【アナリスト水田雅展の銘柄分析】アールテック・ウエノは下値固めて切り返し、16年3月期の増収増益基調を評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 アールテック・ウエノ<4573>(JQS)は眼疾患領域や皮膚疾患領域を中心に展開する創薬ベンチャーである。株価は1200円近辺で下値を固めて切り返しの動きを強めている。25日は1375円まで上伸した。16年3月期の増収増益基調を評価して出直り展開だろう。

 緑内障・高眼圧症治療レスキュラ点眼薬の製造販売、および米スキャンポ社の便秘症治療薬AMITIZA(アミティーザ)カプセル受託製造を主力としている。

 当社はAMITIZAカプセルの全世界における独占的製造供給権を保有している。米スキャンポ社はAMITIZAカプセルの日本と欧州での販売承認取得や米国での追加新薬承認取得、さらにレスキュラ点眼薬の販売地域や適応の拡大戦略を推進している。また米スキャンポ社は武田薬品工業<4502>とAMITIZAカプセルに関するグローバルライセンス契約を締結(14年10月)している。

 新薬開発については、眼疾患領域では網膜色素変性治療薬(開発コードUF-021、製品名オキュセバ)、重症ドライアイ治療薬(開発コードRU-101)、糖尿病性白内障治療薬(開発コードRTU-007)、皮膚疾患領域では男性型脱毛症治療薬(開発コードRK-023)、睫毛貧毛症治療薬(開発コードRK-023)、アトピー性皮膚炎治療薬(開発コードRTU-1096)、神経疾患領域では糖尿病性神経障害治療薬(開発コードRTU-1096)の開発を進めている。

 日本発・世界初の網膜色素変性治療薬を目指すウノプロストン(開発コードUF-021)点眼液については、14年8月にウノプロストン点眼液へのトロメタモール配合に関する日本特許が成立し、14年11月にはウノプロストンが厚生労働省から網膜色素変性を対象とするオーファンドラッグに指定された。海外におけるウノプロストンの開発・商業化権については米スキャンポ社にライセンスし、当社はウノプロストン製品の独占的製造供給権を保有している。

 なお15年3月、ウノプロストン点眼液の第3相臨床試験の終了と解析結果の速報を発表した。主要評価項目において統計学的な有意差を得ることができなかったため、さまざまな角度からデータを整理し、承認申請の可能性を鋭意検討しているとした。

 日本発・世界初の生物製剤による重症ドライアイ治療薬を目指す遺伝子組み換え人血清アルブミン(RU-101)点眼液については14年11月、米国での第1相および第2相を合わせた臨床試験を完了した。

 抗炎症作用や免疫調節作用を有するVAP-1阻害剤である新規化合物(RTU-1096)については、経口内服薬として14年10月に第1相臨床試験を開始した。候補疾患としてはアトピー性皮膚炎などの皮膚化疾患がある。また皮膚疾患領域では男性型脱毛症関連(RK-023)が第2相臨床試験を開始している。

 米国で係属していたAMITIZAカプセルの特許侵害訴訟に関しては、米スキャンポ社、当社、武田薬品工業が14年10月、Par社との和解・ライセンス契約を締結した。また14年11月には米スキャンポ社、当社、武田薬品工業が、米国食品医薬品局(FDA)にAMITIZAカプセル後発品申請を行ったDr.Reddys社に対して特許侵害訴訟を提起した。

 4月27日には参天製薬<4536>から、参天製薬が遷延性角膜上皮欠損治療をターゲットとして開発を行ってきた「DE-105」に関する開発・事業化権を承継する契約の締結を発表した。また「DE-105」の発明者である山西田輝夫名誉教授(山口大学医学部)と当社のメディカルアドバイザーとして契約を締結した。

 5月7日には、米スキャンポ社の子会社である米SAG社との、ウノプロストンに関する全てのライセンス契約を両社の合意により終了したと発表した。米スキャンポ社の事業方針変更に伴うもので、米SAG社に許諾していたウノプロストンに関する権利は当社に返還される。16年3月期業績に与える影響は軽微としている。また今後は、新たなフレームワークのもとでウノプロストンの事業収益の最大化を図るため、適応症の拡大、開発・製造・商業化を進めるとしている。

