【アナリスト水田雅展の銘柄分析】建設技術研究所は第1四半期大幅減益の売り一巡、出遅れ株物色の流れで反発

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 建設技術研究所<9621>(東1)は総合建設コンサルタントの大手である。株価は第1四半期(1月~3月)の大幅減益の売り一巡感を強めている。調整の最終局面だろう。指標面の割安感に見直し余地があり、出遅れ株物色の流れで反発展開が期待される。

 総合建設コンサルタントの大手で河川・ダム・海岸・海洋、道路、橋梁、トンネル、都市・地方計画などの分野に強みを持っている。13年9月には農業・農村関連ビジネスへの参入を視野に入れて子会社CTIフロンティアを立ち上げ、14年4月には太陽光発電事業に着手した。

 また15年3月にはユニチカ<3103>からユニチカ環境技術センターの全株式を取得して完全子会社化(株式譲渡6月30日予定、譲渡価額2億50百万円)すると発表した。同社の子会社化によって土壌、大気、水質などさまざまな環境要素のモニタリング・解析が可能となり、当社グループの環境分野でのソリューション提供力のさらなる強化を目指すとしている。

 15年5月にCTIグループ中長期ビジョン「CLAVIS2025」を策定した。グループの目指す方向は、幅広いインフラを対象としてあらゆるニーズに対応する「マルチインフラ企業」、世界に貢献するために海外業務をさらに拡大する「グローバル企業」であり、これを技術者と技術を経営資源とする「アクティブ企業」への推進によって実現するとしている。

 そして25年の事業規模目標を600億円(国内500億円、海外100億円)として、環境調査・分析、物流、エネルギー、インフラ整備・運営、農業経営・コンサルタント、気象予測サービスなど、新分野・未参入分野・周辺分野・新業種等へ事業範囲を拡げる方針だ。

 なお5月20日~22日に東京ビッグサイトで開催される「自治体総合フェア2015」に「トラプロ販売分析サービス」をテーマとして出展する。全国約1万台の貨物車の緯度経度データをニーズに応じた形で加工・分析するサービスだ。

 4月24日に発表した今期(15年12月期)第1四半期(1月~3月)の連結業績は売上高が前年同期比22.0%減の78億09百万円、営業利益が同81.1%減の1億92百万円、経常利益が同78.2%減の2億26百万円、純利益が同75.2%減の1億45百万円だった。受注高は同10.0%減の75億72百万円だった。

 通期の連結業績予想は前回予想(2月13日公表)を据え置いて売上高が前期比3.7%増の410億円、営業利益が同4.6%増の25億円、経常利益が同3.0%増の26億円、純利益が同4.0%増の15億50百万円、配当予想が前期と同額の年間18円(期末一括)としている。

 東日本大震災の復興関連業務の重点が設計段階から施工段階に移行することに加えて、財政再建のための公共工事発注減少も予想されるとして、前期の大幅増益に比べてやや慎重な見通しだ。受注高は同0.9%減の400億円の計画としている。

 通期見通しに対する第1四半期の進捗率は売上高が19.1%、営業利益が7.7%、経常利益が8.7%、純利益が9.4%と低水準だった。通期下振れに対する注意も必要だが、第2四半期(4月~6月)以降の挽回に期待したい。

 中期的には良好な事業環境が追い風となる。20年東京夏季五輪関連、リニア新幹線関連など建設ビッグプロジェクトが目白押しであり、国土強靭化基本計画に沿って社会資本整備に対する計画的な投資が実行される。防災・減災関連、老朽化インフラ補修・更新関連、都市再開発関連、アベノミクス重点戦略「地方創生」関連の案件が増加し、土木コンサルタント業務の積算に用いられる技術者単価や一般管理費の比率が上昇して採算改善も進展するだろう。未参入分野、新分野、周辺分野への業務領域拡大戦略も奏功して収益拡大が期待される。

 株価の動きを見ると、安値圏の1200円台前半から反発して4月23日に1450円まで上伸する場面があったが、第1四半期の大幅減益に対する売りで安値圏1200円台前半まで急反落した。ただし3月30日の1214円を割り込むことなく売り一巡感を強めている。調整の最終局面だろう。

 5月18日の終値1256円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS109円61銭で算出)は11~12倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間18円で算出)は1.4%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1539円79銭で算出)は0.8倍近辺である。

 週足チャートで見ると戻りを押さえていた13週移動平均線突破の動きを強めている。指標面の割安感に見直し余地があり、出遅れ株物色の流れで反発展開が期待される。

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