GMOグローバルサイン・ホールディングスは上値試す、収益拡大基調

 GMOグローバルサイン・ホールディングス<3788>(東1)(GMOクラウドが20年9月1日付で社名変更)は、サーバー貸出・管理サービスおよび電子認証サービスを主力として、電子印鑑やAI・IoTなど新規サービスの収益化も推進している。20年12月期増収増益予想である。テレワークや電子印鑑・電子契約の流れも追い風であり、収益拡大基調だろう。株価は急伸して上場来高値を更新した。その後は利益確定売りで反落の動きとなったが、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。

■クラウド・ホスティング事業とセキュリティ事業が主力

 GMOインターネット<9449>の連結子会社で、サーバー貸出・管理サービスのクラウド・ホスティング事業、電子認証サービス(連結子会社GMOグローバルサインのSSLサーバー証明書発行サービス、電子印鑑DSSなど)のセキュリティ事業を主力として、電子印鑑やAI・IoT関連など新規サービスと位置付けるソリューション事業も展開している。

 GMOグローバルサイン・ホールディングスに社名変更し、グローバルにおける更なるブランド認知度向上、日本NO.1のトラストサービスを軸とした事業拡大を推進する。

 19年12月期の構成比(連結調整前)は、売上高がクラウド・ホスティング事業42%、セキュリティ事業51%、ソリューション事業8%、経常利益構成比(連結調整前)はクラウド・ホスティング事業44%、セキュリティ事業79%、ソリューション事業▲23%だった。

 クラウド・ホスティング事業では、既存ホスティングサービスの統廃合でコスト削減を推進するとともに、19年4月開始したマネージドクラウドサービスCloudCREWが急拡大している。

 セキュリティ事業では、SSLサーバー証明書の国内市場シェアが、19年6月に50%を突破した。20年1月には、クラウド型電子署名ソリューションDigital Signing Suiteの月間署名数が、グローバルで100万件を突破した。また新型コロナウイルスを契機にハンコレスの動きが加速すると想定されるため、日本版eシール対応サービスの提供を目指している。

 20年4月には、GMOグローバルサインがインフィニオン社と連携してマイクロソフトAzure IoT HubへのIoTデバイス登録ソリューションを提供開始した。またGMOグローバルサインがDocuSign社とテクノロジーパートナーシップを締結し、クラウド型電子印鑑ソリューション(電子印鑑DSS)をDocuSign社のクラウドサービスと連携した。20年5月にはGMOグローバルサインの企業向けシングルサインオンサービスが、WEB会議システム「ZOOM」および「Cisco Webex」と連携開始した。

■電子印鑑・契約など新規サービスの収益化推進

 ソリューション事業では、GMO電子印鑑Agree、WebソリューションO2O、オンラインゲーム開発エンジンPhoton、自動車向けAI・IoTソリューションのLINKDriveシステムを活用したコネクテッドカー事業など、新規サービスの収益化を推進している。コネクテッドカー事業については、20年1月GMOモビリティクラウドとして分社化、20年3月双日<2768>との合弁会社とした。

 GMO電子印鑑Agreeは当事者署名型、立会人型(事業者署名型)の両方に対応し、10月26日には利用アカウント数が6万件を突破した。政府が進める行政手続きオンライン化など官民で「脱はんこ」の動きが広がっていることを背景に、10月13日に5万件を突破してからわずか13日間で新規申込が1万件を超えた。

 今後はGMOインターネットグループの顧客基盤も活用し、電子認証局であるGlobalSignと連携して電子印鑑市場の席巻を狙う方針だ。なお電子実印の署名数は20年12月期第2四半期において月間180万署名を突破している。また20年12月には「契約印&実印プラン」として一本化し、価格も大幅に引き下げる予定としている。電子契約の更なる利用・普及を促進する。

 AI・IoT関連では20年6月、メーター点検業務をAIで効率化するサービスがKDDIの検診オプションに採用された。

■20年12月期増収増益予想、中期的に収益拡大基調

 20年12月期の連結業績予想は、売上高が19年12月期比4.4%増の136億91百万円、営業利益が7.1%増の15億42百万円、経常利益が5.7%増の15億70百万円、純利益が5.5%増の11億32百万円としている。配当予想は2円54銭増配の49円13銭(期末一括)である。

 クラウド・ホスティング事業はマネージドクラウドサービスCloudCREW、セキュリティ事業はSSLサーバー証明書が牽引して増収増益予想である。ソリューション事業の電子印鑑Agreeの収益化なども推進する。セグメント別の計画は、クラウド・ホスティング事業が2.2%増収で3.4%営業増益、セキュリティ事業が4.0%増収で3.9%営業増益、ソリューション事業が31.1%増収で営業赤字縮小としている。

 第2四半期累計は、売上高が前年同期比4.9%増の67億81百万円、営業利益が8.7%増の8億12百万円、経常利益が22.3%増の9億22百万円、純利益が10.4%増の6億98百万円だった。

 クラウド・ホスティング事業は4.1%増収で18.8%経常増益だった。従来型のホスティングサービスは減少だが、マネージドクラウドサービスCloudCREWが大型案件も寄与して伸長した。コスト面でサーバー費などが増加して3.7%営業減益だったが、サービス統廃合によるコスト最適化を推進し、配当など営業外収益も寄与して経常利益ベースでは増益だった。

 セキュリティ事業は5.1%増収で17.1%経常増益だった。国内は新型コロナウイルスで一部営業に影響が出たが、電子文書に対するセキュリティ意識の高まりを背景として、SSLサーバー証明書が欧州および米国において堅調に推移した。増収効果で費用増加を吸収した。

 ソリューション事業は10.7%増収だが、経常利益は広告費などの先行投資で前年並みの赤字だった。電子印鑑Agreeの契約アカウント数は前四半期比86%増加の8800社超となった。O2O関連は新型コロナウイルスで販売進捗に影響が出た

 第2四半期累計の進捗率は売上高49.5%、営業利益52.7%と順調だった。テレワークや電子印鑑・電子契約の流れも追い風であり、収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は毎年12月末時点で6ヶ月以上保有株主対象

 株主優待制度は毎年12月31日時点で、1単元(100)株以上・6ヶ月以上保有株主を対象として実施(詳細は会社HP参照)している。

■株価は上値試す

 株価は急伸して上場来高値を更新した。その後は利益確定売りで反落の動きとなったが、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。10月27日の終値は1万1350円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS98円27銭で算出)は約115倍、今期予想配当利回り(会社予想の49円13銭で算出)は約0.4%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS556円31銭で算出)は約20倍、時価総額は約1327億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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