【アナリスト水田雅展の銘柄分析】インフォコムは上場来高値更新、16年3月期増収増益・増配予想を評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 インフォコム<4348>(JQS)はITサービスや電子書籍配信サービスを主力としている。株価は高値更新の展開だ。13年10月の1124円を突破して5月19日には上場来高値1295円まで水準を切り上げた。16年3月期の増収増益・増配予想を評価する動きだ。中期成長期待も強く、過熱感を冷ますための自律調整を交えながら上値追いの展開だろう。

 帝人<3401>グループで、企業向けにITソリューションを提供するITサービス(ヘルスケア、エンタープライズ、サービスビジネス)事業、一般消費者向けに電子書籍配信サービス、eコマース、各種デジタルコンテンツを提供する子会社アムタスのネットビジネス事業を展開している。

 中期成長に向けて戦略的M&A・アライアンスを積極活用し、13年9月に医薬品業界CRM事業強化に向けてミュートスと合弁会社インフォミュートスを設立した。

 グループ会社統合・再編も進めている。14年3月にEC事業の運営効率化に向けてアムタスグループ内で食品EC事業を展開する持分法適用関連会社のドゥマンを連結子会社化し、連結子会社イー・ビー・エスのアパレルEC事業をドゥマンに統合した。

 14年9月には新規事業の発掘を目的として、米国シリコンバレーに連結子会社のコーポレートファンド(20億円規模、通称インフォコムファンド)を設立した。また15年2月には米SYSCOMの株式を譲渡した。

 中期経営計画では、医療機関・製薬企業向けヘルスケア事業、完全Web-ERPソフト「GRANDIT」のサービスビジネス事業、そして電子書籍配信サービスなどのネットビジネス事業を重点3事業として、目標数値に17年3月期売上高550億円、営業利益50億円、21年3月期売上高1000億円、営業利益100億円を掲げている。

 06年11月開始のスマートフォン・フィーチャーフォン向け電子書籍配信サービス「めちゃコミック」は各携帯キャリアのスマートフォン公式キャリアサービス電子書籍カテゴリーで1位を独占し、月間利用者数が500万人を記録するなど国内トップクラスの地位を強固にしている。13年11月開始のマルチデバイス対応電子書籍配信サービス「ekubostore(エクボストア)」も拡大基調だ。

 14年10月にはシフトワンと共同で次世代電子コミック「モーションコミック」の提供を開始した。15年2月にはアムタスが、中国でコミック関連事業を展開している厦門優莱柏網絡科技有限公司(ユーラボ)、および恋愛・乙女系アプリ配信を展開しているKOYONPLETE(コヨンプリート)(東京都)と業務提携した。ユーラボが制作・保有する電子コミック作品を15年5月から「めちゃコミック」で配信する。コヨンプリートに関しては第三者割当増資も引き受ける。

 さらに4月24日には、「めちゃコミック」にて「週刊少年ジャンプ」や「マーガレット」などの集英社コミックの提供を開始し、ラインナップを拡大すると発表した。

 ヘルスケア事業ではIoT事業への新規参入として米EverySense(エブリセンス)社に25%出資した。また15年3月にはアスリート支援サービス「ATHLETE STORIES(アスリートストーリーズ)」の提供開始を発表した。ヘルスケア事業の一環としての位置付けで、トップアスリートを目指す人の健康管理、コミュニティ機能、活動資金援助、さらに就職支援といった引退後のセカンドキャリアに至るまでをサポートする無料サービス(アスリートプラットフォームアプリ)だ。実際に使用するアスリートには費用が発生せず、当社は広告事業、職業紹介事業、およびビッグデータのアスリート向け製品開発に活用する市場調査事業として展開する。

 なお4月24日、ソーシャルゲームの今後の展開について「ソーシャルゲームサービスの自社開発/提供を終了」する方針を定めたと発表した。12年8月にイストピカを連結子会社化して市場参入し、スマートフォン向けソーシャルアプリゲームの開発/提供に取り組んできたが、市場環境の変化が激しく今後の収益化を見通すことが困難と判断した。イストピカから提供中のサービスは15年6月までに順次終了する。自社タイトル開発・配信を終了して経営資源を電子書籍サービスに集中する。

