三洋貿易はモミ合い煮詰まり感、21年9月期収益拡大期待

 三洋貿易<3176>(東1)は自動車向けゴム・化学関連商品やシート部品を主力とする専門商社である。20年9月期は新型コロナウイルスによる世界経済収縮の影響を受けて減収減益予想だが、21年9月期の収益拡大を期待したい。株価は上値が重くモミ合い展開だが煮詰まり感を強めてきた。上放れを期待したい。なお11月6日に20年9月期決算発表を予定している。

■自動車向けゴム・化学関連製品やシート部品が主力の専門商社

 ゴム関連商品、化学品関連商品、産業資材関連商品、科学機器関連商品、機械・資材関連商品の5分野に展開し、自動車向けゴム・化学関連商品やシート部品を主力とする専門商社である。メーカー並みの技術サポート力が特徴だ。海外は米国、メキシコ、中国、タイ、ベトナム、インド、インドネシア、シンガポール、ドイツに展開している。

 自動車関連は合成ゴム・添加剤、タイヤ用特殊クレー、防振ゴム・ホース原料、自動車用シート部品(レザーシート、シートヒーター、ランバーサポート、シートセンサー)といった高付加価値品を中心に展開している。シートヒーター(Gentherm社製)はカーボンファイバー仕様市場を独占し、ランバーサポート(L&P Group社製)は世界市場6割を占有している。

 19年9月期のセグメント別(連結調整前)営業利益構成比は化成品が24%、機械資材が62%、海外現地法人が13%、その他が1%だった。収益面では設備投資関連商材を含むため、3月期決算企業の期末にあたる第2四半期の構成比が高い特性がある。

 M&Aも活用して業容拡大・グローバル戦略を推進している。19年5月ゴムライニング製ポンプで世界首位の新東洋機械工業を子会社化、19年10月畜産機能性原料の輸入専門商社ワイピーテックを子会社化、19年11月英国OXIS社と業務提携、20年3月食品添加物を中心とする化学品輸入販売商社のNKSコーポレーションを子会社化した。

 なお連結子会社で医薬品原料など輸入化学品を取り扱うアズロと、非連結子会社のNKSコーポレーションを合併(20年10月1日付)し、社名を三洋ライフマテリアルとする。ライフサイエンス分野の一層の事業拡大を目指す。

■長期経営計画の経営スローガン「最適解への挑戦」

 長期経営計画「VISION2023」では、目標値を23年9月期経常利益75億円、ROE15%、海外拠点成長率(売上高、年率)10%としている。

 経営スローガンに「最適解への挑戦」を掲げ、基本戦略として企業体質の強化で最適解への挑戦、企業基盤の強化、人材への投資、収益基盤の強化で事業領域の深化、新規ビジネスの開拓、グローバル展開の加速、新規投資案件の推進に取り組む。

 事業領域深化では注力ドメインを、自動車部材(内装材、ゴム部材)、ファインケミカル(高機能化学品、ゴム添加剤)、ライフサイエンス(医薬中間体、医療機器、ゴム部材)、サステナブル(木質バイオマス、地熱発電)、畜産関連(ペレットミル機械、畜産部材)、科学分析機器(先端計測・分析機器)としている。今後の成長ドライバーとして木質バイオマス関連、自動車関連、および海外への展開を加速する方針だ。

 木質バイオマス関連は、実績豊富な木質ペレット製造装置(CPM社製)やガス化熱電併給装置(ブルクハルト社製)のプロジェクト受注を積み上げて、将来的には部品更新やメンテナンスを中心とするストック型収益の構築を目指す。18年8月には大日本コンサルタント<9797>と合弁で、静岡県・湯船原地区の木質バイオマス発電所を管理運営する合同会社ふじおやまパワーエナジーを設立した。

 自動車関連はEV化や自動運転化に対応し、モビリティ分野での移動環境の快適化・高付加価値化の流れを踏まえた商品開発を推進する。また海外はアセアン+インド、中国、北中米の3拠点を主軸としてグローバル展開を加速する。

 なお19年11月策定の中期経営計画では、21年9月期目標値を売上高1020億円、営業利益65億円、経常利益67億円、純利益45億円としている。長期経営計画「VISION2023」で掲げた企業体質の強化、収益基盤の強化を重点戦略とする。20年9月には全社的な新規事業の開発体制を構築することを目的として、社長直轄の事業開発室を新設した。

■20年9月期は新型コロナ影響、21年9月期収益拡大期待

 20年9月期の連結業績予想(5月12日に売上高、利益とも下方修正)は、売上高が19年9月期比9.3%減の755億円、営業利益が20.0%減の47億円、経常利益が21.0%減の48億円、純利益が17.9%減の33億円としている。配当予想は20年2月1日付株式2分割遡及換算後で50銭増配の37円50銭(第2四半期末18円50銭、期末19円)としている。

 第3四半期累計は、売上高が前年比10.5%減の573億72百万円、営業利益が22.0%減の38億21百万円、経常利益が17.5%減の42億05百万円、純利益が20.3%減の27億41百万円だった。新型コロナウイルスによる経済収縮の影響で減収減益だった。特に自動車関連が国内外で顧客の生産急減の影響を受けた。木質バイオマス関連の前年の大型案件の反動も影響した。

 化成品は1.6%増収だが14.5%減益だった。塗料・インキ関連の高付加価値商材が堅調に推移し、ワイピーテックの新規連結も寄与したが、自動車向け合成ゴムが低調だった。機械資材は20.3%減収で23.9%減益だった。シート用部品など自動車内装用部品が自動車生産台数急減の影響を受け、木質バイオマス関連の前年の大型案件の反動も影響した。海外現地法人は12.8%減収で12.2%減益だった。米国とメキシコが販管費減少で増益だが、全体としては新型コロナウイルスで自動車関連が低迷した。

 通期については、塗料・インキ関連の高付加価値商材、畜産関連やライフサイエンス関連の商材が堅調だが、自動車メーカーの稼働率回復が見通せない状況のため、減収減益予想としている。ただし第3四半期累計の進捗率は売上高76.0%、営業利益81.3%、経常利益87.6%、純利益83.1%と順調だった。通期上振れ余地がありそうだ。また21年9月期の収益拡大を期待したい。

■株価はモミ合い煮詰まり感

 株価(20年2月1日付で株式2分割)は上値が重くモミ合い展開だが煮詰まり感を強めてきた。上放れを期待したい。10月20日の終値は1006円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS115円24銭で算出)は約9倍、前期推定配当利回り(会社予想の37円50銭で算出)は約3.7%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS1011円32銭で算出)は約1.0倍、時価総額は約292億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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