【アナリスト水田雅展の銘柄分析】JSPは調整一巡、16年3月期2桁増益予想を評価して切り返し

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 JSP<7942>(東1)は発泡プラスチック製品専業の大手である。株価は三菱瓦斯化学<4182>によるTOBが終了して調整局面だが、14日の直近安値2058円から切り返しの動きを強めている。調整が一巡したようだ。16年3月期2桁増益予想を評価して切り返し展開だろう。

 三菱瓦斯化学がTOB(買付価格2686円)を実施し、15年3月16日をもって同社の連結子会社となった。

 押出事業(産業用包装材、食品用包装材、広告用ディスプレー材、住宅用断熱材など)、ビーズ事業(自動車衝撃緩衝材、家電製品緩衝材、IT製品輸送用通い函など)、その他事業(一般包材など)を展開している。自動車部品用発泡ポリプロピレン「ピーブロック」や住宅用高性能断熱材「ミラフォーム」など高機能・高付加価値製品の拡販を強化するとともに、さらなる高機能新製品の開発を強化している。

 14年4月には、発泡ポリプロピレンビーズ(成型品「ピーブロック」用ビーズ)の新工場として北九州工場が生産を開始し、国内では栃木県鹿沼市、三重県四日市市との3拠点体制を確立した。

 14年6月には米国で電子線架橋法による発泡ポリエチレンシート事業に参入すると発表した。一般の発泡ポリエチレンシートに比べて、より均一で微細な気泡構造と表面性能が特徴であり、医療用、自動車部品用など高品質・高機能分野での需要が期待されている。米ミシガン州ジャクソン工場内に新工場を建設して15年1月に生産開始した。

 14年11月には中国・武漢およびタイで、それぞれ「ピーブロック」を製造販売する子会社の設立と新工場の建設を発表した。需要が拡大している中国およびタイにおいて「ピーブロック」の安定供給を図る。生産開始時期は中国が17年1月、タイが16年1月の予定だ。中国・武漢は中国における「ピーブロック」製造の4拠点目となる。

 なおインドにおける「ピーブロック」生産工場建設について5月14日、工場建設を来期(17年3月期)以降に延期すると発表した。インドにおける需要は拡大基調だが、成長速度が依然緩やかであり、採算性の確保に時間を擁するためとしている。インドでの需要に関しては当面、シンガポール子会社から製品供給する。

 なお有形固定資産の減価償却方法を、16年3月期から「主として定率法」から「主として定額法」に変更する。当社グループの生産設備は技術的陳腐化リスクが少なく安定的な使用が見込まれるため、定額法による期間損益計算がより合理的に使用実態を反映できると判断した。

 4月30日に発表した前期(15年3月期)の連結業績は、売上高が前々期比4.3%増の1169億23百万円、営業利益が同4.1%減の56億67百万円、経常利益が同7.1%減の60億44百万円、純利益が同8.3%減の40億39百万円だった。

 売上高は円安も寄与して計画値(10月30日に減額修正)をやや上回ったが、利益は計画値をやや下回った。平均為替レートは1米ドル=106円50銭で同8円50銭の円安、1ユーロ140円30銭で同9円70銭の円安だった。

 配当予想は前々期と同額の年間30円(第2四半期末15円、期末15円)とした。配当性向は22.1%となる。なおROEは同1.7ポイント低下して6.5%、自己資本比率は同2.6ポイント上昇して56.0%となった。

 セグメント別に見ると、押出事業は売上高が同0.8%増の399億15百万円、営業利益(全社費用等調整前)が同30.0%減の13億48百万円だった。国内で消費増税反動減が想定以上となり、高価格・高付加価値の住宅用断熱材「ミラフォーム」などの需要が減少した。プロダクトミックスの悪化、原燃料価格や輸送費の上昇、コストアップに対する製品価格是正の遅れも影響した。

 ビーズ事業は売上高が同4.9%増の703億40百万円で、営業利益が同6.8%増の48億54百万円だった。自動車部品用途や家電製品包装材用途の「ピーブロック」が、中国・アジアでの新規採用拡大などで好調に推移して全体を牽引した。その他事業は売上高が同21.7%増の66億67百万円、営業利益が59百万円(前々期は32百万円の赤字)だった。梱包材が堅調に推移し、中国の液晶テレビ向け新規包材の採用増加なども寄与した。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)283億77百万円に対して、第2四半期(7月~9月)298億89百万円、第3四半期(10月~12月)299億75百万円、第4四半期(1月~3月)286億82百万円、営業利益は第1四半期9億25百万円、第2四半期17億48百万円、第3四半期17億29百万円、第4四半期12億65百万円だった。

 今期(16年3月期)の連結業績予想(4月30日公表)は、売上高が前期比1.8%増の1190億円、営業利益が同23.5%増の70億円、経常利益が同17.5%増の71億円、純利益が同18.8%増の48億円で、配当予想が前期と同額の年間30円(第2四半期末15円、期末15円)としている。

 想定為替レートは1米ドル=120円、1ユーロ=130円、原油価格(ドバイ)は1バーレル=60ドルとしている。売上面では原油価格下落に伴って販売価格が低下するが、数量が増加する。国内は消費増税反動影響が一巡して高断熱材の需要が回復に向かい、海外は自動車や家電関連の「ピーブロック」の需要好調が続く見込みとしている。利益面ではプロダクトミックスの改善、償却方法変更による減価償却費の減少(約6億60百万円)も寄与して2桁増益見込みだ。

 セグメント別の計画を見ると、押出事業は売上高が同1.3%減の394億02百万円、営業利益(全社費用等調整前)が同45.9%増の19億67百万円、ビーズ事業は売上高が同4.9%増の737億75百万円、営業利益が同21.0%増の58億71百万円、その他事業は売上高が同12.7%減の58億34百万円、営業利益が同45.8%減の32百万円としている。

 5月11日に発表した新中期経営計画「Deepen&Grow2017」では、前提条件を1米ドル=110円、1ユーロ=140円、原油価格(ドバイ)1バーレル=105ドルとして、目標数値に18年3月期売上高1350億円(海外が約530億円)、営業利益88億円(売上高営業利益率6.5%以上)を掲げた。セグメント別売上高は押出事業444億05百万円、ビーズ事業837億76百万円、その他事業68億19百万円としている。

 有望テーマ絞り込みによる新製品の事業化を推進して、新製品売上高100億円を目指す。国内事業は高収益体質へのシフトを加速する。海外事業は「ピーブロック」の拠点拡大と能力増強を推進するとともに、「ピーブロック」に次ぐ第2の柱を育成する。3年間合計の設備投資額は約200億円としている。

 株価の動きを見ると、三菱瓦斯化学のTOBが終了し、3月高値2644円から反落して調整局面となった。ただし5月14日の直近安値2058円から切り返しの動きを強めている。調整が一巡したようだ。

 5月22日の終値2122円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS161円01銭で算出)は13~14倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間30円で算出)は1.4%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2190円61銭で算出)は1.0倍近辺である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえて26週移動平均線も割り込んだが、52週移動平均線が接近してサポートラインとなりそうだ。指標面に割高感はなく、16年3月期2桁増益予想を評価して切り返し展開だろう。

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