の検討を開始すると発表した。19年11月には、米国でのDFP-10917第3相臨床試験およびDFP-14927第1相臨床試験について、症例登録開始の報告を受けたと発表している。20年5月には米国での臨床第1相試験結果の論文が米国のがん治療専門誌に掲載された。米国での臨床第1相試験結果に基づき、臨床第2相試験の準備を進める。

 また20年5月には、DFP-10917と併用を予定しているVenetoclaxの新規誘導体の物質特許を出願したと発表している。

 なお19年2月には北米における臨床開発事業の拡大に伴ってバンクーバー事務所を開設している。DFP-10917第3相臨床試験、DFP-11207第2相臨床試験、DFP-14927第1相臨床試験を推進する。

 20年3月期の業績(非連結)は、売上高が1億円、営業利益が15億45百万円の赤字、経常利益が15億52百万円の赤字、純利益が15億55百万円の赤字だった。

 21年3月期の業績(非連結)予想は、売上高が3億円、営業利益が8億50百万円の赤字、経常利益が8億50百万円の赤字、純利益が8億50百万円の赤字としている。ライセンス契約に伴うマイルストーン対価3億円を見込んでいる。

■株価は戻り試す

 株価は4月の安値圏から急反発している。戻りを試す展開を期待したい。5月26日の終値は1676円、時価総額は約75億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■更新前のスーパーコンピュータの約4倍の計算能力  富士通<6702>(東証プライム)は2月21日…
  2. ■両社の資源を有効活用しSDGsに貢献  伊藤忠商事<8001>(東証プライム)グループのファミリ…
  3. ■純正ミラーと一体化し、左後方の視界を広げる  カーメイト<7297>(東証スタンダード)は、純正…
2024年3月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

ピックアップ記事

  1. ■投資と貯蓄の狭間で・・・  岸田内閣の「資産所得倍増プラン」は、「貯蓄から投資へ」の流れを目指し…
  2. ■「ノルム(社会規範)」解凍の序章か?植田新総裁の金融政策正常化  日本銀行の黒田東彦前総裁が、手…
  3. ■「日経半導体株指数」スタート  3月25日から「日経半導体株指数」の集計・公表がスタートする。東…
  4. ■投資家注目の適正株価発見ツール  日銀の価格発見機能が不全になる可能性がある中、自己株式取得が新…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る