【アナリスト水田雅展の銘柄分析】川崎近海汽船は16年3月期営業減益予想だが増額含み、割安感を見直し

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 川崎近海汽船<9179>(東2)は近海輸送と内航輸送を展開している。株価は16年3月期営業減益予想を嫌気して高値圏モミ合いからやや水準を切り下げる形となったが、調整幅は限定的のようだ。16年3月期業績は増額含みであり、指標面の割安感を見直して反発展開が期待される。

 石炭・木材・鋼材輸送などの近海部門、石炭・石灰石・紙製品・農産品輸送やフェリー輸送などの内航部門を展開している。

 中期成長に向けた新規分野として、13年10月オフショア・オペレーションと均等出資で合弁会社オフショア・ジャパンを設立した。日本近海における海洋資源開発・探査・掘削設備・洋上再生可能エネルギー設備に関わるオフショア支援船業務に進出する。オフショア支援船は16年2月竣工予定だ。なお15年5月1日付でオフショア支援船事業推進室を新設した。

 また15年3月には、18年春予定で岩手県宮古港と北海道室蘭港を結ぶ新たなフェリー航路を開設するべく検討を開始した。宮古港、室蘭港とも近隣に国立公園など観光資源が豊富なため旅客需要も期待できるとしている。

 4月30日に発表した前期(15年3月期)の連結業績は売上高が前々期比0.7%増の459億46百万円、営業利益が同18.4%増の23億61百万円、経常利益が同22.5%増の24億39百万円、純利益が同4.4%減の5億07百万円だった。

 前回予想(10月31日に売上高を減額)に対して、売上高は11億53百万円下回ったが、営業利益は2億61百万円、経常利益は4億39百万円、それぞれ上回った。効率的な配船、円安の進行、原油価格の下落も寄与した。純利益は一部保有船舶の減損関連損失を特別損失に計上したため計画を大幅に下回った。

 配当予想は同1円増配して年間10円(第2四半期末5円、期末5円)とした。配当性向は57.8%となる。なおROE(自己資本当期純利益率)は同0.2ポイント低下して2.2%、自己資本比率は同3.6ポイント上昇して56.3%となった。

 セグメント別の動向(全社費用等調整前)を見ると、近海部門は円安も寄与して売上高が同1.8%増の166億63百万円だったが、市況低迷の長期化で営業利益が13億72百万円の赤字(前々期は12億66百万円の赤字)だった。内航部門は売上高が同0.2%増の292億78百万円、燃料油価格の下落も寄与して営業利益が同15.0%増の37億35百万円だった。

 なお四半期推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)111億91百万円、第2四半期(7月~9月)122億87百万円、第3四半期(10月~12月)119億83百万円、第4四半期(1月~3月)104億85百万円、営業利益は第1四半期56百万円の赤字、第2四半期8億59百万円、第3四半期9億60百万円、第4四半期5億98百万円だった。第1四半期は所有船のドック入りが集中して修繕費が増加した。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(4月30日公表)は売上高が前期比4.7%減の438億円、営業利益が同4.7%減の22億50百万円、経常利益が同9.8%減の22億円、純利益が同3.0倍の15億円、配当予想が前期と同額の年間10円(第2四半期末5円、期末5円)としている。

 近海部門は市況低迷が長期化しているが、バルク輸送では効率配船、木材輸送や鋼材・雑貨輸送では運航効率の向上を図る。内航部門は総じて安定した荷動きを見込んでいる。純利益は前期計上した保有船舶減損損失の一巡も寄与する。

 なお前提は、為替レートが1米ドル=120円(前期は1米ドル=108円13銭)、燃料油価格(国内価格)が5万6600円(前期は6万8175円)としている。会社予想は営業減益だが保守的な印象も強く、円安や燃料油価格下落メリットも寄与して増額含みだろう。

 4月30日に発表した15年度中期経営計画では、目標値を18年3月期売上高495億円(近海部門175億円、内航部門320億円)、営業利益34億円(近海部門5億円の赤字、内航部門39億円の利益)、経常利益35億円、純利益24億円、ROE8.9%、自己資本比率61.1%、DER0.45倍とした。前提の為替レートは1米ドル=120円、燃料油価格は7万1500円である。

 また新造船建造等に対する3年間の合計投資額は133億円とした。期間中の新造船は近海部門の一般貨物船1隻(社船または傭船)、内航部門の石炭船一隻(傭船)、一般貨物船1隻(傭船)、石灰石専用船1隻(社船)、RORO船1隻(社船)、新規事業のオフショア船1隻(共有船)の予定である。

 近海部門では、喫緊の課題である収益改善に向けて、適正な船隊規模による効率配船と新規顧客の獲得を目指す。内航部門では、不定期船輸送における各専用船の安定輸送確保と新規貨物開拓、定期船輸送とフェリー輸送における新規航路の開設を進める方針だ。

 中期的には陸上輸送におけるドライバー不足で海上輸送へのモーダルシフトが注目されている。さらにオフショア支援船業務も寄与して収益拡大が期待される。

 株価の動きを見ると、高値圏でのモミ合いからやや水準を切り下げる形となった。16年3月期の営業減益見通しが嫌気されたようだ。ただし調整幅は限定的のようだ。

 5月18日の終値402円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS51円09銭で算出)は7~8倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は2.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS784円66銭で算出)は0.5倍近辺である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んだが、日柄調整完了感も強めている。16年3月期業績は増額含みであり、指標面の割安感を見直して反発展開が期待される。

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