川崎近海汽船は底固め完了、21年3月期は新型コロナ影響だが後半回復期待

 川崎近海汽船<9179>(東2)は近海輸送と内航輸送を主力としている。21年3月期は赤字予想としている。当面は新型コロナウイルスによる経済収縮の影響で厳しい事業環境だが、期後半からの緩やかな需要回復を期待したい。株価は通期の業績予想を嫌気する形で年初来安値を更新したが、業績悪化を織り込んで底固め完了感を強めている。出直りを期待したい。

■近海輸送と内航輸送が主力

 石炭・木材・鋼材輸送などの近海部門、石炭・石灰石・紙製品・農産品輸送やフェリー輸送などの内航部門、日本近海における海洋資源開発・洋上再生可能エネルギー設備に関わるオフショア支援船事業(OSV部門)を展開している。

 20年3月期売上高構成比は近海部門が27%、内航部門が68%、OSV部門が5%、その他が0%、営業利益構成比は近海部門が▲18%、内航部門が109%、OSV部門が9%、その他が0%だった。

 収益面では輸送量、運賃市況、為替、燃料油価格、および燃料油価格変動に伴う燃料調整金などが影響する特性がある。また季節要因として第1四半期は入渠費用が増える傾向がある。

■フェリー輸送の航路拡大推進

 新・中期経営計画については、新型コロナウイルスによる影響を現時点で合理的に算定することが困難として公表を延期しているが、基本的な事業戦略として、近海部門は船隊整備や商圏維持・拡大によって長期的な収支安定を目指す。内航部門は、陸上輸送から海上輸送への転換を図るモーダルシフトの受け皿となるべく、新鋭船投入によってフェリー輸送の航路拡大を推進している。OSV部門はオフショア支援船事業の充実化で収益拡大を図る。

 また20年1月適用開始のSOx規制(船舶用燃料油の低硫黄化環境規制)について適切な対応に取り組んでいる。日本初のLNG燃料フェリー就航に向けては、川崎汽船<9107>と共同で技術的検証を本格化している。

■21年3月期は新型コロナ影響で赤字予想だが後半回復期待

 21年3月期の連結業績予想(期初時点では未定としていたが7月31日に公表)は、売上高が20年3月期比18.8%減の360億円、営業利益が14億円の赤字(20年3月期は19億13百万円の黒字)、経常利益が14億50百万円の赤字(同19億07百万円の黒字)、純利益が8億円の赤字(同13億70百万円の黒字)としている。配当予想は20円減配の100円(第2四半期末50円、期末50円)である。

 第1四半期は、売上高が前年同期比18.1%減の90億80百万円、営業利益が3億16百万円の赤字(前年同期は43百万円の赤字)、経常利益が3億31百万円の赤字(同68百万円の赤字)、純利益が1億27百万円の赤字(同13百万円の赤字)だった。

 新型コロナウイルスによる経済収縮の影響を受けた。近海部門は33.8%減収で赤字化した。鋼材輸送、木材輸送、バルク輸送とも貨物輸送需要が大幅に減退し、市況も低迷した。内航部門は12.7%減収だが黒字化した。定期船輸送、フェリー輸送、不定期船輸送とも輸送量が減少したが、コスト面で入渠費、借船料、燃料費の減少が寄与した。OSV部門はCCS(二酸化炭素の回収・海底貯蔵)関連の調査業務などが寄与して17.1%増収だが、入渠費の増加で赤字拡大した。

 通期予想については、厳しい事業環境が継続し、本格的な景気回復には、かなりの時間を要すると想定した。セグメント別売上予想は近海部門が27.9%減収、内航部門が14.3%減収、OSV部門が32.0%減収としている。

 なお業績改善に向けた姿勢を役員が率先して示すために、役員報酬を減額(対象期間20年7月から20年12月まで6ヶ月間)する。当面は新型コロナウイルスによる経済収縮の影響で厳しい事業環境だが、期後半からの緩やかな需要回復を期待したい。

■株価は底固め完了

 株価は通期の業績予想を嫌気する形で年初来安値を更新したが、業績悪化を織り込んで底固め完了感を強めている。出直りを期待したい。8月31日の終値は2400円、今期予想配当利回り(会社予想の100円で算出)は約4.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS9058円06銭で算出)は約0.3倍、時価総額は約71億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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