【アナリスト水田雅展の銘柄分析】IBJの今期業績は増額が濃厚、小泉進次郎衆議院議員を迎える6月の「婚活シンポジウム」も注目

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 IBJ<6071>(東2)は日本最大規模の集客力と会員数を誇る婚活サービス企業である。15日発表の第1四半期業績は大幅増収増益だった。15年12月期予想を据え置いたが増額が濃厚だろう。6月21日には小泉進次郎衆議院議員などを迎えて「第1回婚活シンポジウム」を開催する。ネット大手参入なども合わせて業界に対する社会的イメージが一段と高まる。株価は自律調整が一巡して高値更新の展開だろう。

 結婚相談から街コン、さらにライフデザインサービスや地方自治体の婚活支援研修まで、ネットとリアルを最大限に活用して、各事業のシナジー効果を高めながら婚活に関するサービスを幅広く展開している。

 00年に日本初のインターネット結婚情報サービス(婚活サイト)を本格開始、03年に「Yahoo!JAPAN」の婚活サービスを構築、そして04年には国家公務員共済組合連合会(KKR)の福利厚生サービスを受託した実績を持つ。

 主力事業は、日本で最初の婚活サイト「ブライダルネット」を運営するコミュニティ事業、婚活パーティー「PARTY☆PARTY」や合コン・街コン「Rush」を運営するイベント事業、IBJ直営9店舗で展開する婚活ラウンジ「IBJメンバーズ」のラウンジ事業、IBJ正規加盟店「日本結婚相談所連盟」に加盟する全国1000社超の結婚相談所にお見合いシステムを提供する連盟事業である。またビッグデータも活用した婚活会員向け広告サービスや、婚礼関連企業へ会員カップルを送客(紹介)するライフデザインメディア事業も展開している。

 日本結婚相談所連盟に加盟する相談所を含めたIBJグループ全体の婚活会員数は15年3月末時点で約34.2万人(オンライン会員数28.8万人+オフライン会員数5.4万人)、イベント開催数は月間約2500本、ラウンジ事業における成婚率は約52%、IBJグループ全体で創出する成婚数は年間約2500組に達している。

 収益は、コミュニティ事業では「ブライダルネット」月会費課金者からの月会費、イベント事業ではイベント参加費、ラウンジ事業では登録料・活動サポート費・月会費および成果報酬の成婚料、連盟事業では相談所からの加盟金および月額システム利用料、ライフデザインメディア事業では広告収入および婚礼関連企業からの手数料収入である。

 婚活会員数や加盟相談所の増加に伴って収益が増加するストック型のビジネスモデルだ。なおイベント事業のイベント開催回数・動員数および売上高は、クリスマスムードが高まる第4四半期(10月~12月)の構成比が高いという季節要因もあるようだ。

 中期的には日本の国策や市場ニーズに貢献する企業として、年間6000組(日本の成婚組数の1%)の成婚をIBJグループで創出することを目指している。成長戦略としては、クオリティ向上によるIBJブランド力の強化、既存事業の一段の強化に加えて、行政・地方自治体との連携強化、ライフデザインメディア事業での事業領域拡大などを推進する方針だ。

 行政・地方自治体との連携では、国家公務員共済組合連合会(KKR)からの福利厚生サービス受託に加えて、結婚支援研修・セミナーや相談員育成サービスなどで山形・山梨・富山・岐阜・和歌山・京都・高知の7府県と連携し、徳島県との連携も予定している。さらに全国自治体からの問い合わせが増加しているようだ。

 ライフデザインメディア事業では、結婚式場やジュエリーなどのブライダル関連企業14社(15年3月末時点)と提携して会員カップルを送客(紹介)している。送客数は増加基調である。さらに不動産や保険などライフデザイン分野の企業とも提携して送客領域を拡大する計画だ。

 海外については14年4月、台湾最大のオンラインマッチングサービス会社であるSunfun Info社と台湾に合弁会社IBTを設立した。14年8月には自社店舗でのパーティー運用を開始して、動員数が急速に増加しているようだ。

 なお15年1月、大手企業による少子化対策プロジェクトとして民間事業者協議会「婚活サポートコンソーシアム」を発足させた。日本の少子化問題に対する社会意識向上を目的として、婚活サポートの立場から調査・分析に基づいた情報発信などを行う。発足時の参画企業は9社だが、順次参画企業を増やして問題解決への取り組みの輪を広げていく方針だ。

 活動の一環として、4月13日には「婚活における身だしなみとファッション」に関する調査レポート、5月15日には「結婚観」に関する調査レポートを発表している。

 そして6月21日に「第1回婚活シンポジウム」を開催する予定(4月30日公表)だ。メインイベントでは「次世代キーパーソンが語る『新』少子化討論」と題して、小泉進次郎衆議院議員など最前線で活躍する著名人をゲストコメンテーターに迎え、少子化問題について闊達な意見交換を行う。

 5月15日に発表した今期(15年12月期)第1四半期(1月~3月)の非連結業績は、売上高が前年同期比28.2%増の9億27百万円、営業利益が同45.5%増の1億94百万円、経常利益が同45.9%増の1億94百万円、純利益が同51.7%増の1億22百万円だった。全事業が順調に推移し、人件費や広告宣伝費などの増加を吸収して計画を上回る大幅増収増益だった。