 4月28日に発表した前期(15年3月期)の連結業績は売上高が前々期比3.0%増の403億09百万円、営業利益が同1.9%減の36億06百万円、経常利益が同0.2%増の36億92百万円、そして純利益が同6.3%増の21億71百万円だった。

 配当予想は同1円増配の年間18円50銭(期末一括)とした。配当性向は23.3%となる。ROEは同0.2ポイント低下して10.9%、自己資本比率は同4.3ポイント上昇して73.0%となった。

 ITサービスの減収や売上構成比変化などが影響して営業利益は微減益だったが、電子書籍配信サービスの好調が牽引して売上高は4期連続で過去最高となった。純利益も米SYSCOMの株式譲渡に伴う特別利益計上が寄与して過去最高となった。

 セグメント別動向を見ると、ITサービスは売上高が同3.7%減の249億71百万円、営業利益が同15.0%減の23億98百万円だった。株式譲渡した米SYSCOM社の第4四半期分が連結対象外となり、ヘルスケア事業の減収も影響して減益だった。一方のネットビジネスは売上高が同16.1%増の153億37百万円、営業利益が同42.1%増の12億07百万円だった。電子書籍配信サービスの売上高は123億円となった。eコマース事業の構造改革の効果も寄与した。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)81億99百万円、第2四半期(7月~9月)104億98百万円、第3四半期(10月~12月)94億11百万円、第4四半期(1月~3月)122億01百万円、営業利益は第1四半期2億26百万円の赤字、第2四半期8億16百万円、第3四半期3億99百万円、第4四半期26億17百万円だった。ITサービス事業は第4四半期の構成比が高い収益構造である。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(4月28日公表)は売上高が前期比6.7%増の430億円、営業利益が同16.5%増の42億円、経常利益が同13.7%増の42億円、純利益が同19.7%増の26億円、配当予想が同1円50銭増配の年間20円(期末一括)としている。

 電子書籍配信サービスの好調が牽引して増収増益見通しだ。コンテンツ拡充の効果、テレビCMによる広告宣伝の効果、会員ポイント制度導入などサービス強化の効果で、電子書籍配信サービスの新規顧客開拓と会員稼働率向上が進展している。ITサービスは米SYSCOM社の株式譲渡に伴う減収分を、ヘルスケア事業と「GRANDIT」サービスビジネス事業でカバーする。

 セグメント別に見ると、ITサービスは売上高が同2.1%増の255億円、営業利益が同4.6%増の25億円、ネットビジネスは売上高が同14.2%増の175億円、営業利益が同41.7%増の17億円としている。電子書籍配信サービスの売上高は同22.0%増の150億円を目指し、利益面ではソーシャルゲーム事業の撤退も寄与する。

 そして中期的にも、医療機関・製薬企業向けヘルスケア事業、Web-ERPソフト「GRANDIT」サービスビジネス事業、そしてネットビジネス事業の重点3分野の成長が加速し、eコマース分野の構造改革効果も寄与して収益拡大基調だろう。

 株主優待制度については14年7月に導入を発表した。毎年9月30日現在で1単元(100株)以上保有株主を対象として、連結子会社ドゥマンが運営する食品通信販売サイト「オーガニックサイバーストア」で利用可能なポイント(1ポイントを1円として利用)を保有株数と保有年数に応じて贈呈する。たとえば保有株数1000株以上で保有年数3年以上の場合は6000ポイントを贈呈する。

 なお自己株式取得については必要に応じて機動的に実施予定としている。

 株価の動きを見ると高値更新の展開だ。1000円~1050円近辺での短期モミ合いから上放れ、13年10月の1124円を突破して5月19日には上場来高値となる1295円まで水準を切り上げた。16年3月期の増収増益・増配予想を評価する動きだろう。

 5月19日の終値1295円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS95円10銭で算出)は13~14倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は1.6%近辺、そして前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS762円15銭で算出)は1.7倍近辺である。

 目先的にはやや過熱感を強めているが、日足チャートで見ると25日移動平均線、週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって強基調の形だ。指標面に割高感はなく電子書籍配信サービスの拡大で中期成長期待も強い。過熱感を冷ますための自律調整を交えながら上値追いの展開だろう。

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