【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ワイヤレスゲートは下値固め完了して戻り歩調、中期成長力を再評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ワイヤレスゲート<9419>(東マ)はワイヤレス・ブロードバンドサービスを基盤として事業展開している。第1四半期(1月~3月)は利益が前年同期比横ばいにとどまったが大幅増収基調だ。株価は下値固めが完了して戻り歩調の展開である。中期成長力を再評価する動きが一段と強まりそうだ。

 通信事業者からインフラを借り受けてワイヤレス・ブロードバンドサービス(Wi-Fi、WiMAX、LTE)を提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)である。販売チャネルはヨドバシカメラ、および携帯電話販売最大手ティーガイア<3738>を主力としている。月額有料会員数の積み上げに伴って収益が拡大するストック型収益構造で、社員1人当たり営業利益額の高さも特徴だ。

 中期成長に向けた重点戦略として、M&A・提携も活用したサービス提供エリア拡大、サービスラインナップ拡充、新規事業推進などを掲げている。

 新規事業では14年1月、法人向けWi-Fi環境イネーブラー(構築運用支援)事業を開始した。公衆無線LAN環境を活用する動きが自治体(災害時通信インフラ)、観光地(外国人旅行客誘致)、商店街(集客力向上)などに広がり、20年東京夏季五輪も追い風となって無線LANの需要拡大が予想されるため、クラウド型Wi-Fi環境サービスシステムなど法人向けソリューションサービスを拡大する。

 14年8月にはLTE領域ソリューション拡充の一環として、M2M/IoTソリューション「クラウド型みまもりサービス」の販売開始と、訪問看護サービスのNフィールド<6077>との業務提携を発表した。14年11月にはWeb会議システムのブイキューブ<3681>と業務提携した。

 14年11月には、世界200カ国以上に1300万ヶ所以上のWi-Fiスポットを保有するスペインのFon社、および日本法人フォン・ジャパンと業務協力した。そして15年3月に日本のWi-Fiインフラ拡充に向けた取り組みを開始すると発表した。20年東京夏季五輪を視野に入れて国内で20万スポットを構築するとともに、観光地や商業施設などのパブリックエリアにFon社のルーターを活用したWi-Fiエリアを構築する。

 また15年3月には、移動販売者向けプラットフォームを提供するアンデコ社(大阪市)との資本業務提携、およびWi-Fi環境の構築・保守のバディネット社(東京都)との業務提携も発表した。観光地や商業施設などに構築するWi-Fiインフラにおいて、アンデコ社の「Mobility-Store Platform」と組み合わせてロケーションコマース事業を共同展開する。このロケーションコマース事業の共同展開に関して、バディネット社のWi-Fiインフラ構築体制とノウハウを活用し、ロケーションコマース・ソリューションの拡大を目指す。

 SIMカードに関しては、14年9月にデータ通信専用の「ワイヤレスゲート Wi-Fi+LTE SIMカード」の販売を開始、14年12月に訪日外国人向けデータ通信専用プリペイド型SIMカードの販売を開始、15年4月には音声機能付きSIMカード「ワイヤレスゲート Wi-Fi+LTE 音声通話プラン」の販売を開始した。

 15年4月には、経済産業省の大規模HEMS情報基盤整備事業「みやまHEMSプロジェクト」のコンソーシアムメンバーである福岡県みやま市に対して、エプコ<2311>と共同でLTE回線の提供を開始した。M2M/IoTサービス事業の一環としてSIMカードとフリールーターを提供する。HEMSは省エネ機器をネットワーク化して家庭の電力利用を一括制御するシステムである。

 なお14年12月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)20億45百万円、第2四半期(4月~6月)21億59百万円、第3四半期(7月~9月)23億69百万円、第4四半期(10月~12月)25億32百万円で、営業利益は第1四半期2億07百万円、第2四半期2億00百万円、第3四半期1億76百万円、第4四半期2億11百万円である。第3四半期の営業利益はSIM事業開始に伴うオペレーション費用の影響を受けたが、月額有料会員数の積み上げに伴って増収基調だ。

 5月8日に発表した今期(15年12月期)第1四半期(1月~3月)の連結業績は、売上高が前年同期比28.0%増の26億18百万円、営業利益が同0.2%増の2億08百万円、経常利益が同0.5%増の2億08百万円、純利益が同3.6%増の1億31百万円だった。

 販売手数料、株主数の増加に伴う諸経費、販売促進費、採用費などが増加したため各利益はほぼ横ばいだったが、主力のワイヤレス・ブロードバンド事業の会員数が順調に増加して大幅増収だった。

 事業別売上動向を見ると、ワイヤレス・ブロードバンド事業は公衆無線LANサービスが新規会員獲得活動をSIMカードにシフトしたため同10.3%減の2億04百万円、モバイルインターネットサービスが主力の「Wi-Fi+WiMAX」の好調にSIMカードも寄与して同33.0%増の23億80百万円だった。

 ワイヤレス・プラットフォーム事業は電話リモートサービスの新規会員獲得で同26.7%増の28百万円だった。その他は新規事業のWi-Fiインフラ事業(環境イネーブラー事業)における機器販売および保守料、15年3月販売開始したFonルーターなどで、売上高は5百万円だった。

 通期の連結業績予想は前回予想(2月12日公表)を据え置いて売上高が前期比37.0%増の124億72百万円、営業利益が同69.9%増の13億50百万円、経常利益が同70.8%増の13億48百万円、そして純利益が同71.6%増の8億56百万円、配当予想が同1円増配の年間26円(期末一括)としている。

 通期見通しに対する第1四半期の進捗率は売上高が21.0%、営業利益が15.4%、経常利益が15.4%、純利益が15.3%である。低水準の形だが、会員数(14年12月期末50万人)が順調に増加して増収基調だ。ストック型の収益構造であり、前期のSIM事業開始に伴うオペレーション費用の影響も一巡して大幅増益が期待される。

 成長戦略として、主力の個人向けモバイルインターネットサービス「Wi-Fi+WiMAX」「Wi-Fi+LTE SIMカード」を安定的に拡大させるとともに、法人向けWi-Fiインフラ事業(環境イネーブラー事業)の収益化を目指すとしている。中期的に収益は拡大基調だろう。

 なお2月に東京証券取引所本則市場への変更申請取り下げを発表したが、企業統治と執行を強化することによって成長スピードを再び加速し、市場変更準備は今後も継続するとしている。

 株価の動きを見ると、3000円割れ水準で下値固めが完了して戻り歩調の展開だ。足元では4月27日の年初来高値3765円から利益確定売りで一旦反落したが、5月11日の3250円から切り返しの動きを強めている。第1四半期の利益横ばいに対するネガティブ反応は限定的のようだ。

 5月19日の終値3520円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS84円53銭で算出)は42倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間26円で算出)は0.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS224円48銭で算出)は16倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線がサポートラインとなって水準を切り上げている。また週足チャートで見ると13週移動平均線が26週移動平均線を上抜くゴールデンクロスを示現した。強基調への転換を確認した形であり中期成長力を再評価する動きが一段と強まりそうだ。

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