 5月13日には、米スキャンポ社がGloria社との間で、AMITIZAに関する中国での独占的ライセンス契約を締結(契約締結日は14年10月17日)したと発表した。Gloria社は中国規制当局の承認が必要なAMITIZAの中国での開発および商業化権を許諾されている。当社はAMITIZAのグローバルな独占的製造供給権を有している。なお16年3月期業績に与える影響はないとしている。

 5月18日には北海道大学との産学連携で、当社が開発中の新規VAP-1阻害剤(開発コードRTU-1096)の糖尿病網膜症および糖尿病黄斑浮種治療薬としての共同研究を実施すると発表した。

 また5月25日には、抗炎症作用や免疫調節作用を有するVAP-1阻害剤である新規化合物(開発コードRTU-1096)の第1回単回投与試験を終了したと発表した。

 5月14日に発表した前期(15年3月期)の非連結業績は売上高が前々期比18.9%増の66億81百万円、営業利益が同22.0%増の17億31百万円、経常利益が同27.6%増の18億84百万円、純利益が同29.7%増の13億77百万円だった。

 網膜色素変性治療薬ウノプロストン(開発コードUF-021)点眼液の第3相臨床試験に伴う研究開発費増加などで、利益は2月12日の増額修正値を下回ったが、AMITIZAカプセルの好調が牽引して大幅増収増益だった。営業外での為替差益1億43百万円も寄与した。研究開発費は同33.3%増の18億30百万円だった。

 配当予想(2月12日に増額修正)は前期比5円増配の年間30円(期末一括)とした。配当性向は42.0%となる。またROEは同0.7ポイント上昇して13.0%、自己資本比率は同4.1ポイント低下して76.1%となった。

 事業部門別の売上高を見ると、レスキュラ点眼液は同12.9%減の12億91百万円(日本市場は同6.6%減の12億91百万円)だった。日本市場では薬価改定の影響もあり数量が減少した。北米市場では再上市していたが販売実績がなかった。なお5月6日に当社とSAG社のライセンス契約を終了した。

 AMITIZAカプセルは同32.5%増の52億93百万円(北米市場は同14.9%増の36億10百万円、日本市場は同93.6%増の16億51百万円)だった。北米市場では販売提携先の武田薬品工業との納入価格調整や円安進行が寄与した。日本市場では出荷数量が大幅に増加した。医薬品開発支援および受託製造サービスは同30.5%減の96百万円だった。

 四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)11億46百万円、第2四半期(7月~9月)15億82百万円、第3四半期(10月~12月)15億44百万円、第4四半期(1月~3月)24億09百万円、営業利益は第1四半期1億38百万円、第2四半期2億73百万円、第3四半期4億51百万円、第4四半期8億69百万円だった。第4四半期は売上高および売上総利益の大幅増加に伴って営業利益も大幅に増加した。

 今期(16年3月期)の非連結業績予想(5月14日公表)は売上高が前期比12.0%増の74億83百万円、営業利益が同32.9%増の23億円、経常利益が同22.2%増の23億03百万円、そして純利益が同17.0%増の16億12百万円としている。配当予想については同5円増配の年間35円(期末一括)としている。

 売上面では、レスキュラ点眼薬は納品数量の減少で減収見込み、AMITIZAカプセルは北米市場で前期と同程度、日本市場で大幅増収見込みとしている。医薬品開発支援および受託製造サービスは新規顧客獲得を推進する。為替のドル高・円安進行も寄与して増収増益見込みだ。研究開発費は同0.1%増の18億31百万円の計画だ。

 ロイヤリティー収入については、重症ドライアイ治療薬(RU-101)および男性型脱毛症治療薬(RK-023)が前期第2相臨床試験、睫毛貧毛症治療薬(開発コードRK-023)が第1相臨床試験を終えているため、国内外の有望な製薬企業へのライセンス譲渡を視野に交渉を進めている。

 株価の動きを見ると、ウノプロストン点眼液の第3相臨床試験で有意差が得られなかったことから3月の年初来高値圏2300円台から急反落し、4月8日の1178円まで調整した。その後は1200円近辺で下値を固めて切り返しの動きを強めている。5月25日は1375円まで上伸した。

 5月25日の終値1371円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS83円48銭で算出)は16~17倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間35円で算出)は2.6%近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS621円88銭で算出)は2.2倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線を突破した。また週足チャートで見ると13週移動平均線突破の動きを強めている。調整が一巡して強基調に転換する動きのようだ。16年3月期増収増益基調を評価して出直り展開だろう。

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