【決算記事情報】科研製薬は21年3月期減収減益予想

科研製薬<4521>(東1)は皮膚科・整形外科領域を主力とする医薬品メーカーである。21年3月期減収減益予想である。クレナフィンが堅調だが、アルツの大幅減収、研究開発費の増加が影響する。当面は新型コロナウイルスで、医療機関への受診抑制や情報提供活動の制限などの影響が懸念材料として意識されるが、中期的に収益拡大を期待したい。なお5月22日に自己株式取得(上限60万株・35億円、取得期間20年5月25日~20年12月25日)を発表している。

■皮膚科・整形外科領域を主力とする医薬品メーカー

 皮膚科・整形外科領域を主力とする医薬品メーカーで、農業薬品や飼料添加物、不動産賃貸(文京グリーンコート関連賃貸)なども展開している。

 主要製品は関節機能改善剤のアルツ、外用爪白癬治療剤のクレナフィン、癒着防止吸収性バリアのセプラフィルム、創傷治癒促進剤のフィブラストスプレー、排尿障害改善剤のエブランチル、高脂血症治療剤のリピディル、歯周組織再生剤のリグロス、腰椎椎間板ヘルニア治療剤のヘルニコア、およびジェネリック医薬品である。20年1月には原発性腋窩多汗症治療剤BBI-4000(米国ブリッケル・バイオテック社から導入)の製造販売承認申請を発表した。

 中期経営計画では目標数値に21年度売上高945億円、営業利益250億円、ROE12%以上を掲げている。免疫系、神経系、感染症の3領域を柱として自社創薬基盤を拡充・融合し、開発パイプライン充実を推進する。外用爪白癬治療剤のクレナフィンの海外展開では、香港で導出先のメインライフ社が承認を取得し、販売を開始した。

■開発パイプライン

 主要開発パイプラインは、熱傷焼痂除去を適応症とするKMW-1(メディウンド社から導入、第3相段階)、爪白癬症を適応症とするKP-607(自社開発、第2相段階)、アタマジラミ症を適応症とするKAR(イベルメクチン)(アーバー社から導入、海外製品名Sklice、第1相段階)である。

 提携先が治験中の案件として、レナバサム(コーバス社から導入)は、コーバス社が全身性強皮症を適応症として国際共同第3相、皮膚筋炎を適応症として国際共同第3相段階である。尋常性乾癬を適応症とするKP-470(自社創薬)は、導出先のボシュ・ヘルス社の治験が完了した。他の適応症での開発を同社と協議中である。

■21年3月期減収減益予想

 20年3月期連結業績は、売上高が19年3月期比5.2%減の892億32百万円、営業利益が7.8%増の265億12百万円、経常利益が7.9%増の269億46百万円、純利益が9.0%増の193億70百万円だった。配当は19年3月期と同額の150円(第2四半期末75円、期末75円)とした。

 競合品、薬価改定、海外売上減少などで減収だが、研究開発費減少(37.5%減の64億18百万円)や販管費抑制で計画を上回る増益だった。主要医薬品の売上はアルツが3.3%減収、クレナフィンが1.5%減収、セプラフィルムが2.9%減収、フィブラストスプレーが3.6%減収、エブランチルが0.2%減収、リピディルが35.9%減収、リグロスが12.6%増収、ヘルコニアが3.0倍増収、ジェネリック医薬品が7.7%減収だった。

 21年3月期連結業績予想は、売上高が20年3月期比7.1%減の829億円、営業利益が21.5%減の208億円、経常利益が21.3%減の212億円、純利益が22.6%減の150億円としている。配当予想は20年3月期と同額の150円(第2四半期末75円、期末75円)である。

 クレナフィンが堅調だが、アルツの大幅減収、研究開発費の増加(27.8%増の82億円)などで減益予想としている。新型コロナウイルスの影響が想定されるが、現時点では影響を織り込んでいないとしている。

 主要医薬品の売上計画はクレナフィンが1.1%増収、アルツが14.2%減収、セプラフィルムが0.6%増収、フィブラストスプレーが2.9%増収、エブランチルが1.5%減収、リグロスが17.1%増収、ヘルコニアが83.8%増収、ジェネリック医薬品が7.3%減収としている。

 当面は新型コロナウイルスで、医療機関への受診抑制や情報提供活動の制限などの影響が懸念材料として意識されるが、中期的に収益拡大を期待したい。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■金融・医療・公共分野に特化した高精度処理、低コストで安全運用可能  NTT<9432>(東証プラ…
  2. ■ジャイアンツ球場隣接の221邸、シニアの健康・交流を支える新拠点に  フージャースホールディング…
  3. ■IT・スタートアップ中心に若手CEO台頭、経営のスピード化が進展  帝国データバンクは10月14…
2025年11月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

ピックアップ記事

  1. ■気温急低下がシーズンストック相場発進を後押し  今週のコラムでは、バリュー株選好の別の買い切り口…
  2. ■「押し」のAI株より「引き」のバリュー株選好で厳冬関連株の先取り買いも一考余地  「押してだめな…
  3. ■鶏卵高騰・クマ被害・米政策転換、市場が注視する「3素材」  2025年11月、師走相場入りを前に…
  4. ■AI株からバリュー株へ資金移動、巨大テックの勢い一服  「AIの次はバリュー株」と合唱が起こって…
  5. ■日銀トレード再び、不動産株に眠る超割安銘柄  今週の投資コラムは、政策金利据え置きの投資セオリー…
  6. ■日銀据え置きでも冴えぬ不動産株、銀行株が主役に  株価の初期反応が何とも物足りない。10月30日…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る