【アナリスト水田雅展の銘柄分析】セーラー万年筆は15年12月期営業黒字化見通し、第1四半期の進捗率は高水準

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 セーラー万年筆<7992>(東2)は万年筆の老舗でロボット機器事業も展開している。15年12月期は営業黒字化予想で、第1四半期業績の進捗率は高水準だった。株価は下値固め完了感を強めている。モミ合い上放れのタイミングが接近しているようだ。

 文具事業(万年筆、ボールペン、電子文具、景品払出機、ガラスCD、窓ガラス用断熱塗料など)、およびロボット機器事業(プラスチック射出成形品自動取出装置・自動組立装置など)を展開している。なお中国の写楽精密機械(上海)については15年度中に清算結了予定としている。

 文具事業はブランド力の高い万年筆を主力として、中期成長に向けて電子文具への事業展開も加速している。ロボット機器事業は1969年に開発に着手した歴史を持ち、09年にはプラスチック射出成形品用自動取出ロボットで世界初の無線ハンディコントローラ搭載RZ-Σシリーズを開発した。

 4月30日に発表した今期(15年12月期)第1四半期(1月~3月)の連結業績は、売上高が前年同期比1.7%減の16億07百万円だったが、営業利益が29百万円(前年同期は6百万円の赤字)、経常利益が39百万円(同93百万円の赤字)、純利益が92百万円(同87百万円の赤字)となり、各利益とも黒字化した。

 文具事業が低調だったため全体として減収だったが、ロボット機器事業における射出成形用取出ロボットの好調や中国子会社の撤退による売上原価率の改善が牽引して営業黒字化した。なお経常利益については前期計上した株式交付費92百万円の一巡、純利益については固定資産売却益40百万円の計上も寄与した。

 セグメント別に見ると、文具事業は法人ギフト市場が低調に推移して売上高が同5.8%減の11億06百万円、営業利益が27百万円の赤字(前年同期は13百万円の黒字)だった。ロボット機器事業は売上高が同8.9%増の5億01百万円、営業利益が57百万円の黒字(同20百万円の赤字)だった。

 通期の連結業績予想は前回予想(2月16日公表)を据え置いて、売上高が前期比2.1%増の63億円、営業利益が1億10百万円(前期は91百万円の赤字)、経常利益が85百万円(同2億38百万円の赤字)、純利益が80百万円(同2億09百万円の赤字)の黒字化としている。配当予想は無配継続としている。

 ロボット機器事業が牽引し、増収効果で営業黒字化見通しである。国内文具事業では前期末に発売した新機能ボールペン「G-FREE」が好評であり、消費増税の影響一巡も期待される。ロボット機器事業は前期末から受注が回復傾向を強めている。高価格の上位機種の拡販や中国子会社の撤退で一段の売上原価率改善が期待される。

 通期見通しに対する第1四半期の進捗率は売上高が25.5%、営業利益が26.4%、経常利益が45.9%、純利益が115.0%と高水準である。収益は改善基調であり、通期上ブレ期待も高まる。

 なお前期実績が計画を下回ったため、中期経営計画(14年~16年)の最終目標達成年度を1年延長するととともに、新たな数値目標を設定して17年12月期に売上高経常利益率2.5%以上、有利子負債11億円以下とした。

 業績計画は17年12月期売上高70億70百万円、営業利益2億円、経常利益1億80百万円、純利益1億35百万円としている。基本戦略としては、文具事業ではターゲットを絞った特徴ある製品の開発、新規販売チャネルの開拓、海外市場の再構築、音声ペンや水処理機器など新規事業の推進、ロボット機器事業では射出成型機用取出ロボットの拡販、海外市場への取り組み強化を推進する方針だ。

 なお第1四半期で営業黒字化したが、前期まで数期連続して当期純損失を計上しているため、継続企業の前提に疑義の注記が付されている。

 株価の動きを見ると、5月7日に43円まで上伸する場面があったが、買いが続かず概ね36円~40円近辺でモミ合う展開だ。ただし36円近辺で下値固め完了感を強めている。

 5月22日の終値38円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS64銭で算出)は59倍近辺、実績連結PBR(前期実績の連結BPS15円35銭で算出)は2.5倍近辺である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線を挟んでモミ合う展開だが、下値固め完了感を強めている。15年12月期営業黒字化見通しを評価して、モミ合い上放れのタイミングが接近しているようだ。

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