 事業別の売上高(内部取引調整前)は、コミュニティ事業が同32.2%増の1億15百万円、イベント事業が同38.3%増の3億47百万円、ラウンジ事業が同14.9%増の3億01百万円、連盟事業が同49.4%増の1億33百万円、そしてライフデザインメディア事業が同9.3%増の59百万円だった。

 婚活サイト「ブライダルネット」月会費課金者数(15年3月末時点)は同45.5%増の1万2572人、イベント事業の開催回数(15年1月~3月合計)は同48.8%増の6761回、動員数(15年1月~3月合計)は同45.7%増の8万1258人、ラウンジ事業会員数(15年3月末時点)は同9.2%増の4033人、連盟事業の登録会員数(15年3月末時点)は同6.0%増の5万4122人、加盟相談所数(15年3月末時点)は同117社増の1031社、そしてIBJ主要サイトのPV数(15年3月末時点)は同20.3%増の4489万PVだった。

 通期の非連結業績予想は前回予想(2月13日公表)を据え置いて、売上高が前期比16.4%増の38億61百万円、営業利益が同22.1%増の7億85百万円、経常利益が同19.8%増の7億54百万円、そして純利益が同18.4%増の4億79百万円としている。

 オンライン・オフライン婚活会員数、ブライダルネット月会費課金者数、PARTY☆PARTYやRushの参加者数、日本結婚相談所連盟の加盟相談所数、そして成婚数が増加基調であり、ライフデザインメディア事業における送客ビジネスの拡大も寄与する。人件費や広告宣伝費などの増加を吸収して大幅増収増益見通しだ。

 事業別売上高(内部取引調整前)の計画はコミュニティ事業が同19.3%増の4億33百万円、イベント事業が同18.6%増の14億37百万円、ラウンジ事業が同16.1%増の12億93百万円、連盟事業が同22.0%増の4億94百万円、ライフデザインメディア事業が同4.9%増の2億36百万円としている。

 第1四半期の進捗率は、第2四半期累計予想に対して売上高52.2%、営業利益60.5%、経常利益61.4%、純利益61.1%と高水準だった。そして通期予想に対しても売上高24.0%、営業利益24.8%、経常利益25.7%、純利益25.6%と順調な水準である。

 通期会社予想を据え置いたが、婚活会員数、イベント動員数、加盟相談所数は増加基調であり、第1四半期が計画を上回ったこと、ストック型の収益構造であること、イベント事業は第4四半期の盛り上がりが大きいことなどを考慮すれば、通期予想は増額が濃厚だろう。配当予想については未定としているが増配の可能性が高いだろう。

 なお月次データによると、15年4月末時点の婚活会員数は35.1万人(オンライン会員数29.7万人+オフライン会員数5.4万人)、日本結婚相談所連盟加盟相談所数は1039社となった。

 未婚化・晩婚化による婚姻数の減少、生涯未婚率の上昇、さらに出生率低下で日本の少子化問題が深刻化しているため、一般的に婚活・ウェディング市場の縮小懸念があり、婚活ブームのピークアウトを指摘する見方もあるようだ。

 しかし一方では若者層の間に「いずれは結婚したい」という声が多く、婚活サービスの潜在市場規模は約1兆円とされる有望市場だ。そして女性活用・子育て支援・少子化対策はアベノミクス成長戦略の重点分野に位置づけられる国策であり、結婚・出産・子育て支援関連ビジネスの前段階に位置付けられる婚活サービスに対する期待感も高まる。

 また婚活サービス市場では中小規模事業者が多いため、サービス内容・情報に対する信頼感や料金体系に対する不透明感なども指摘されている。しかし一部で報道されたネット大手の参入や、6月21日開催予定の「第1回婚活シンポジウム」によって、婚活サービス業界に対する信頼感や社会的認知度・イメージが高まり、サービス利用者が増加して市場が拡大する効果が期待される。

 ネット大手の参入は中小規模事業者を淘汰する一方で、規模の大きい優良事業者にとっては追い風となりそうだ。日本最大規模の会員数を誇る優位性を活かして中期的に収益拡大基調だろう。

 株主優待制度については毎年12月31日現在の株式1単元(100株)以上保有株主に対して実施している。株主優待内容は100株以上~500株未満保有株主に対して特製QUOカード500円分および「IBJメンバーズ」などで利用できる株主優待券1枚、500株以上保有株主に対して特製QUOカード1000円分および「IBJメンバーズ」などで利用できる株主優待券3枚を贈呈する。

 株価の動き(12年12月JASDAQ市場に新規上場、14年12月東証2部に市場変更、14年4月1日付で株式3分割、15年1月1日付で株式2分割)を見ると、4月8日の上場来高値1347円から利益確定売りで一旦反落したが、5月7日の直近安値1040円から切り返して15日は1304円まで上伸する場面があった。自律調整が一巡して上値を窺う動きのようだ。

 5月15日の終値1285円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS38円50銭で算出)は33倍近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS116円37銭で算出)は11倍近辺である。

 日足チャートで見ると一旦割り込んだ25日移動平均線を素早く回復した。また週足チャートで見ると13週移動平均線近辺から切り返した。サポートラインを確認して強基調の形だ。15年12月期業績は増額が濃厚であり、中期成長力を評価すれば指標面に割高感はなく高値更新の展開だろう。6月21日開催予定の「第1回婚活シンポジウム」も注目される。

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