【アナリスト水田雅展の銘柄分析】日本エム・ディ・エムは16年3月期増収増益・増配予想を評価して切り返し

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 日本エム・ディ・エム<7600>(東1)は、整形外科分野を主力とする医療機器商社でメーカー機能を強化している。株価は16年3月期の増収増益・増配予想を評価して切り返しの動きを強めている。高値圏600円台を目指す展開だろう。

 人工関節製品、骨接合材料、脊椎固定器具など整形外科分野を主力とする医療機器商社である。メーカー機能の強化によって高収益体質への転換を推進している。ジョンソン・エンド・ジョンソンとの販売契約が13年3月期に終了したが、米国子会社オーソデベロップメント(ODEV)社製品の拡販、自社製品比率上昇による売上原価率低下効果で収益改善基調だ。米ODEV社製の人工膝関節製品は中国でも薬事承認を取得している。

 自社製新製品の動向としては、米国で14年1月に米ODEV社製の人工膝関節製品「BKS-Momentum」と「E-Vitalize」を販売開始した。日本では14年5月に人工膝関節製品「BKSオフセットティビアルトレイ」を販売開始し、14年9月に米ODEV社製の人工股関節大腿骨ステム「OVATION Tributeヒップシステム」と、ステムヘッド「ODEV BIOLOX deltaセラミックヘッド」を販売開始した。また米ODEV社は人口膝関節製品「KASM」の米国食品医薬品局(FDA)薬事承認を取得して販売開始している。

 15年2月には米ODEV社製の人工膝関節製品「バランスド・ニー・システム TriMax PS」の薬事承認取得を発表した。15年5月から販売開始して16年3月期業績に寄与する。より深い膝関節の屈曲を可能としたHigh-Flexタイプの人工膝関節で、現在販売中の「バランスド・ニー・システム」シリーズにHigh-Flexタイプの製品が加わることで、人工膝関節製品の販売拡大が期待されている。

 なお収益構造の季節要因について、整形外科医療機器の販売は下期が繁忙期となる傾向があるため、当社の業績も下期の構成比が高い傾向があるとしている。

 4月30日に発表した前期(15年3月期)の連結業績(4月17日に売上高、営業利益、経常利益を2回目の増額修正、純利益を減額修正)は、売上高が前々期比25.3%増の118億55百万円、営業利益が同95.9%増の12億95百万円、経常利益が同2.3倍の10億86百万円、純利益が3億91百万円の赤字(前々期は2億86百万円の利益)だった。配当予想は前期と同額の年間5円(期末一括)とした。

 米ODEV社製の人工股間接製品「オベーションヒップシステム」や脊椎固定器具「Pagodaスパイナルシステム」、当社と米ODEV社が共同開発した骨接合材料製品「MODE」シリーズなど、主力製品の販売が日本および米国において好調に推移して大幅増収だった。

 コスト面では償還価格引き下げの影響、急速な円安進行の影響、新製品増加に伴う医療工具の減価償却費の増加、人件費の増加、米国販売拡大に伴うコミッション等の支払手数料の増加があったが、増収効果に加えて、自社製品比率が80.0%に上昇(前々期は74.4%)したことも寄与して大幅営業増益・経常増益だった。純利益は平成27年度税制改正等に伴う繰延税金資産取崩の影響で赤字だった。為替換算レートは1ドル=110円03銭(前々期は1ドル=99円99銭)だった。

 売上高の動向を見ると、地域別では日本が同22.1%増の81億51百万円、米国が同32.9%増の37億03百万円だった。品目別では人工関節分野が同27.6%増の73億21百万円(日本が同20.3%増の38億21百万円、米国が同36.5%増の34億99百万円)、骨接合材料分野(日本)が同22.6%増の28億81百万円、脊椎固定器具分野が同37.3%増の10億69百万円(日本が同55.0%増の8億65百万円、米国が同7.4%減の2億04百万円)だった。

 四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)26億32百万円、第2四半期(7月~9月)26億87百万円、第3四半期(10月~12月)31億59百万円、第4四半期(1月~3月)33億77百万円、営業利益は第1四半期2億39百万円、第2四半期2億53百万円、第3四半期5億38百万円、第4四半期2億65百万円だった。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(4月30日公表)は売上高が前期比12.2%増の133億円、営業利益が同8.1%増の14億円、経常利益が同10.4%増の12億円、純利益が7億円(前期は3億91百万円の赤字)で、配当予想が同1円増配の年間6円(期末一括)としている。

 引き続き主力製品の販売が好調に推移し、14年12月販売開始の脊椎固定器具「IBISスパイナルシステム」や15年5月販売開始の人工膝関節製品「バランスド・ニー・システム TriMax PS」も寄与する。自社製品比率上昇も寄与して増収増益見込みだ。純利益は繰延税金資産取崩の影響が一巡して黒字転換する。なお想定為替レートは1ドル=120円としている。

 品目別売上高の計画は、人工関節が同16.2%増の85億10百万円、骨接合材料が同4.8%増の30億20百万円、脊椎固定器具が同26.3%増の13億50百万円、その他が同28.0%減の4億20百万円で、このうち自社製品売上高は同20.0%増の113億90百万円(自社製品比率は前期比5.6ポイント上昇の85.6%)としている。

 なお4月30日に米国ArthroCare Corporationとの日本国内販売代理店契約を終了(6月30日予定)すると発表した。14年5月に同社がSmith & Nephew社に買収されたためで、本契約終了による業績への影響は軽微としている。

 4月30日に発表した16年3月期~18年3月期の新中期経営計画「MODE2017」では、経営目標数値を18年3月期売上高160億円、営業利益20億円、経常利益18億円、ROE8.0%とした。

 中期経営指針を「成長領域への積極投資を通じ新たなステージへ成長を加速させる」として、顧客ニーズに対応した自社新製品の開発強化と継続的市場投入、先端分野に関する情報収集強化、商品供給先の拡大による製品ラインアップの強化、北米市場での販売拡大、自社製造能力の拡大による製造コストのさらなる低減、品質管理の強化、製造から販売・市販後まで一貫した安全管理体制の整備などの施策を推進する。

 高齢化社会到来も背景として、利益率の高い自社製品の拡販が牽引して中期的に収益拡大基調だろう。

 株価の動きを見ると、4月17日の15年3月期純利益減額修正も嫌気して水準を切り下げたが、直近安値圏520円近辺で調整が一巡し、16年3月期の増収増益・増配予想を評価して切り返しの動きを強めている。5月19日は566円まで上伸した。

 5月19日の終値566円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS26円45銭で算出)は21~22倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間6円で算出)は1.1%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS409円70銭で算出)は1.4倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線を回復した。また週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んで調整局面の形だが、52週移動平均線が接近して切り返す動きだ。16年3月期の増収増益基調を評価して高値圏600円台を目指す展開だろう。

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